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clear_crab2658
オタクはどちらさんですか?
90歳の父親が医療付介護施設にお世話になっている。
少し認知症症状があるので、高齢のおばあちゃんだけでは面倒みきれないと思い施設入所を家族で決めた。
とりあえず、食事は普通食、手すりにつかまればのそのそと自力で歩くこともできる。
まあ重症ではない部類に入るかな。
面会に行くたび、帰りたい、帰りたいと言う。
どこも痛くないのに、歩けるのに、ご飯も食べれるのに、なんで家に帰れないんだ!と毎回のご挨拶のように。
今日おばあちゃんと一緒に面会したとき、今後のために父親の預金や株券などの話をした。
認知症がひどくなったら、何をどれだけ持っているかわからなくなるから、まだらボケの正常な時に確認したほうがいいという情報を得たからだ。
ベッドに半身起き上がって、こちらをみて話す父親は正常そのもの。
昔から数字に強かった父親そのもので、話もキレが良い。自分の知らなかったことを、的確に教えてくれた。
少しではあるが、いくつかの会社の株を父親は持っていた。今株価高騰しているから、今売ったら高額だろうなと頭をよぎった。いや待て待て、数字に強いこだわりのある父親だから、あの株券どうした?と聞かれたとき、勝手に売ったとなると激怒ものだろう。たとえ、父親名義の口座に売上金を入れていたにしても。
息子ながら、悪魔の誘惑が頭をかすめたのが恐ろしい。少しでも施設費用足しにしょうなんて、頭疲れているな。
今日の父親は生き生きしていた。
得意な数字の話題だったからかな。
ハキハキとよく喋ってくれた。
じゃあ、また来るねと父親に話かけて病室を出ようとしたら、背中から声をかけられた。
オタクはどちらさんですか?
ああ、父親の記憶は違う世界へいった模様だ。
また来ますねと声をかけて部屋を出た。
