スコールってめんどくさい男すぎない?|その距離感、普通に難しい
はじめに|これは愚痴ではない、考察だ
最初に言っておく。
これは悪口ではない。
スコールのことが嫌いなわけでもない。むしろ好きだ。好きだからこそ——言わせてほしい。
スコール、めんどくさすぎる。
話しかけても「……whatever」。近づいても壁。感情出さない。空気重い。一緒にいるのに、なんとなく「歓迎されていない感」がある。
FF8をプレイしていて、序盤に「この主人公と旅するの、しんどいな」と思った人は、おそらく少なくない。
一緒にダンジョン潜りながら「このパーティ、絶対仲良くないよな」と思ったことがある人も、いるはずだ。
セルフィが「ねえねえスコール!」と話しかけて、スコールが「……」で返す。そのたびにセルフィが「もう!」と言う。この繰り返しを何十回見たか。
でも——最後まで見ると、なぜかスコールのことが好きになっている。
これは何なのか。
「めんどくさい」のに「放っておけない」という、この矛盾。
今回はそれを、真正面から考える。そして最後に——ライト層がちょっとびっくりするような話をする。
第1章|正直めんどくさい(共感ゾーン)
まず、めんどくさいポイントを整理しよう。
丁寧に整理しよう。かなりある。
①とにかく話しかけにくい
スコールに話しかけると、大体こうなる。
「なあスコール、今日の作戦なんだけど——」
「……whatever」
終わった。会話が終わった。まだ何も言ってないのに終わった。
セルフィが何度話しかけても、ゼルが盛り上げようとしても、アーヴァインが冗談を言っても——スコールの「……whatever」は揺るがない。鉄壁だ。むしろ感心するレベルだ。
あの「……whatever」の使い方、ちょっと上手すぎる。あの一言で会話を終わらせる技術、ある意味才能だ。
社会に出たら絶対に使えないやつだけど。
②感情を出さない
喜怒哀楽が、表に出てこない。
嬉しいのか悲しいのか、怒っているのか何も感じていないのか——外からはほとんど分からない。内側の声(プレイヤーには聞こえる)では色々考えているのに、表情と言葉には出てこない。
これ、一緒にいる側からしたらかなりキツい。
「今どう思ってる?」
「……」
「え、何?怒ってる?」
「……別に」
別に、じゃねえよ。
「別に」って言いながら目が若干怖いやつ、現実にいたら確実に距離取られる。
③空気が重くなる
スコールがいると、場の空気が変わる。
パーティのテンションが高くても、スコールが「……」とやると、一瞬静まる。セルフィが「ちょっとスコール!」と突っ込んで、またにぎやかになる——という繰り返し。
セルフィとゼルが場を持たせているのに、スコールは基本的にそれを引き受けない。
仲間に「賑やかし担当」を押しつけている男、という見方もできる。
セルフィが過労だ。ゼルも過労だ。アーヴァインはまあ自分で楽しんでいるからいいとして。
④「リーダーとしてどうなんだ」問題
スコールはSeeD、つまりプロの戦闘員として優秀だ。でも——リーダーとしてのコミュニケーション能力は、お世辞にも高いとは言えない。
部下に「……whatever」って言うリーダー、現実にいたらかなり問題だ。
「今回の作戦の指示を——」 「……whatever」 「え、どうすれば——」 「自分で考えろ」
これ、パワハラ研修の教材に使えそうなやり取りだ。
スコールの上司になりたくない人間が世界に何人いるか、考えたくない。
第2章|でも、なんか放っておけない
ここまで書いておいて、なんだが。
スコール、なんか放っておけないんだよな。
理由を考えてみると、いくつか出てくる。
①実は、ちゃんと見ている
スコールは言葉で関わらない。でも——観察はしている。
仲間の状態を、実はちゃんと把握している。誰がどういう状況で、何を必要としているか。言葉では「関係ない」と言いながら、頭の中ではちゃんと考えている。
内側の声を聞いていると、スコールは仲間のことを相当考えている。ゼルのことも、セルフィのことも、アーヴァインのことも。
口では「どうでもいい」と言いながら、どうでもよくない。
