新規メニューを3つに絞ったら見えてきた、単価・効率・役割の話
3つに絞ったあと、私はその3つを、ずっと「同じ目」で見ていました。どれが一番もうかるか。その一列だけで、並べていたんです。
前回、新規メニューはまず3つに絞る、と書きました。実際に絞ってみると、次の壁がすぐ来ます。「で、この3つのうち、どれを一番に押し出せばいいのか」。私はここで長いこと止まっていました。
今日は、その3つを単価・効率・役割という3つの目で見たら、まったく違う景色が見えた、という話です。結論から言うと、3つは競わせるものではなく、組み合わせるものでした。
単価で見ると、縮毛矯正が一番。最初、私は単価の高い順に並べていました。
・縮毛矯正パック(カット・トリートメント込み):25,000円
・カラーパック(カット・トリートメント込み):16,000円
・髪質改善パック(カット込み):13,000円
単価で見れば縮毛矯正が圧勝です。だから「これを看板にすればいい」と思い込んでいました。でも、単価が高いことと、店にお金が残ることは、別の話です。高いメニューほど時間もかかるからです。ここに気づかないと、忙しいのにお金が残らない、という一番疲れる状態になります。だから次に、時間という物差しを足してみました。
効率で見ると、順位がひっくり返る
時間あたりにいくら残るか。これを出すと、単価とは別の順位が出ます。
計算はかんたんです。単価から材料費を引いて、かかる時間で割るだけ。材料費は光熱費を抜いて単価のおよそ10%が目安です。縮毛矯正なら約2,500円、カラーなら約1,600円、髪質改善なら約1,300円。
・縮毛矯正:(25,000−2,500)÷180分 = 約125円/分
・カラー:(16,000−1,600)÷120分 = 約120円/分
・髪質改善:(13,000−1,300)÷90分 = 約130円/分
単価で一番安かった髪質改善が、時間あたりでは一番効率がいい。施術が90分と短いからです。逆に単価で一番高かった縮毛矯正は2番手に下がる。単価の大きさと、時間あたりの効率は、まったく別物だとわかります。
ここで「じゃあ髪質改善を看板にしよう」と決めると、また失敗します。私がやったのが、まさにそれでした。次の物差しが抜けているからです。
効率だけで決めると、抜け落ちるもの
効率だけで選ぶと、短時間で回せるメニューばかりが上位に来ます。でも新規の入口は、一度きりで終わる人より、また戻ってきてくれる人を連れてくる方が価値があります。
だから3つ目に「リピート」を、4つ目に「スタッフ全員でできるか」を重ねます。すると、効率が一番良かった髪質改善が、実はリピートが一番薄い、という事実が出てきます。施術して「満足した」で終わってしまい、次につながりにくいんです。
効率という一列だけで見ていたら、絶対に見えなかった弱点です。逆に、効率では負けるメニューが、リピートや店全体の回り方では効いている、ということも起きます。
つまり、3つのメニューは単価でも効率でもリピートでも順位が入れ替わる。一列で勝ち負けを決めようとすること自体が、間違いでした。大事なのは順位ではなく、それぞれが何の仕事をしているか、です。これを整理するために、紙に表を作ります。
判断シートは、A4一枚で足りる
立派な経営資料はいりません。A4の紙を横にして、縦に候補メニューを並べ、横にこの列を書くだけです。
メニュー名
客単価
粗利(だいたいでいい)
かかる時間
時間あたりの単価(粗利÷時間)
リピートの戻りやすさ(◎◯△)
スタッフ全員でできるか(◎◯△)
LPで悩みを説明しやすいか(◎◯△)
埋め終わると、不思議なくらい見え方が変わります。効率だけ見ていたら一番手堅いと思っていたメニューが、実は単発で終わりやすいことに気づいたり。私はこれで、看板の押し出し方を変えました。きれいに作ることより、自分の店の数字を一度ぜんぶ同じ紙に並べることが大事です。並べて初めて、比べられます。
うちの3つを、全部並べてみる
考え方だけだと、ぼんやりします。だから、私の店で新規の入口にしている3つのパックを、実際に並べてみます。ここで大事なのが、ホームケアギフトの扱いです。
うちは値引きをしていません。代わりに3つすべてに、3,000円分のホームケアセットをプレゼントしています。値引きで「安いから来た」人ではなく、ちゃんとケアしたい人に絞りたかったからです。このギフトの店側の実質コストは原価6割(約1,800円)。お客様には3,000円分の価値として伝わりますが、店の負担は1,800円で済む。この1,800円も粗利から引いて計算します。
①縮毛矯正パック(カット・トリートメント込み)
・客単価:25,000円/粗利(材料費+ギフト1,800円引き後):約20,700円/施術時間:180分/時間単価:約115円/分
