【短篇小説】カード
カードは嘘をつかない。
どんな悩みでも、ちゃんと私を導いてくれる。
だから、私は母から譲り受けたタロットカードを大切にして来た。
そのカードのおかげで、母は父と出会うことが出来たそうだ。
人生が終わるまで、幸せに過ごすことが出来たと言って笑っていた。
残念なことに、病気には勝てなかったけど。
その後、私の手に渡ったカードは、私を守ってくれている。
事故からも、対人関係ですら円滑に行くようにと、知恵を貸してくれている。
今の彼と出会ったのも、カードが行くべきところを教えてくれて、
その通りにしたら、縁を結ぶことが出来た。
なんて素晴らしいカードだろう。
でも、最近はカードの声が聞こえてこない。
というのも、彼の態度がおかしいことにある。
「彼から連絡が来ないの。浮気してるんじゃない?」
してる。してない。
口にしながらカードをめくると、してないと出る。
「彼が冷たいの。これって、私のことが嫌いになったから?」
嫌い。愛している。
カードをめくるが、愛しているとカードは言う。
だったらどうして?
カードで自分のことは占えないというけど、そんなことがあるわけない。
だって、私は自分のことを散々占ってきた。それでもカードは助けてくれた。だから、カードが裏切るはずはない。
そしてカードはいう、私の不安は考えすぎだと。
そう、考えすぎ……カードが言うなら、きっとそうなんだ。
そうは思っても、不安が増していく。
ある日、彼が他の女といるところを見た。その顔は楽しそうで、私が見たことのない笑顔。
カードが私を裏切った?
そう思った私は、占い師のところへと走った。
占ってみると、答えは真逆だった。
「あなたの彼は、他の女性に心を奪われています。
直に別れが来るでしょう。
どんなに追い求めても、別れから逃げることはできません」
頭が真っ白になった。
結婚しようと約束したのに、他に女がいたなんて。
しかもカードすら、私を裏切っていたなんて。
怒りを感じた私は、カードを燃やしてしまった。
こんなもの、いらない――。
しばらくして彼から「別れよう」と連絡が来た。
最後にもう一度会いたいと言葉を重ねても、彼は「ごめん」と言って電話を切った。
どんなに泣いても、二度と彼に繋がることはなかった。
もう、戻ることは出来ないなんて。
涙が流れて、しばらく外に出ることが出来なかった。
そんなある日、彼の友達から連絡が来た。
「あいつ、死んだよ」
死んだ? どういうこと?
友達は、苦しさを抑えるように教えてくれた。
私がカードを焼いたあの日から、おかしなものが見えると言い出したそうだ。
ある日連絡が取れなくなり、心配して部屋に行くと、風呂場で血まみれになっていたという。
友達は、助けることはできなかったと、震える声で言った。
別れたとはいっても、愛していた。
吹っ切れるような関係じゃなかった。
信じられない私は、茫然と立ち尽くしていた。
その時、どこからか声が聞こえた。
「これであなたの恨みははらせたでしょ?」
楽し気に笑っている声が、私の脳に響き渡る。
一体誰の声?
どうしてそんなことを言うの?
私は彼を恨んでなんていない。
目が、テーブルへと向けられる。
彼と一緒にコーヒーを飲み、ケーキを食べたテーブル。
そこでは、焼いたはずのカードが笑い声をあげていた。
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