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52歳でピークを迎えた細美武士 "あの頃"を超えたのを目撃したNANO-MUGEN FES

はじめに

 2025年5月31日、NANO-MUGENFESでELLEGARDENを観た。そのとき「細美武士は今、52歳でピークを迎えている」と確信した。圧倒的に歌が上手くて、凄まじい熱量。強い主観で言うなら、その意味で全盛期のエルレを越えたのではないか?ということ。

 当時の細美武士はロック街道を爆走しており、そこで傷ついた自身のフィーリングを作曲に昇華して、ライブで叩きつけていた。今も昔も細美武士はその時々の自分とのシンクロが強い。それが作品の強度を保っているコアなのだ。

 活動再開後の細美武士の方が、技術的には明らかに昔より上回っている。これは客観的な事実だと思う。でも当時の曲が生まれたリアルタイムの気持ちとのシンクロ感。それはその瞬間にしか出せない強度がある。だからこそ、過去の楽曲を最近のライブで聴くと、微妙な熱量のズレを感じてしまうことがあった。

 活動再開後のライブでは昔の曲がセトリに多く含まれる中で、「あの頃の熱を今再現するのは無理だろうな」とそんなことすら思ってしまっていた。でもそれが覆ったのが2025年5月31日だったのだ。

当時のエルレガーデン

 そもそもリアルタイムが良いのは大体のバンドがそうじゃない?そんな大袈裟なと、見る向きもあるかもしれない。が、当時のエルレはその強度や切実さが尋常ではなかった。
 
 例えば活動休止前最後のアルバムだった『Eleven Fire Crackers』は2度の発売延期の末、2006年11月8日にリリースされた。限界まで自分を追い込み、光が全く入らない暗い部屋で作曲を試みる、円形脱毛症になる、完成したのは校了ギリギリの当日。三徹のまま、横浜BLITZのライブへ向かった、など逸話に事欠かない。

 そんなアルバムは狂気と熱と絶望と希望をごちゃごちゃに混ぜて圧縮したようなカオスに満ちている。その空気はアルバムの中で真空パックになっているが故、もうすぐ20年(!)経とうとしているが、いつでも僕らはその空気にノックアウトさせられる。

 そして、それをある種再現する当時のライブはどうだったか?そんなアルバムを再現するために、とんでもない「覚悟」で細美武士は望んでいた。それまでのピースフルな要素もある楽曲との乖離もある。それを埋めるため、当時の細美はライブ直前に楽屋の壁に拳を叩きつけ、アルバムが表現している狂気、熱を再現して望んでいたという。

 冷静に考えても、やはり異常だと思う。

 具体例として『Eleven Fire Crackers』を挙げただけで、ロックバンドには多かれ少なかれ、その時にしか鳴らせない音がある。言い換えれば一方通行で不可逆的に失われていく、ある種のイノセントさだ。その瞬間にしか発露できないエネルギーがあるからこそ美しい、それこそがリアルタイムの密度なのだ。

 ここまでの分量を費やして僕が言いたいのは、あの頃のエルレは良かったなんて話ではサラサラなくて、超えるのがはちゃめちゃに難しいハードルがそこには横たわり続けていた、という話だ。
 
 その当時の気持ちそのままに「Salamander」や「Space Sonic」を歌うのは難しい、それ以外の曲だって当時のリアルタイムのシンクロ性が多少なりともズレる今、技術的に上回っていたとしても、当時の方がという要素は出てくる。(その分、活動再開後のアルバム曲は、シンクロ感も含めて最高とも思う)

 しかし、それがナノムゲンでは越えていた。そしてその伏線はあった。

ロッキングオンジャパン6月号(Vol.582)

 6月号のロキノンでは、the HIATUSのライブ盤のインタビューが掲載されている。それだけではなく、エルレ、モノアイズ、そしてその行く末も語られていて、現在の細美武士の現在地を語る決定版の内容になっている。

(ちなみに似た方向性のインタビューが、リアルサウンドに掲載されていて、高橋美穂さんが非常に良い仕事をされている。買って読むのはちょっと、という方はそちらも参照されたし)