この人、嘘つきだ。でも——愛のある嘘つきだ。
愛のある嘘つき、なんか好きになってしまう。性格悪いとは分かっていても、ちょっと憎めない感じがある。
②危機には必ず来る
「関係ない」と言いながら、誰かが危機に陥ると、スコールは必ず来る。
「……whatever」と言いながら、体が先に動く。
これが一番分かりやすい矛盾だ。関係ないなら来なければいい。でも来る。来てしまう。
しかも何食わぬ顔で来る。「別に助けに来たわけじゃないし」オーラを全力で出しながら来る。
お前、絶対助けに来てるじゃないか。
このパターン、現実でも見たことある人多いんじゃないか。
「べ、別にお前のことが心配だったわけじゃないし」系の行動。ツンデレの教科書みたいな動き方だ。
ただしFF8のスコールは「デレ」の部分をほぼ見せない。ツンのままで終わろうとする。それでも体は動く。
ツンのままで助けに来る男。
それがスコール・レオンハートだ。
③不器用なだけで、悪い人間ではない
よく見ると、スコールは基本的に誠実だ。
嘘をついて誰かを傷つけようとしない。自分の利益のために他人を利用しない。「めんどくさい」と感じさせるが、それは距離の取り方が下手なだけで——人としての誠実さは、ちゃんとある。
距離感がおかしい人間と、悪い人間は、別だ。
スコールは前者だ。
距離感がおかしいだけで、根っこは真面目で誠実な男だ。そういう人間って、現実にも意外といる。「なんか話しかけにくいけど、実はいい人」タイプ。
④なんか守りたくなる
これは論理的な説明が難しいんだが。
スコールって、なんか守りたくなる。
あれだけ壁を作って、あれだけ距離を取っているのに——どこかで「この人、大丈夫かな」と思う。
内側の声で色々考えているのを知っているからかもしれない。外側と内側のギャップが大きすぎて、内側が心配になるからかもしれない。
リノアがあれだけ踏み込んだのも、こういう感覚があったのかもしれない。
第3章|言葉と行動がズレている男
ここで少し、真面目に考えてみる。
スコールの最大の特徴は——言葉と行動がズレていることだ。
「関係ない」と言う。でも来る。 「どうでもいい」と言う。でも考えている。 「……whatever」と言う。でも気にしている。
このズレは、なぜ生まれるのか。
シンプルに言えば——言葉で本音を言うことが、怖いからだ。
「大切だ」と言葉にすれば、それが現実になる。現実になれば、失う可能性が生まれる。失う可能性が生まれれば、怖い。だから——言葉にしない。
でも感情は動いている。だから体が動く。
言葉を封じれば感情は止まらないのに、言葉を封じることで感情を止めようとしている。
これ、かなり非効率な生き方だ。
でも——そうするしかなかった理由が、スコールにはある。
幼い頃、大切な人がいなくなった。「好き」という感情が、「失った」という痛みに変わった。その経験が、感情を言葉にすることへの恐怖を作った。
「言葉にしなければ、現実にならない。現実にならなければ、失わない。」
子供の頃に刻まれた、歪んだ論理。でも——その論理で、彼は生き延びてきた。
そしてここで——ちょっとだけ怖い話をする。
スコールが「……whatever」と言うとき、何を感じているか。
内側の声を見ると、案外色々考えている。「また来た」「面倒くさい」「でも……」という感情が、ぐるぐると動いている。
「……whatever」は、感情がないのではなく、感情を出せないときに出てくる言葉だ。
感情が溢れそうになると——「……whatever」が出てくる。
あの口癖、そういう意味で聞くと、少し重くなる。
第4章|スコールがめんどくさい、本当の理由
ここで少し、踏み込む。
スコールがめんどくさいのは——分かりにくいからだ。
分かりやすい人間は、めんどくさくない。「好き」と言えば好きだと分かる。「助けたい」と言えば助けたいと分かる。感情が言語化されているから、受け取る側は判断できる。
でもスコールは、感情を言語化しない。
だから受け取る側は、行動から推測するしかない。「whatever」と言いながら来る。「関係ない」と言いながら助ける。言葉と行動のどちらを信じればいいか、判断がつかない。
