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ヨーロッパ周遊旅行記×村上春樹

Geminiで少し遊んでみました:)
最近、村上春樹さんの小説たちがマイブーム。
(日記をGeminiに村上春樹風にアレンジしてもらいました)


言葉というものは、時としてうまく滑り出してくれない。 だが、あの長く続いた夏のヨーロッパの旅について語るなら、たぶん僕は、あの強烈な熱波と、スーパーマーケットの冷えた商品棚の匂いから始めるべきなのだと思う。

世界は思っているよりも広くて、そして驚くほど素朴なもので満ちている。

1. パリのバターと、セーヌ川の風

パリに到着した僕らは、まず東側のカフェで静かなランチをとった。 マレ地区の古風な街並みを歩き、「Merci」のような洗練されたブティックの空間を抜け、かつて貴族たちが暮らしたというヴォージュ広場を経由して、ルクセンブルク公園までゆっくりと足を伸ばした。どこへ行っても、古い歴史の層が街のあちこちに素顔を覗かせていた。

翌朝、宿のホストが淹れてくれたコーヒーとお菓子をいただいた後、僕らは街の小さなパン屋でバゲットとパン・オ・スイスを買った。そしてスーパーで手に入れたカマンベール、癖のあるシェーブルチーズ、上質なバター、それからプロシュートをトートバックに詰め、エッフェル塔の見える芝生へと向かった。

そこで広げたピクニックの味を、僕は今でも鮮明に覚えている。 フランスのバターは、日本のそれのように重たくしつこい油っぽさがない。軽やかで、口の中で静かに溶けていく。香ばしいバゲットにそれを厚めに塗り、少し癖のあるヤギのチーズをのせて口に運ぶ。

「世界には無数の複雑なレシピがあるけれど、結局のところ、僕らを救うのはこういうものかもしれないね」

僕は友人にそう言ったかもしれないし、ただ心の中で呟いただけかもしれない。

ルーブル美術館で『モナ・リザ』や『民衆を導く自由の女神』の圧倒的な情熱に触れ、凱旋門の周りを包む少し物々しい警察の空気を通り抜け、SNSで流行りの巨大なピスタチオジェラートを食べた。でも、その日のハイライトは間違いなく夕方のセーヌ川だった。

ワインオープナーが見つからず、何軒もの店を探し回った末にようやく手に入れた一本。セーヌ川のほとりに腰を下ろし、暮れゆく空を眺めながら傾けたワインは、どんな高級バーのグラスよりも深く心に染みた。

2. リヨンの部屋と、完璧なレモンスライス

パリを後にし、僕らはバスでリヨンへと向かった。 二泊三日という短さで都市を移動していたけれど、不思議と「観光」をしているという感覚は薄かった。日中の街は、正気を疑うほどの熱気に包まれていたからだ。37度に達する日差しの中で無防備に街を歩くのは、まともな人間のすることではない。僕らは早朝の涼しい時間帯に街へ抜け出し、最も太陽が高くなる時間帯には宿に戻って、長めのシエスタをとった。

リヨンで借りたアパートメントにはエアコンがなかった。寝室の空気は重たく澱み、僕は汗をかきながらベッドに横たわっていた。でも、そこで作ったシンプルな飲み物のことを忘れることはできない。 冷えた炭酸水に、ただフレッシュなレモンの絞り汁とスライスを落としただけのもの。それに、600円で買った小ぶりのスイカ。火照った身体に染み渡るその甘みは、切実で、正しかった。

外食は一足の靴を選ぶように慎重に、ひとつの都市で一回だけと決めていた。 リヨン名物の食肉加工店(ポール・ボキューズ市場)で買ったパテ・アン・クルート——マッシュルームとレバーとピスタチオが綺麗な層を描いている肉のパイ——を一口かみしめた時、僕はその背景にある絹織物職人たちの歴史や、食材を無駄にしないという諦念を含んだ知恵について考えていた。

3. ニースの地中海と、エズ村のアーティチョーク

早朝の列車で向かったニースは、どこまでも青い地中海の光に溢れていた。 トラムに乗った際、混雑に腹を立てた様子の現地のマダムから「観光客のせいで席がないわ」と小さな嫌味を言われたけれど、「日本から来た」と伝えると、彼女の態度はまるで風向きが変わるように柔らかくなった。車内でおすすめの場所を教えてくれる彼女の横顔を見ながら、僕は世界におけるコミュニケーションの妙について考えていた。

ニースのスーパーで買った60円のバゲットは、信じられないほど美味しかった。 夕方、プロムナードを30分ほど歩き、ゴツゴツとしたロックビーチに腰を下ろして波の音を聴きながら友人と談笑する。そこには観光の慌ただしさはなく、ただ心地よい時間の流れだけがあった。

翌日はバスに揺られてエズ村へ向かった。 強烈な日差しの中、植物園の頂上を目指して坂道を登り、無料の水くみ場で冷たい水を飲んだ時、身体の隅々まで命が吹き返していくのを感じた。小さな香水店で母へのスティック香水を選び、路地の小さな店でアーティチョークが入ったフォカッチャサンドを食べた。汗をかいた身体に、ハムとパンの塩気が驚くほど完璧に馴染んでいった。

