30)売れる人は、商品説明より不安を消している
語れば語るほど、心は遠ざかってしまうから。
「欲しい」を引き出す正体は、流暢な言葉ではなく、胸に潜むしこりを解くこと。
加納光|40年間、誰よりも「選ばれない理由」と向き合い続けてきたからこそ、伝えたいこと
一生懸命に汗をかいているのに、なぜか思うように評価が追いつかない。
そんなもどかしさを抱えている人には、ある共通点があります。
それは、決してあなたの力が足りないからではありません。
ただ、心を配る「ピント」が、ほんの少しだけずれているだけなのです。
磨き抜かれた説明よりも、たった一つの安心を。
成果が上がらないときほど、人はつい言葉を尽くそうとしてしまいます。
どれほど優れた機能か。
いかにお得な価格か。
他とは何が違うのか。
これまでの輝かしい実績。
隅々まで網羅した特徴。
そのひたむきな熱意は、見ていて胸が熱くなるほどです。
けれど、どんなに熱を込めて語っても、相手の心が動かないことがあります。
それはなぜでしょうか。
買い手が求めているのは、完璧な説明を聞くことではなく、「この選択で間違いない」という、胸のつかえが取れる瞬間を待っているからなのです。
私は40年、そんな「心のすれ違い」を何度も目にしてきました。
たとえば、初めての美容室を予約するときのことを思い出してみてください。
追加でどんどんお金がかかったりしないかな。
自分の好みを分かってもらえるかな。
必要以上に話しかけられて、気疲れしないかな。
予定の時間を大幅に過ぎたりしないかな。
私たちが本当に知りたいのは、ハサミの技術がどうこうという難しい話よりも、こうした日常的な不安が解消されるかどうか、ではないでしょうか。
家電を選ぶときだって同じです。細かな性能表に目を通しながらも、最後に頭をかすめるのは、
「自分にも簡単に使いこなせるかな」
「もし動かなくなったら、誰が助けてくれるかな」
という、ささやかな、けれど切実な心配事だったりします。
人は、輝くようなメリットに惹かれるよりも先に、「失敗したくない」という本能に突き動かされているのです。
だからこそ、選ばれ続ける人は、商品の魅力を語り倒すようなことはしません。
相手が口に出せないでいる不安を、そっと掬い上げることから始めます。
私はセミナーを通して、この「心の機微」を大切に伝えてきました。
思うように選ばれない人ほど、話すボリュームで勝負しようとします。
けれど、本当に信頼を勝ち取る人は、相手の胸にある小さな懸念を、誰よりも早く見つけて解きほぐしているのです。
だからこそ、私は経営者の方々に、営業のあり方をこう問い直してもらいます。
お客さまが迷い、立ち止まっている理由を分かってあげられていますか?
初めて触れる人が抱く「心細さ」を、想像できていますか?
手に取ったあとの日々が、ありありと描けるように伝えていますか?
断りたくなってしまう理由を、先回りして包み込んでいますか?
独りよがりな専門用語で、相手を置いてけぼりにしていませんか?
どんな小さなことでも、相手が尋ねやすい空気を纏っていますか?
ここを整えるだけで、成約という形に繋がる確率は、劇的に変わります。
実際、ある会社では、立派なパンフレットを増やすのをやめました。その代わりに、
「手元に届くまで、あと何日かかるか」
「あとの支払いが膨らむことはないか」
「誰が最後まで寄り添ってくれるか」
「もし自分に合わなかったら、どうすればいいか」
この4つの不安を、何よりも先に伝えるように変えたのです。
すると、驚くほど多くの方から選ばれるようになりました。
情報を増やしたからではありません。相手の「安心」を増やしたからです。
あなた自身も、そうではありませんか。
レストランを選ぶときも、味の自慢話を聞かされるより、
「お腹いっぱいになれるかな」「どれくらい待つんだろう」「一人で入っても、浮いたりしないかな」
そんな情報がさりげなく添えられているほうが、ずっと足を運びやすいはずです。
私たちは、魅力に手を伸ばす前に、まず自分を護るための不安を避けようとします。
だから、思うように結果が出ないときほど、説明を磨きすぎないでください。
もっと流暢に話そうとする必要もありません。
ただ、相手がまだ言葉にできていない「不安の種」を、先に一つひとつ取り除いてあげられるか。
その誠実な姿勢こそが、停滞していたすべてを、鮮やかに変えていくのです。
「この投稿内容の核心が理解しやすい本」
『ドリルを売るには穴を売れ』(佐藤義典)
『売れるコピーライティング単語帖』(神田昌典/衣田順一)
『人を動かす』(デール・カーネギー)
『影響力の武器』(ロバート・チャルディーニ)
『エモい言葉のつくり方』(岡本尚也)
