ヒポクラテスの盲点
映画『ヒポクラテスの盲点』をMorc 阿佐ヶ谷にて鑑賞。
私自身はCOVID-19に対するワクチンだけでなく、三種混合やHPVワクチンも接種をしている。COVID-19に対するワクチンは5回ほど接種をした記憶がある。反ワクと括られる中にはいないが、好奇心の赴くままに足を運んでみた。
※以下に記載する内容はあくまでわたし個人の感想です。
※ワクチン接種を称賛・非難する意図はありません。
1. 科学的合理性と「正義」の所在
前提として私はワクチンに対しては好意的に捉えている。
また、同時に「すべてのひとに」「等しく」「有効且つ副作用が生じない」ワクチンは存在しないとも考えている。
映画内ではワクチン接種後(何回目の接種だったかは失念してしまった)5日目に突然心筋炎を発症し、そのまま亡くなられた20代男性のケースが取り上げられていた。健康的な20代男性、という触れ込みであったので、おそらく既往歴はないのであろう。
そんな人間が、コロナワクチンを接種したことによって、心筋炎を発症し、亡くなった。厚労省は因果関係を認めなかった。接種後体調不良を訴える人間はごまんといる。そういうナレーションが続いた。
この時点で監督の思念が強く反映されているなと感じて萎えてしまった。
医師の話も長崎大学医学部の森内 浩幸教授の発言のみが中庸かつ理解のしやすい話であったように思う。
mRNAワクチンの研究開発から臨床実施までが異例のはやさであったこと。オミクロン株の発生後もワクチン接種を継続した厚生労働省と政府の判断の正しさ。現在問題となっているワクチン接種による副作用と、補填。
まだまだ問題は山積みで、自分の周囲にたまたま副作用が発生した人間がいないからこんなに悠長なことが言えるのかもしれない。でも、ワクチンによって救われた命、ワクチンによって救われた経済がある以上、手放しにワクチン接種を非難することはできない。
ワクチンの評価: 新型コロナウイルスワクチンを含め、ワクチン全般は自己免疫獲得の重要な機会であり、公衆衛生における有益性は極めて高い。
集団の利益: 緊急事態下において、一定数の副作用リスク(エラー)を許容してでも、種としての人間を守り、社会経済を維持することは、統計的・倫理的な「正義」である。
ゼロリスクの幻想: 「100%の安全」という生物学的に不可能な前提に立ち、不完全さを陰謀論で埋めようとする姿勢には、強い違和感を抱く。
2. テクノロジーによる掌握への願望
ワクチン議論は、身体の主権をどう扱うかという問題に直結している。
それらを踏まえて、わたしは昔から抱いていたテクノロジーによる生命の完全掌握を夢見る気持ちが強まった。高校生のころ、卵管結紮手術を望んでいた私は、生死も、性別も、ありとあらゆるすべての問題をテクノロジーで解決出来たらよいのにと考えている。
不条理からの解放: 生老病死や性別さえもテクノロジーで管理・掌握できる未来を望む。
システムの最適化: 自然の摂理という名の「不確定なバグ」を排除し、すべてを計算可能な論理の制御下に置きたい。
3. 未来における「棲み分け」の提案
ワクチンに関して、政府の思惑であったり黒幕がいるであったり接種者は体臭でわかるであったり、そういった考えを有し、あまつさえそれを他人に強要するカルト的な人間に対して私は「棲み分け」を提案する。
権利と義務の不一致: 科学技術を否定しながら、その恩恵だけを享受する姿勢は非論理的である。
棲み分けの必要性: テクノロジーが掌握する未来において、科学を拒絶する者は、その恩恵(快適さ、医療、安全)を一切受けない環境で生きるべき。価値観と責任の所在を一致させることこそが、システムの安定に繋がる。
伊藤計劃の小説「harmony」でも、冒頭で主人公・霧慧トァンはケル・タマシェク(トゥアレグ族)に対しテクノロジーの産物を渡していた。ケル・タマシェクから密輸する禁忌の物の対価という登場ではあったが、テクノロジーを放棄したと見せかけて一部は享受をするケル・タマシェクのやりかたは(小説の中の話ではあるが)見事に狡賢いと思ったものだ。
結論
この映画が映し出したのは、個人の不安を陰謀論でデコレーションした「非論理的なユートピア」だった。私は、たとえ冷徹と言われようとも、論理とテクノロジーによって不条理を御していく未来を支持する。
最後に。
映画上映中から「ワクチンは悪だ!」「岸田(首相)の言うことはク〇だ!」と合いの手を入れていた1列目のおばさま。上映中は静かにしましょう。あと上映後に「ワクチン打ちました?わたしは打ってないです、自分の体のことなんだから自分でーーー」と話しかけてきた同1列目のおばさま。現代社会において見ず知らずの人間に用事もなく話しかけることは同性異性問わず不審者です。それはワクチンを接種しているしていない反ワクとか関係なく、あなたは不審者です。
2026年1発目の映画。
