15.)頑張っているのに空回りする人へ
そのひたむきさが、誰かの救いへとまっすぐに届くように。
走り続ける勇気を持つあなたが、二度と自分を削りすぎないために。
加納光|40年間、誰よりも「選ばれない理由」と向き合い続けてきたからこそ、伝えたいこと
人一倍努力しているのに、なぜか思うように評価が追いつかない。
そんなもどかしさを抱えている人には、ある共通点があります。
それは、決してあなたの力が足りないからではありません。
ただ、心を配る「ピント」が、ほんの少しだけずれているだけなのです。
「良かれと思って」の優しさが、迷い道を作ってはいませんか。
誰よりも素早く立ち回り、
誰よりも周りに気を配り、
誰よりも真面目に、目の前の仕事と対峙する。
それなのに、
思うような実を結ばず、
誰かからの「ありがとう」も届きにくく、
ただただ、心身が擦り切れていく感覚だけが残る……。
一生懸命に生きている人ほど、これほど切ないことはありません。
けれど、40年という歳月のなかで数多の仕事の現場を見つめ続けてきた私が確信しているのは、空回りという重荷を背負ってしまう人は、努力が足りないのではなく、**「情熱を注ぐ対象」**で損をしてしまっているということです。
たとえば、あなた自身にもこんな記憶はありませんか。
求められてもいない細部までひとりで背負い込み、
相手が望んでいるわけではない親切に、全霊を傾ける。
あまり重要ではないはずの作業に心血を注ぎ、肝心の本題が後回しになる。
誰ひとりとして取りこぼさず、すべての人に愛されようと奔走する……。
それはあまりに純粋な善意です。けれど、その純粋さゆえに、真に手にするべき成果と重なり合わなくなってしまうのです。
人は、ただ闇雲に汗を流せば報われるわけではありません。「今、ここにあるべき答え」のために力を尽くしたとき、初めてその輝きが認められるのです。
お店という営みでも、全く同じことが言えるでしょう。
流れる音楽だけを豪華に整え、
包み紙だけを華やかに飾り、
言葉の発信だけを毎日繰り返していても。
肝心の商品に真心が欠け、対話に誠実さがなければ、人々の心は離れていきます。
私はセミナーを通して、この「努力の向け先」について説き続けてきました。
ひたむきさは何よりも尊いもの。けれど、その矛先を違えてしまえば、それはただ自分を削るだけの消耗へと変わってしまいます。
だからこそ、私は経営者の方々にも、働く人との向き合い方についてこう問い直してもらいます。
何よりも先に、実りへと直結する一事に手を触れていますか?
求められていない過剰な献身で、自分を追い詰めていませんか?
完璧な姿を追い求めるあまり、大切な約束の時を忘れていませんか?
すべての人に頷くのではなく、真に大切にすべき人の瞳を見ていますか?
日々の努力が独りよがりになっていないか、毎週、心に問いかけていますか?
誰かのためにと、心身が悲鳴をあげるような歩みを続けていませんか?
そして、報われない想いに揺れるあなたには、こう伝えたいのです。
太陽が昇ったら、今日、何に一番の価値を宿すべきか定めること。
動き出す前に、何のための歩みなのかを一筆書き留めること。
添えない願いには、凛として「できない」と伝える勇気を持つこと。
八割の仕上がりであっても、潔く世に送り出す仕事を持つこと。
誰からも気づかれない努力に、命を使いすぎていないか振り返ること。
何もしない一日も、大切な予定として手帳に書き込むこと。
実際、ある女性社員は「毎日目が回るほど忙しいのに、正当に評価されない」と、深い孤独の中にいました。
お話を聞けば、彼女は雑多な頼まれごとをすべて引き受け、
細やかな気遣いに心を砕き、
自らの本業をいつも後回しにしていました。
そこで私は、自らの本分を最優先にし、
細かな用事は周りと分かち合い、
届く依頼のひとつひとつを丁寧に見極めるよう伝えました。
ただそれだけで、彼女が手にする果実も、周りからの敬意も、劇的に変わり始めたのです。
能力が低かったわけではありません。その豊かな才能を、正しく使う道を選び直しただけなのです。
あなた自身も、そうではありませんか。
底の抜けていない器に注いでこそ、水は満ちていく。
どれほど注いでも、漏れゆく先を塞がなければ、心はいつまでも乾いたままです。
人の営みは、とても自然なものです。
人の心は誰しも正直で、誰もが無理なく生きていきたいのです。
ガンバる時でも無理にならないように少し形を変えて前に進める。
だから、もし今、あなたが空回りしていると感じるのなら、
さらに自分を鼓舞する前に、
「今のこの努力は、あの人の笑顔や、確かな結果へと繋がっているだろうか」と、自分自身に問いかけてみてください。
あなたには、すでに素晴らしい力が備わっています。
あとは、その煌めきを注ぐべき「本当の場所」を見定めるだけでいいのです。
「この投稿内容の核心が理解しやすい本」
・『エッセンシャル思考』(グレッグ・マキューン)
・『限りある時間の使い方』(オリバー・バークマン)
・『やめる時間術』(尾石晴)
・『仕事は楽しいかね?』(デイル・ドーテン)
・『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット)