・リピート:◎(競合は多いが、40代以上に絞ると高単価でも定着。クセは伸びるのでリピート期間は長め。同時に白髪の悩みも抱えるため、カラーへ流しやすい)
・スタッフ対応:◯(技術差が出やすい。経験あるスタッフなら安定)
・LP説明しやすさ:◎(「クセ・広がりで朝が大変な方へ」で一発)
②カラーパック(カット・トリートメント込み)
・客単価:16,000円/粗利:約12,600円/施術時間:120分/時間単価:約105円/分
・リピート:◎(白髪の悩みが多く、根元のリタッチで短期間で回せる。加齢のうねりから縮毛矯正へ流しやすく、客数が多いぶん施術の空き時間を埋める役割も果たす)
・スタッフ対応:◎(全員安定して対応できる)
・LP説明しやすさ:◎(「白髪・色持ち・ツヤを整えたい方へ」で直球)
③髪質改善パック(カット込み)
・客単価:13,000円/粗利:約9,900円/施術時間:90分/時間単価:約110円/分
・リピート:△(競合が多く差別化しにくい。施術して満足してしまい、次のメニューへ流しにくいため単発で終わりやすい)
・スタッフ対応:◯(仕上がりの質感に技術差が出やすい)
・LP説明しやすさ:◯(「パサつき・ツヤ・手触り」で説明できるが、悩みの切実さは縮毛矯正やカラーよりやや弱い)
・見せメニューとしての役割:◎(3年続けても新規客数は一番少ないが、本格的な施術への怖さを和らげる「入口」として機能。直接の数字には出ない)
3つには、それぞれ違う役割があった
ギフトの1,800円を乗せると、時間単価の順位はこうなります。
1位 縮毛矯正パック(115円/分)/2位 髪質改善パック(110円/分)/3位 カラーパック(105円/分)
この順位だけ見て「カラーは一番効率が悪いから広告費を削減」とすると、店が回らなくなります。なぜなら、3つは競争相手ではなく、別々の仕事を持っているからです。順位ではなく役割で見ると、こう整理できました。
■ 縮毛矯正パック = エース
単価1位、ギフト込みの効率も1位、リピートも◎。全部強い。40代以上に絞ることで高単価のまま定着し、同じお客様が白髪の悩みからカラーへも流れていく。看板として外せない一枚です。注意点はスタッフの技術差だけ。対応できるスタッフを決めておけば、店の主役になります。
■ カラーパック = 土台
時間単価は3つの中で最下位。でもこのメニューがないと店が回りません。白髪のお客様が短いサイクルで戻ってくるので客数が多く、縮毛矯正の施術と施術の間にできる空き時間を埋めてくれる。スタッフ全員が◎で対応でき、LP訴求もしやすい。さらに、加齢でうねりが出てきたお客様を縮毛矯正へ送り出す入口にもなる。効率は一番低いのに、店の土台を支えているのがこのメニューです。
■ 髪質改善パック = 入口
効率は2位と悪くないのに、新規客数は3年続けても一番少ない。最初は「弱いメニュー」だと思っていました。でも違いました。ここに来るお客様の多くは「本格的な施術は怖いけど、トリートメントだけなら試せる」という気持ちで来ています。つまりこれは、稼ぐためのメニューではなく、怖がっている人が店に足を踏み入れる最初の一歩をつくる「見せメニュー」でした。新規客が少ないのは失敗ではなく、そもそも全員が選ぶようには作られていないからです。
効率の悪いカラーコースの役割
効率が最下位のカラーが、実は店の流れの真ん中にいます。髪質改善で来た人が安心してカラーに進み、カラーで通ううちにうねりが気になって縮毛矯正へ移り、縮毛矯正のお客様が白髪のついでにまたカラーに戻る。このカラーを切ると、入口とエースをつなぐ橋が落ちて、流れごと止まってしまいます。
これは、3つを同じ紙に並べて、単価・効率・役割の順に重ねていって、初めて見えたことです。
■ 空欄テンプレート(コピーして自分の店で使ってください)
メニュー名:____/客単価:____円
粗利(材料費引き後):____円
施術時間:____分
時間単価(粗利÷時間):____円/分
リピート:◎・◯・△
スタッフ対応:◎・◯・△
LP説明しやすさ:◎・◯・△
このメニューの役割(エース・土台・入口など):____
紙に並べて役割まで書き込むと、効率の悪いメニューが店の土台で、リピートの薄いメニューが入口だった、と見えてくる。3つは競わせるものではなく、組み合わせるものです。
それによって 一番最初にお客様が流入するLPやHPのアイキャッチ(トップ画像)に何を推したらいいかがわかってくるはずです。
「絞った3つを、どう押し出せばいいかわからない」というオーナーさんは、まず今夜、一番出るメニューの時間単価を1つだけ出してみてください。そこから、役割が見えはじめます。