分かりにくい人間と付き合うことは、認知負荷が高い。
常に「この人、今どう思っているのか」を読み続けなければならない。言葉を信じてはいけない。行動から推測する。でも行動も分かりにくいときがある。
これは——疲れる。
でも。
分かりにくい人間が「実はこういう理由でそうなっていた」と分かったとき、感情が動く。
「めんどくさい」から「そうか、そういうことだったのか」に変わる瞬間。
FF8のプレイヤーの多くが、スコールに対してその瞬間を体験したはずだ。
「……whatever」の意味が変わる瞬間。冷たさが怖さに見える瞬間。距離が自衛に見える瞬間。
その瞬間が——スコールを「めんどくさい男」から「放っておけない男」に変える。
最終章|めんどくさい男だけど
スコールは、めんどくさい男だ。
これは変わらない。
話しかけにくい。感情出さない。「……whatever」を連発する。空気を重くする。仲間に賑やかし担当を押しつける。リーダーとしてのコミュニケーション能力に問題がある。
でも——
そうならざるを得なかった。
好きな人がいなくなるという体験を、幼い頃にした。その痛みから身を守るために、感情を閉じた。感情を閉じるために、言葉を封じた。言葉を封じるために、距離を取った。
その積み重ねが——「めんどくさいスコール」を作った。
めんどくさいのは、性格ではない。生き延びるための方法だった。
そして——ここで少し、びっくりしてほしい話をする。
スコールがめんどくさい構造は——実は、このシリーズで論じてきたFF8の世界の構造と、完全に一致している。
感情は最下層にある。どんな干渉にも壊されない。GFが記憶を消しても、SeeDが設計しても、時間が圧縮されても——感情だけは残る。
スコールも同じだ。
「……whatever」と言っても、感情は残る。壁を作っても、感情は残る。距離を取っても、感情は残る。
スコールが感情を出さないのは、感情がないからではない。感情が最下層にあって、消せないからだ。
消せないから、封じようとする。封じようとするから、「……whatever」が出てくる。
そして——消せない感情が、体を動かす。リノアが危機に陥れば来る。仲間が傷つけば動く。
めんどくさい男の「めんどくさい」は、感情が消えない証拠だった。
リノアが現れた。
「……whatever」と言っても引かない。壁を作っても越えようとする。空気が重くなっても気にしない。
リノアの「空気読めなさ」が、スコールの「めんどくさい防衛システム」を少しずつ崩していった。
めんどくさい男と、空気読めない女が出会った。
そして世界が、少し動いた。
スコールがめんどくさい理由が分かったとき——あの「……whatever」が、少し違う音に聞こえる。
冷たさではなく、怖さの音として。
距離ではなく、精一杯の自衛として。
めんどくさい男だけど。でも——そういう男だったんだな、と思う。
そしてもうひとつ。
スコールがめんどくさいのに放っておけないと感じるなら——それは、あなたがスコールの感情を「読んでいる」からだ。
言葉ではなく、行動から。表情ではなく、その裏から。
感情は、言語化されなくても伝わる。最下層にあるから、どんな壁を作っても漏れ出す。
「……whatever」の向こうに、感情がある。
それに気づいた人間が——スコールを放っておけなくなる。
リノアもそうだった。プレイヤーもそうだった。
めんどくさい男の感情は、最後まで消えなかった。だからこの物語は、動いた。
スコールがなぜ距離を取るのか、その構造を深く読む——「なぜ、スコールは誰も信じなかったのか|その距離は、どこから始まったのか」で読める。
リノアがなぜ引かなかったのか——「リノアは、なぜスコールを諦めなかったのか|その愛は、どこから始まったのか」で読める。
感情が最下層にある構造の詳細は——「記憶が消えても、愛は残る|それでも消えなかったものの話」で読める。
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