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RESCENEにあり、CRAYON POPになかったもの

RESCENE(リセンヌ)が大ブレイクしている。
そこに「中小の奇跡」という言葉が使われている。大手の事務所だけが絶対的な権力と影響力と約束された成功を持っているK-POP、それを中小規模の事務所が覆し、大手が売り出したグループよりも成功を収める、そのストーリーに大衆は熱狂する。

エリート社会。レールに乗らない人間以外に成功はない。そんな息苦しさから解放されるかのように…。

「巨済ヤッホー!」がミーム化する13年前の2013年夏。
韓国中の大衆が中小の奇跡に熱狂していた。
突然降ってきたのはクレヨンポップ(CRAYON POP)。
ヒット曲「Bar Bar Bar(パパパ)」
「直列5気筒ダンス」が韓国の大衆を席巻していた。

ヘルメットにジャージ、コミカルな振り付けと楽曲、そして中小規模ならではの当時としては先鋭的だったYoutubeのフル活用。ほぼ回しっぱなしで隙だらけの素顔をダラダラと流し続ける手法はもの珍しく、K-POPアイドルは完璧であり手の届かない憧れ性だけを持っていればいい、という現在まで続く「決め事」へのアンチテーゼとなった。

メガホンとラジカセとプラカードを持ってソウルの街を練り歩き、いたるところでゲリラライブを仕掛けて、トラブル直前に逃げ去る。またある日は夜の公園でレジャーシートを適当に引き、ウーバーイーツでチキンを頼んでガツガツ食い漁る、その様子をただ公開するだけ。こんなことをするK-POPアイドルは存在しなかった。

しかし、クレヨンポップの熱狂は一夏だった。
比喩ではなく一瞬の夏だった。

2013年の夏に短くはない下積みから一気に大ブレイク。そしてその一年後の2014年6月26日~7月22日、Lady Gaga「artRAVE: The ARTPOP Ball」オープニングアクトを務めるという歴史的快挙を果たしている。当時人気絶頂だったレディー・ガガから直々にオファーが届き、約一ヶ月ツアーに同行。ガガの計らいで毎回約30分ほどの持ち時間を与えられるという高待遇だった。

ちなみにこの年のワールドツアー、その他のオープニングアクトは、初音ミク、BABYMETAL、ももいろクローバーZという錚々たるメンバーであった。このメンバーに韓国のCRAYON POPが並んでいたのだ。未来は明るすぎるはずだった。

だが、ここから急激に失速する。
「コミカル路線は飽きられる。続かない。Bar Bar Barを越えられない」など理由はあるが、このガガのオープニングアクトをその後の活動でまったくもって活かせなかったことが大きく悔やまれることの一つだ。

事務所も本人たちも、そして韓国の大衆も「レディー・ガガのオープニングアクト」という実績をまったく理解していなかったのだ。
欧米進出?だって前座でしょ?
そんな認識で終わってしまったのだ。

その後、目立った活躍は見られず、結婚・妊娠をした人気メンバーのソユルが2017年5月に脱退。四人での活動継続を発表するも、これ以降、現在にいたるまで活動はしていない。実質の活動終了である。

コンセプトや楽曲の方向性は唯一無二であり、youtubeの「Crayon Pop TV(크레용팝TV)」など今見ても本当に面白い。「素を出している感じ」のK-POPアイドルは多いが、それは「素顔っぽい姿」に過ぎない。過去から現在まで彼女たちほど「本当に映されてるだけ」という撮り方を実行しているグループはいない。その存在は文字通り唯一無二。もう少し長く活躍ができたと思うだけに本当に残念である。

さて、ではRESCENEである。
この2026年の夏、「巨済ヤッホー!」で韓国中を席巻。韓国の主要音源チャート「Melon」や「Bugs」でまさかの「LOVE ATTACK」が逆走1位。韓国企業評判研究所が発表した『ガールズグループ個人ブランド評判ランキング』においては、ウォニが並みいる強豪を抑えて1位。さらにはミナミ、ゼナ、リヴ、メイすべてが同ランキングに入っているという快挙。

この夏、大手が送り出したすべてのガールズグループはRESCENEの後ろにいる。

この現象に近いものはたびたび起こってはいるが、この規模の「中小の奇跡」はそうそう起こることではない。
13年前のヘルメットにジャージで順々に飛び跳ねる少女たちを思い出した人たちも少なくはなかったはずだ。そして同時にこうも思っているかもしれない「いつまで続くかな」

だが、RESCENEにはCrayon Popになかったものがある。
自虐である。

こちらの動画は公開から二ヶ月で1100万回再生である。これはウォニ、ミナミ、ゼニというキャラクターが強い他のメンバーが急激に仕事が増えて、残りのリヴとメイというメンバーの仕事が少ない「格差」ということを本人たちがネタにしている内容である。

こういう自虐は日本では割とポピュラーだが、韓国ではあまりに新鮮だったのだ。そして大衆が長らく恋焦がれていた行為でもあったのだ。憧れなんかいい、今私たちは部屋で一人で動画を観ているのだ、「別世界の憧れ」よりも「共感と親しみやすさ」が観たい。一人でいるときまで他人に虚勢を張り続ける必要はない。それが再生回数に表れているのだ。

クレヨンポップはありのままの姿をそれこそRESCENE以上に無邪気に映していたが、自虐的な発言や行為はなかった。つまりありのままではあるが自らを下げることはできなかった。しかし、RESCENEは迷いなく自虐を続ける。自虐っぽい行為をするK-POPアイドルは今までも多くいたがそれは「自虐っぽい自虐」の範囲内である。つまり綺麗で浮世離れした人間たちが上品に大衆っぽさを行う程度にとどめる行為に過ぎないのだ。K-POPは「本格的な自虐」はNGなのだ。

田舎者であること、都会の常識を知らないということ、これらは従来のK-POPアイドルではたとえそうであっても「恥ずかしいこと」として徹底的に隠し知ったかぶりをすることがセオリーだった。だが、RESCENEは「知らないもんは知らないじゃん」と堂々としたのだ。その姿に大衆が「そうだよ、その通りだよ」と同調したのだ。

RESCENEは「K-POPアイドルに自虐は似合わない」という層から攻撃を受けるかもしれない。しかし、「一人で動画を観る」大衆の欲求には敵うわけがない。

クレヨンポップは自虐することができなかった。
いや、まだその発想がなかったのだ。
結局はそういう時代だったのだ。

けれど、私たちはクレヨンポップの「一瞬の夏」を忘れない。
それだけ彼女たちはあのとき輝いていたのだ。
その時必ず美しく打ち上がる花火のように…

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