小さな美容室のお客様は「子どもからお年寄りまで」ではなく、理想のたった一人まで絞る
「子どもからお年寄りまで、幅広く対応しています」
そう書いた広告から、新規はほとんど来ませんでした。
美容室をやっていると、つい言いたくなる言葉です。
実際、地域の店には子どもも学生も男性も年配の方も来る。それは本当にありがたい。でも、新規集客の「言葉」を作るときに、この言い方をそのまま使うと、結局だれにも刺さらないことがあります。
今回は、その逆をやる話です。来てほしいお客様を、たった一人まで絞る。しかも「40代後半の女性」では、まだ広すぎます。
最初に:実際のお客様を断る話ではない
誤解されたくないので先に書きます。
これは「47歳以外は来ないで」「子どもや男性は受けない」という話ではありません。
今来てくれているお客様は大事だし、長く通ってくれる人は店の宝です。
絞るのは、あくまで集客の「言葉」を作るときだけです。
広告を書く、LPを作る、新規メニューを考える、GBPの写真を選ぶ、インスタを投稿する、LINEの文面を作る。
この入口の言葉を、たった一人に向ける。営業は幅広くていい。でも、入口の言葉は一人に向けた方が伝わる。これが今日の主張です。
では、なぜ「40代後半女性」ではダメなのか。
「40代後半女性」は、まだぼんやりしている
ターゲットを決めましょう、と言われると「40代女性」「主婦」「白髪が気になる人」あたりで止まりがちです。何も決めないよりはいい。でも、まだ広い。
「40代後半」と言っても、45歳と49歳ではまるで違います。
子どもが小学生か高校生か、いないか
親の介護が始まりかけているか
正社員かパートか自営業か
休日にイオンに行く人か、家でゆっくりしたい人か
車は軽かミニバンかSUVか
この違いで、響く言葉は全部変わります。
だから、年齢まで具体的にする。たとえば、47歳。ここまで決めると、急に見え方が変わります。
たとえば、こんな一人を決める
具体的に、こういう人を思い浮かべます。
47歳、地方の郊外住まい、車移動が基本。夫と中学生の息子、高校生の娘。平日は週4のパート。休日は家のこと、買い物、子どもの送迎で、自分の時間は多くない。美容室には行きたいけど、予定を合わせるのが少し面倒。
髪は、白髪が気になり始めた。でも「いかにも白髪染めしました」にはしたくない。ツヤが出にくくなって、朝、毛先がまとまらない。若すぎる美容室は苦手。でも古すぎる店も違う。落ち着いて相談できる店がいい。駐車場は広い方がいい、できれば店の前、ミニバンでも停めやすいと安心。料金は安すぎなくていいけど、最初に目安がわからないと不安。LINEで相談できるなら使いたい、でも返信が遅いと不安になる。
ここまで決めると、書く言葉が一気に変わります。
一人が見えると、全部の言葉が変わる
この人に向けるなら、「子どもからお年寄りまで対応」とは書きません。たぶん、こうなります。
「白髪が気になり始めたけど、自然に整えたい方へ。朝のまとまりにくさを、無理なく扱いやすく。若すぎる美容室が少し苦手な方も、落ち着いて相談できる小さな店です。ミニバンでも停めやすい店舗前の駐車場。料金は施術前に確認してから進めます」
かなり具体的です。でも、この方が伝わる。その人が実際に不安に思っていることに触れているからです。「幅広く対応」より「私のことかも」と思ってもらえる。これが、一人に絞る意味です。
そして、一人が決まると、ぼやけていた他の作業も全部決まります。
新規メニューは、できることを全部並べるのをやめて「白髪を自然に整えるカラー/朝をラクにする縮毛矯正/ツヤを整えるトリートメント」に絞れる。LPは「自分の白髪は自然に整うか、朝はラクになるか、どんな雰囲気の店か、料金は、駐車場は、LINEで相談できるか」という、その人の不安を順番に消すページになる。広告文も、インスタのテーマも、同じ一人を狙えばいい。
誰にでも向けると全部入れたくなって、長くなって、伝わらなくなる。一人に絞ると、何を書かないかが決まります。
髪の悩みだけでなく、生活と場所まで見る
絞るとき、髪の悩みだけ見るのは足りません。
生活と住んでいる場所まで見ると、もっと効きます。
この人は休日の朝から動けるのか。子どもの送迎があるのか。買い物ついでに寄りたいのか。平日午前なら空くのか。ここが見えると「平日午前が取りやすい」「買い物前後に寄りやすい店舗前駐車場」といった予約の提案まで出てきます。
住んでいる場所も同じ。駅近か郊外か、車で何分か、ミニバンで停めやすいか、砂利じゃないか。地方の美容室では、これが都市部より重要になる。
お客様は髪だけでなく、行きやすさも含めて店を選んでいます。
ここまで見えると、GBPやLPに載せる写真も、店内だけでなく外観・駐車場が要る、と決まってきます。
一人に絞ると、逆に広がる
「ここまで絞ったら、来る人が減るのでは」と思うかもしれません。でも、発信では逆が起きます。
47歳に向けて書いた言葉は、45歳にも49歳にも届きます。白髪が気になり始めた人に向けた文章は、しっかり気になる人にも届く。
駐車場が不安な人に向けた言葉は、初めての店が不安な人にも届く。
一人に向けると言葉が具体的になり、具体的な言葉は、似た人みんなに刺さる。絞ることは、狭めることではなく、伝わりやすくすることです。
決め方は、難しく考えなくていい。完璧なペルソナ資料はいりません。過去に来てくれて「こういうお客様が増えたら嬉しい」と思った一人を、思い浮かべる。年齢、家族、住まい、働き方、休日、髪の悩み、美容室への不安、最初に提案したいメニュー。これをその人に当てはめて書き出す。それで十分です。
「誰にでも来てほしい」気持ちはわかります。でも、誰にでも向けた言葉は、誰にも届きにくい。まずは、たった一人に向けて書く。小さな美容室の集客は、そこから始める方が現実的です。
同じように「ターゲットを決めましょうと言われても、ぼんやりしてしまう」というオーナーさんは、まず一人、実在の「来てほしいお客様」を年齢まで決めてみてください。その一人が決まると、次の「新規メニューを何に絞るか」が、驚くほど決めやすくなります。
