ピンクのクマ
目黒にある東京都庭園美術館からの帰り道、ごきげんに歩いていると動物のぬいぐるみでいっぱいのショーウインドウを見つけた。かわいらしいぬいぐるみたちに心を奪われて、迷わずお店に入る。
一歩お店に入ると、どこか覚えのある匂いが。
あれだ、昔実家にあった古いオルゴールと同じ匂いだ。
幼少期の記憶がよみがえってきて懐かしい気持ちになる。
お店の中には、とにかくたくさんのクマのぬいぐるみがいた。どうやらテディベアのお店らしい。テディベア以外にもライオンやウサギなど他の動物のぬいぐるみがいて、とにかくかわいらしいぬいぐるみで満たされているお店だった。
店内を散策する。
どのぬいぐるみもかわいらしい。
ふと、誕生日ごとのぬいぐるみを置いているコーナーが目に入った。
366個、誕生日ごとに微妙に異なるクマのぬいぐるみが置かれている。
もう生産は終了しているらしく、売り切れてしまっている誕生日もあった。
どきどきしながら自分の誕生日を探す。
私の誕生日は、えーと。あった!私の誕生日のぬいぐるみはまだそこにいた。
首を少し傾げたピンクのクマ。かわいい。「ほえ?」とでも言ってそうな表情。何か言いたげな表情。
決めた。おうちに連れて帰ることにしよう。
お願いします。レジに持って行って店員さんとお話をする。
お誕生日のものはありましたか、と店員さんが言う。
はい、首を傾げているのがかわいいなと思いまして、と私が言う。
許してくれますか、と店員さんが言う。
許すもなにも傾げているのがいいんです、と私は思う。
首を傾げていて、完璧じゃなくて、何か言いたげで、そこが愛らしくて、だから連れて帰ろうと思ったんです、と私は思う。
ここまで書いて、ふとピンクのクマに視線をやった。ピンクのクマは何も言わないけれど、私を見つめ返してきた。何で見てるんですか?とでも言いたげな表情で。首を傾げて。
だから連れて帰ったんです、と私は思う。
愛らしい。ちょっと生意気だけどね。
けどそこもいいでしょ、と私は思う。