 そこで細美武士は見逃してはならない、重要なことを語っている。

細美「(省略)今、この盤出た時の10倍ぐらい歌上手いんですよ。だからもう既に俺の中では、ヘタクソな頃の俺の盤になっちゃってて」
(中略)
細美「(省略)その大きな違いが生まれたのは、去年の10月に体調崩してライブとばしたことと、網膜剥離になったこと。そこがすべてのきっかけだから。あれ以降で全然、考え方も違うし。このライブ盤の時の俺は、まだ未来は永久に続くような勘違いをして生きている時の、最後の若さの輝きみたいなものだと思う。

 10倍歌がうまくなる、あり得ない話である。物の喩えとは言え、10倍ってあなた、小学生ではないのだから。とツッコミたくもなる。大げさだし眉唾な話だけど、謎の説得力がある。なぜか?語っているのが細美武士だからだ。

 細美武士は僕にとってヒーローなのだ。ヒーローがヒーローたる由縁は"絶対に期待を裏切らない"ところにある。だから荒唐無稽な話でも、もしかしたらそうかもしれない、いやきっとそうに違いないという期待感があった。その矢先のナノムゲンのライブだったのである。

ナノムゲンライブ当日

 ワクワクして会場へ向かった訳ですが、結論どうだったか。

マジでした

 あのーーーーー急に語彙がなくなるけど、めっちゃ良かったの本当に。なんで????なんであんなに歌上手いの????? 

 なんか超かっこよかった。なにあれすごい。

 アリーナ3階の遠い所で聴いてたのにぜんっぜん関係なかった。すごい。めっちゃ近くに感じた。ライブハウスの距離みたいな。

 そしてなんかもう技術なのか、覚悟なのか、謎の力が溢れており、ばしんばしんエネルギーがほとばしってた。
 
 多分Kアリーナの天井ふっとばしてたと思う。なにで?歌の力で!!!!歌の力で天井吹き飛んだの見たことある?俺はないけど。

 Missingの2番のAメロを聴いている時に、「あ、完全にこれ当時越えてるわ」となった。なんだこれ、なにが起こってるんだ??圧倒的な声量、そしてエネルギーの放出。ただの感情の表出だけでなく、どこか抑制されている。だからこそバシバシ感情が届くボーカル。
 
 両手をマイクスタンドの周りに広げ、空気を力強く撫でるような動き。あの両手で細美武士はその場の全部を掴んじゃってたの、完全に。全てってなんだ?森羅万象ってこと。

 もう完全にそう。唖然としたもん。それはテクニックだけじゃなくて、強い意志があるボーカルだったんだよなー。血のにじむような努力とか経験の積み重ねがそのまま乗っかってる感じ。もうね、技術と意志で全部なぎ倒す感じっていうか、つまりまぁそういうあれ!

 普通は当時のフレッシュさが勝つのだ。ロックとしては、表現としても。っていうか普通は、エモーションを50代で乗せることすら難しいはず。けど確実に乗っていた。Kアリーナの三階席、肉眼で見るには米粒に近い距離感でもバシバシ受け取れるぐらいに。

 この歌は確実に事件だし、街中がこの噂で持ち切りでもおかしくないぐらいのはず。でもなんかめっちゃ最高だったみたいな軽やかなツイートはあれど、大事件だった!ひひーん!!!どどん!!!みたいな話は一切見かけない。少なくとも俺の観測範囲では。なぜだ??

 全員に問いたい、あの日Kアリーナにいたみなさま。すごかったよね?幻聴?俺のお気持ちが加速しすぎているだけ?さすがに。だって露骨にうまかったんだもの。なんだったのあれ????

 だからみんなにお願いしたいのは、とにかく今のうちに確実にピークを迎えている細美武士の歌を聴くべきだってこと!!あの時、たしかに今が過去を越えていたはず!っていうか今のELLEGARDENはずっとそうかも!!だからMONOEYESでもHIATUSでも、はたまたLow-Atusでも良い。
 
 これから細美武士のライブを観られる機会があるなら、絶対に見てほしい。迷ってるなら行ってほしい。いま何かが起きている。焼き付けてほしい。この瞬間もまた一方通行のイノセントさだよ!あんなにすごいことは永遠には続かない。だからこそ最高。

 一瞬の煌めきとかエネルギーとか意志を感じるのが、きっとロックバンドのライブを観る意味だよ!俺はそう思ってる!観るべきだから!!マジで!!ライブ会場で会おうね!!ホントにそれだけ!!!!

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