92. 売れない理由を商品力だけにする人は伸びない
磨き抜いた一品が、誰の指にも触れずに眠ってしまう理由
中身を疑うその前に、届けたい相手との「結び目」を見つめ直す
加納光|40年間、誰よりも「選ばれない理由」と向き合い続けてきたからこそ、伝えたいこと
一生懸命に汗をかいているのに、なぜか思うように評価が追いつかない。
そんなもどかしさを抱えている人には、ある共通点があります。
それは、決してあなたの力が足りないからではありません。
ただ、心を配る「ピント」が、ほんの少しだけずれているだけなのです。
「もっと良くすれば」という焦りが、本質を曇らせる
思うように結果が出ないとき、誰もが真っ先に自分に言い聞かせる言葉があります。
「もっと良いものを作らなければ」
「品質が足りないから、選ばれないんだ」
「他よりも優れた機能を付け加えなければ」
中身を磨くことは、もちろん大切です。誠実なものづくりこそが、長く続く土台になるのは間違いありません。
けれど、40年という月日を現場で重ねてきた私が確信しているのは、「売れない理由を商品そのものだけ」に求めてしまうと、本当の答えから遠ざかってしまうということです。
なぜなら、届かない原因の多くは、もっと別の「心のひっかかり」に潜んでいるからです。
たとえば、あなたにもこんな記憶はありませんか。
「あそこは美味しい」と誰もが口を揃えるお店。
それなのに、なぜか客足がまばら。
思い切って訪ねてみれば、車をどこに停めるべきか迷い、入り口の佇まいに気後れし、注文の仕方もどこか複雑。お会計にさえ手間取ってしまう。
これは、味の問題ではありません。
手に取るまでの、そして手にしたあとの「心の負担」が、せっかくの美味しさを追い越してしまっているのです。
それは、スマートフォンの画面越しでも同じこと。
どれほど高評価なレビューが並んでいても、最後の最後まで送料が分からなかったり、いつ届くのかが見えなかったり。入力の画面があまりに長すぎれば、心はふっと冷めてしまいます。
人は、商品そのものだけを求めているわけではありません。
「迷い」や「不安」、そして「わずかな不快感」が取り除かれた、曇りのない体験を選び取っているのです。
私はセミナーを通して、この「届き方の質」について説き続けてきました。
思うようにいかない組織ほど、会議室に集まっては、さらに新機能を足そう、素材を変えようと、中身の改良に躍起になります。
けれど、その情熱を注ぎ込む前に、まず正すべき場所があるのです。
だからこそ、私は経営者の方々に、まず次のような「心の通い方」を見つめ直してもらいます。
その一品の素晴らしさが、一目で相手の心に響いていますか?
初めて出会った人が、迷わずに手を伸ばせますか?
その対価に対して、心からの納得を差し出せていますか?
困ったときに、頼りやすい顔をしていますか?
もてなす心に、日によってのムラはありませんか?
手にしたあとの喜びまで、優しく想像できていますか?
ここを丁寧に繕うだけで、滞っていた流れが嘘のように変わり始める会社は珍しくありません。
実際、ある会社では、商品は何ひとつ変えませんでした。
ただ、写真の写り方を整え、
説明の言葉を、相手に届きやすい長さに絞り込み、
受話器越しの声を温かく、
お届けの目安を明確に示したのです。
それだけで、依頼の数は驚くほど増えていきました。
足りなかったのは、商品の力ではありません。
その想いが、相手の元へ辿り着くまでの「道のり」が整っていなかっただけなのです。
あなた自身も、そうではありませんか。
どれほど絶品でも、入りにくいお店は避けてしまう。
どれほど品質が良くても、手続きが煩わしい相手は後回しにする。
どれほど腕が良くても、心の通わない人には頼みづらい。
私たちは、中身だけで心を決めているわけではないのです。
だから、思うようにいかないときほど、さらに作り込む前に立ち止まってみてください。
もっと何かを増やすことよりも、
お客さまが離れていく「商品以外」の理由を、一つひとつ丁寧に取り除けているか。
その視点を持てたとき、あなたの歩みは、これまでとは違う確かな手応えへと繋がっていきます。
