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あのとき、誰かが人生の非常ベルを押した

それは
助けられた、
という感覚ではなかった。

気づいたら、
もう
そこにはいなかった。


人生が
ぎりぎりだった頃、
あの人は
最低限のことしか聞かなかった。

理由も、
経緯も,
感情も。

ほとんど
求められなかった。

誰も責めなかった。
私も、相手も、過去も。

ただ、
そこから
連れ出された。

それだけだった。

問題は
何ひとつ
片づいていなかった。

それでも、
私は
生きている場所へ
戻ってきていた。

暗闇にいるとき、
質問は重い。

説明を求められるほど、
身体は固まり、
世界は
狭くなっていく。

あの人は、
それを
しなかった。

最低限しか、
聞かなかった。

それは
優しさでも、
正しさでも
なかった。

立ち直らせようとも
していなかった。

ただ、
ここではない場所へ
移されていた。

母だからだったのか。
それとも、
ただ
そういう人だったのか。

答えは
今も
出ていない。

ただ一つ、
そのあとに残ったものだけは、
他の何よりも
大きかった。

私は
終わりかけていた。

夫婦という形が、崩れたとき。

言葉も、
判断も、
立つ力も、
残っていなかった。

そこへ、
ほんの少しの
息が
入った。

励ましでも、
希望でもなかった。

ただ、
呼吸だった。

それだけで、
私は
戻ってきていた。

歩けなくてもよかった。
説明できなくてもよかった。

抵抗する力も、
選ぶ力も,
なかった。

抱えられて、
外に
出ていた。

あのときの手が、
私を連れ出した。

それだけで、
十分だった。


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アリス 🎀🐇🫖 あの頃の体験を、誰かと分かち合いたくて書いています。読んでいただけるだけで十分ですが、もし応援までいただけたら感謝でいっぱいです💌