【REVIEW:】#02 「公助」と「自助」の未来:アリアドネEBPMが導く社会変革 前半
行政と民間が社会課題解決をめざす「官民共創」の可能性に迫る【REVIEW:】シリーズ。
第二弾は、近畿大学・保本先生の視点から、官民連携事業研究所が展開するサービス「アリアドネ」と「アリアドネEBPM」 による官民共創について紐解いていきます。
はじめに
人類は、社会構造を大きく変革させながら発展してきました。現代社会が抱える課題は複雑化・高度化しており、ある部分を改善すると別の部分に負荷がかかる。いわば“ルービックキューブのような課題”が増えています。
こうした背景から、日本では、経済成長と社会課題の解決を両立する「Society 5.0(5番目の社会)」の実現が目指されています。しかし、行政(官)だけでも、企業(民)だけでも、この複雑な課題には対応できません。両者の強みを組み合わせて新しい価値を生み出す 「官民共創」 は、これからの社会を支える重要なアプローチです。
ここでは、この官民共創を具体的に実践する取り組みである、株式会社官民連携事業研究所(P4RL)が展開する「アリアドネ」と「アリアドネEBPM」について紹介します。
「官民共創」を支える重要な役割とは
官民共創とは、「行政と企業が協力する」ことを意味するだけではありません。両者の持つリソースや知見を掛け合わせ、社会に新しい価値を創造する“共創プロセス”そのものを指します。
しかし、その実践は簡単ではありません。東北経済産業局の「必読!官民パートナーシップを実現する100の心得」でも指摘されているように、官と民の間には見えない「壁」があります。
前例主義の壁:前例のない取り組みへの抵抗
公平性の壁:特定企業の優遇だと誤解されることへの懸念
このような行政と企業の文化やスピード感の違いが、共創の妨げになることも少なくありません。
この壁を乗り越える役割を担うのが、P4RLのような 中間支援組織 です。
P4RLは「善き前例をともにつくる」という理念を掲げ、ビジネスと公共政策の間にシナジーを生み出す「官民連携のハブ」として活動しています。行政と企業の間に立ってプロジェクト全体を見渡し、両者が円滑に協力できるよう調整・支援する役割を果たしています。
また、P4RLには自治体出身者など公共分野に精通した人材が多く在籍しており、
行政の視点
ビジネスの視点
の両方を理解した上で、信頼関係の構築やプロジェクト推進を担っています。
しかし、理念だけでは社会は変わりません。具体的な課題を解決し、目に見える成果を生み出すための仕組みが必要です。この共創を加速させる基盤の一つが、P4RLが展開する連携寄贈プラットフォーム「アリアドネ」です。

連携寄贈プラットフォーム「アリアドネ」
企業では、商品の入れ替えや販売終了、出荷期限が近いといった様々な理由により、まだ使用可能な商品でありながら、流通に載せられず廃棄せざるを得ないことがあります。「アリアドネ」は、企業の抱える「もったいない」を、地域の「ありがとう」へと転換することで、官民共創の具体的な成功体験を生み出す、いわば「共創への入口」です。
その名は、ギリシャ神話で英雄テセウスが迷宮から脱出する際に導きの糸を与えた王女アリアドネに由来します。複雑な官民連携の“迷宮”を進むための道筋を示す存在という意味が込められています。
「アリアドネ」は、一見無関係に見える次の2つの課題をつなぎます。
企業側の課題:品質に問題がないのに廃棄される在庫
自治体側の課題:子育て支援や防災など、物資不足
つまり、企業の商品を自治体が活用できる形で寄贈することで、双方の課題を同時に解決する仕組みです。
これは単なる慈善活動に留まりません。寄贈品は、自治体の子育て政策、高齢者支援、防災対策など、地域の課題解決に具体的に活用されます。たとえば、ベビー用品大手のピジョン株式会社は、アリアドネをきっかけに自治体と連携し、賞味期間が残っているベビーフードを複数の自治体に寄贈しました。この取り組みは、単なるフードロス削減に終わりませんでした。ある自治体では寄贈されたベビーフードを3か月検診のノベルティとして配布したところ、検診の受診率向上につながり、結果としてネグレクトなどの早期発見に貢献するという、複合的な地域課題解決へと発展しました。これは、寄贈という一つのアクションが、企業の社会貢献、環境負荷の低減、そして自治体の子育て支援策の強化という、複数の価値を同時に生み出す構造的転換を象徴しています。
アリアドネの活動は、廃棄コストの削減や脱炭素社会への貢献につながり、企業にとっては社会的責任(ESG経営)の推進となり、自治体にとってはリソースの有効活用となる「善き前例」です。2025年12月までに、全国で約90自治体が参加し、累計550万点以上の寄贈商品が地域に届けられています。
アリアドネの成功は、官民共創における「寄贈モデル」の有効性を明らかにしました。
しかし、寄贈が社会にどれほど良い影響を与えたのか、政策改善にどう役立ったのかは、可視化しなければ継続的な価値創造につながりません。
ここから生まれたのが 「アリアドネEBPM」という新たな取り組みです。

寄贈モデルから生まれた官民共創を一過性のものに終わらせず、より深く、持続可能な社会変革の仕組みへと昇華させることが重要です。後半では、この次なる取り組みについて紹介します。
※本記事は、株式会社官民連携事業研究所の取材・資料提供に基づき構成しています。
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