いじめが少ない県は、本当に安心なのか -認知件数15件という数字が示す、見えないリスク-
いじめが少ない都道府県は、安全な地域なのだろうか。
一見すると、答えはYESに思える。
だが、数字を少しだけ冷静に勘繰ると、その前提は簡単にめくれてしまう。
文部科学省の調査では、都道府県ごとのいじめ認知件数に、毎年大きな差がある。
多い地域では、児童生徒1,000人あたり100件を超える一方、少ない地域では15件から20件程度にとどまる。
この差は、6倍、年によっては10倍近い。
同じ国、同じ制度、同じ定義で起きている現象としては、明らかに大きすぎる。
ここで考えるべきなのは、
どの県が悪いかではない。
この数字は、何を数えているのかという点だ。
この数字は発生件数ではない
まず押さえておくべき事実がある。
いじめの統計は、起きた回数を数えているわけではない。
学校や教育委員会がいじめとして認知した件数を集計したものだ。
つまりこの数字は、
• いじめがどれだけ起きたか
ではなく
• いじめがどれだけ拾われたか
を示している。
そう考えると、年間15件から20件という数字は、
いじめがほとんど起きていないことを意味しない。
むしろこう読む方が自然だ。
多くの事案が、いじめとして認知されないまま処理されている可能性が高い。
勘繰らざるを得ないが、これは闇が深い。
認知されないいじめは、存在しなかったことになる
では、いじめが認知されないと、どうなるのか?
• 記録が残らない
• 教育委員会に報告されない
• 第三者が関与できない
• 統計にも表れない
結果として、そのいじめは制度上、存在しなかったことになる。
これは学校や教師の善悪の問題ではない。
制度の設計上、そうなってしまうという話だ。
さらに深刻なのは、この構造が親と子どもにも影響する点だ。
いじめが認知されにくい環境は、親もいじめに気づきにくくなる
学校が積極的にいじめを認知しない環境では、
• アンケートの結果が表に出にくい
• 小さな違和感が共有されにくい
• 様子を見ましょうで終わりやすい
子どもはこう学習する。
言っても動かない。
なら、言わない方がいい。
その結果、子どもは学校にも親にも相談しなくなる。
親は異変を思春期の一時的なものと解釈してしまう。
こうして、沈黙が積み重なる。
認知されなかったことが、手遅れを生む事もある
いじめが本当に危険なのは、起きることそのものではない。
認知されないことだ。
初期の段階で拾われていれば止められたはずの問題が、
• 不登校
• 強い自己否定
• 心身の不調
といった形で、表面化したときには、もう後戻りできない状態になっている。
そして、そのとき学校や教育委員会はこう言う。
「初めて知りました」
「認知していませんでした」
だが、子どもにとっては、
ずっと前から始まっていた。
ここで視点を反転させる
では、認知件数が多い地域はどうだろう。
誤解してはいけない。
いじめが多い地域=悪い地域、ではない。
むしろこう考えるべきだ。
認知件数が多い地域は、いじめが起きたときに表に出る確率が高い。
つまり、
• 早期に拾われる
• 記録が残る
• 親と共有される
• 外部につながる
救済ルートが機能している可能性が高い。
いじめをゼロにすることはできない。
だが、詰まない環境を選ぶことはできる。
親の立場で考えれば、結論は現実的だ
親として本当に怖いのは、
• いじめが起きること
ではなく
• いじめが起きても、なかったことにされること
だ。
そう考えれば、
認知件数が高い地域の学校を選ぶ方が、
少なくとも認知される可能性は高い
という判断は、感情論でも過激論でもない。
リスク管理として合理的だ。
必要なのは評価軸の更新だ。この問題の本質は、誰かを吊し上げることではない。
• 首長が悪意を持っているとは限らない
• 教育委員会が腐っているとも限らない
多くの場合は、
• いじめ認知の数字が少ない方が良い、という古い評価
• 認知=恥、という文化
• 問題を増やしたくないという無意識
こうした時代遅れの評価軸が、結果として子どもを危険にさらしている。
いじめの認知件数が少ない地域は、
必ずしも安全な地域ではない。
むしろ、問題が見えにくく、手遅れになりやすい構造を抱えている可能性がある。
いじめを減らすために必要なのは、
数字を小さく見せることではない。
早く見つけ、早く認知し、早く止める。
認知は失敗ではない。
予防装置が作動した証拠だ。
この評価軸に切り替えられるかどうか。
そこに、子どもの安全がかかっている。
勘繰男


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