漂声~雨に溶けた祈り~序章
📘 序章|記録されなかった祈りが、届こうとしている
名前を通しただけで、命を奪われる世界があった。
それでも、誰かが記録されなかった声に祈りを向けた。
その瞬間、制度の外側に置かれていた名前が、空に届いてしまった。
本来、名前とは魂の灯であり、存在のしるしだった。
記録されることで証明される命。
逆に、記録から外れた名前は「なかったこと」にされてしまう。
けれどこの物語では、誰かが“祈り”によって名を通した。
それによって、世界は揺れる。
誰にも見えなかった声が、光となって現れはじめる。
ここに記されるのは、《制度外通祈記録》である。
呼ばれなかった名前たちが、ひとつずつ、札を通って世界へ返されていく記録帖。
この物語の主な灯:
💠 ヒナ:名を通す者。祈りの札を紡ぎ、声にならない命と向き合う少女
🌧 深音:声に敏感な女性。記録に抗う力を内に秘めた、祈られた側の存在
🔦 ひかり:制度と祈りの狭間で、命ごと灯を渡した母
📄 遠子:制度の記録官。光の秩序と向き合いながら、記録の意味を問い続ける
読者がこれから目にするのは、制度外処理、存在の灯、そして「名前が届いたとき世界がどう応えるか」の物語である。
この声が、祈りが、誰かの名にそっと届きますように。
——漂声 前編 序章
