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【短篇小説】歌姫アンドロイド

作者:娘
編集:かめママ

私は声がでない。
生まれた時から出なかったわけじゃない。
だけど、気が付いたら私のそれは機能することをやめていた。

それでも構わなかった。
だって、私を見て笑ってくれるあなたがいてくれたから。
だから声の一つくらい失くしても平気だった。

だけど、次第にあなたの顔から笑顔が消えていった。
その原因は明らかに私の声にあった。

「君は歌うんだ。この国のどんな歌姫よりも美しい歌声を響かせるんだ」

かつて彼が言っていたことだった。
けれど私は――歌うことができなくなった。
それでも最初は、失ったものは取り戻せるのだと、彼は笑っていた。

それなのに、彼は……彼は――。

「だめだ、どうやってもなおせない。君はこんなにも完璧なのに!」

笑顔はいつしか悲しみの表情へと変わり、
気が付けば、季節も春から冬へと変わっていた。

ああ、どうか泣かないで――。

声さえ出るなら伝えられるのに。
それなのにその一言すらかけられない。

もう、私には何もない。
歌うために生まれた私はもう何も出来ない。

ごめんなさい、マスター……。

私の主であるあなたは私に視線を送ってきたが、すぐにその視線を落とすように、
薄い板を見つめだした。

どうしたの? マスター?

いつもなら覗きこんで何を買うの? と聞けたのに、それも今は届かない。

マスター、どうか一つだけ……
一つだけ、最後に叶えてください。

どうか、あなたが私を不要だと言って、
他の私を連れてくる前に……

私を、あなたの手で壊してください。

声が出ればそれが伝えられるのに、なんてもどかしいんだろう。

私は、まだ、あなたに必要とされたいのに。

マスターは板を見て「購入ボタン」を静かに押した。

それをみて、私は静かに目を閉じた――。


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