夕方、宿に戻って水着に着替え、昨日と同じ海へ飛び込んだ。 冷たすぎない海水の中でぷかぷかと身体を浮かべていると、日常のあらゆる緊張がゆっくりと解けていくのが分かった。

4. ジェノバの坂道と、バジルの沈黙

ニースからバスに乗り、僕らはイタリアのジェノバに入った。 ジェノバの街は、どこか不器用で、無骨だった。迷路のように入り組んだ狭い路地(カロッジと現地では呼ぶらしい)には古い影が落ちていて、黒と白の縞模様をした教会の天井には、途中で投げ出された未完成の絵の具がそのまま残されていた。

なぜその絵が未完成なのか、僕にはわからない。ペストのせいかもしれないし、単純に資金が底をついたからかもしれない。でも、未完成であることは、時として完成されていることよりも多くのものを雄弁に語る。

僕がその街で最も心を惹かれたのは、スーパーで手に入れたDOP認証のジェノベーゼ・ペーストだった。 濃厚なチーズと、主張の強いバジルの香り。予約した小さなトラットリアで出てきた短くねじれたパスタ(トロフィエという名だ)には、ふかしたジャガイモとインゲン豆が混ぜられていた。ソースの味には少しムラがあったけれど、そのムラこそが、僕にとってはひどく愛おしいものに思えた。

「完璧すぎるものには、どこか嘘がある」 僕は冷えた白ワインを飲みながら、心の中でそう結論づけた。

5. コロッセオの影と、オデオニ書店の静寂

フィレンツェの宿は控えめに言っても最悪だった。風の通らない狭い部屋、エアコンの不在、そしてどこか切迫した気配を漂わせるホスト。でも、旅というものはそういう理不尽さを含めてひとつのパッケージなのだ。

眠れない夜をやり過ごした僕らは、街へ出た。 フィレンツェの古びた映画館を改装したというオデオニ書店(Giunti Cinema Odeon)の2階席に身を寄せた時、僕はようやく深く息を吸うことができた。映画のスクリーンの光と、心地よいエアコンの風。そこで過ごした3時間弱の静かな時間は、荒れた僕らの神経をゆっくりと解きほぐしてくれた。

その後に向かったローマのコロッセオやバチカンのサン・ピエトロ大聖堂は、圧倒的なスケールでそこにあった。 だが、どれほど壮大な建造物であっても、カメラのレンズを通した瞬間にその本質は零れ落ちてしまう。肉眼でしか受け止められない圧倒的な情報量。それこそが、僕が「本物」と呼ぶものの条件だった。

ローマの朝、小さなバールで立ち飲みしたカプチーノとコルネット。 隣の男たちがエスプレッソを流し込み、サッと仕事に向かっていく日常のリズムに混ざりながら、僕は自分が「生きている」という素朴な実感を抱いていた。

6. サントリーニのしょっぱい水と、ロンドンのスコーン

サントリーニ島は、画角を慎重に選ばなければ美しい写真が撮れない場所だった。 全体を引きで見れば、そこは観光客の熱気と混沌に満ちている。だが、青いドームの隙間から見下ろす地中海は、驚くほど静かだった。

水道水からは塩の味がした。煮沸しても飲めない水。 それは火山島という厳しい環境が人々に突きつけた静かな拒絶だった。 僕らは太陽が照りつけるカマリビーチで、あえて有料のパラソルを借りず、熱せられた地面にビーチタオルを広げた。冷たい海に飛び込み、高い波にもみくしゃにされる。身体が寒くなれば、鉄板のような地面に戻る。その往復は、まるで自分自身の身体の境界線を確かめる作業のようだった。

夕食には、スーパーで買ったギリシャヨーグルトとディルでサラダを作り、ムール貝をのせた。外食の過剰な装飾から離れ、シンプルな食材で胃を休めること。それが僕らの旅の、そして生活の核心だった。

旅の終わり、トランジットで立ち寄った早朝のロンドン。 バッキンガム宮殿近くの小さな店で食べたスコーンは、驚くほど美味しかった。クロテッドクリームとイチゴジャムをたっぷりのせて、温かい紅茶と一緒に胃に流し込む。

エピローグ:帰国、そして画面の向こう側

東京行きの飛行機の中で、僕は一度も眠れなかった。 けれど、不思議と疲れはなかった。京都に戻るまでの電車の中で、僕は周囲の人々を観察した。誰もがスマホの画面を凝視し、目の前に広がっている現実に背を向けていた。

パリの公園で、リヨンのアパートで、あるいはサントリーニの海辺で——ただベンチに座って読書をし、散歩をし、夕空を眺めていた人々の姿を思い出していた。

僕に必要なのは、世界を急いで消費することではない。 自分自身の身体のコンディションに耳をすませ、美味しいバゲットと上質なバターを味わい、走ることで風を感じ、日記を書くことで自分だけの領域を守ることだ。

やれやれ、と僕は心の中で呟いた。 旅は終わったけれど、僕の「暮らすような生き方」は、きっとこれから始まるのだ。


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