【短篇小説】偽物親子
作者:篠宮あおい
私には、偽物の父がいる。
お母さんの再婚相手だ。
でも、お母さんは再婚して間もなく亡くなってしまった。
偽物の父は、落ち込む暇もなかったらしく、毎日一生懸命働いていた。
ご飯を作り洗濯をして、私に話しかけてくれた。
時折、とっても疲れたような顔をしてたけど。
それでも私は幸せだった。
そんなある日、偽物の父が女の人を連れてきた。
私の新しいお母さんだと言った。
偽物の家族の出来上がりだ。
でも、偽物の家族が壊れるのは、あっという間だった。
偽物の母は、私を好きではないみたい。
ご飯をくれなかったり、自分だけ美味しいものを食べたりしてた。
だんだん辛くなっていったど、それは偽物だから仕方がないと、どこかで思っていた。
辛いとか、寂しいとか思っても、偽物なんだからって……。
そうして、私が高学年になったある夜。隣の部屋から話し声がした。
なにを話しているのかは分からない。
偽物の母は怒ってた。偽物の父は、静かに話してた。
だんだん偽物の母の声が大きくなって、喧嘩しているのが分かった。
それは、私のことだ。
偽物の母は、偽物の子どもなんていらないって言ってる。
偽物の父は、なにを言ってるのか分からない。小さな声で、何か言ってた。
きっと、偽物の父も私なんていない方がいいって、そう言ってるんだろう。
だって、偽物の親子なんだもの。
偽物の家族なんだもの。
私がいない方がいいんだ。
私は聞こえないように、きつく耳を塞いだ。それでも流れ込んでくる、怒りの声。
そんなに私がいらないなら、出て行った方がいいだろう。
偽物でも、家族だ。
喧嘩なんてしてほしくない。
私がいなければ、きっと喧嘩なんてしないんだ。
涙が流れて、胸が張り裂けそうになった。
すると、玄関が開いた。偽物の母が怒鳴って出て行った。
私がそっとドアを開けると、偽物の父がテーブルに両手をついてうなだれていた。
偽物の父は、私を見ると近づいてきた。
殴られる――。
体が硬くなる。怖くて、流れる涙をぬぐうことも出来ない。
唇が震え、恐れるように偽物の父を見た。
だが、偽物の父は私の前に膝をつくと、その大きな両手で私を抱きしめた。
「ごめんな……お前は、俺の娘だ」
偽物の父が、本物だと知った。
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