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55. 売れる言葉は、上手い言葉ではない

綺麗な言葉よりも、心にまっすぐ届く言葉を。

飾ることをやめたとき、想いはようやく相手に伝わります。

加納光|40年間、誰よりも「選ばれない理由」と向き合い続けてきたからこそ、伝えたいこと

一生懸命に汗をかいているのに、なぜか思うように評価が追いつかない。
そんなもどかしさを抱えている人には、ある共通点があります。
それは、決してあなたの力が足りないからではありません。
ただ、心を配る「ピント」が、ほんの少しだけずれているだけなのです。


「もっと上手く伝えなきゃ」という焦りが、壁を作っていませんか。

思うようにいかないとき、私たちはつい言葉を飾り立てようとしてしまいます。

耳に心地よい洗練された表現。
機転の利いた、お洒落な言い回し。
巷で流行っている、勢いのある言葉。
自分を立派に見せてくれる、難しい専門用語。

その熱意は、痛いほどよく分かります。
言葉の魔法で、今の状況を変えてしまいたいと願うのは、至極当然のことかもしれません。
けれど、40年という月日を現場で重ねてきた私が確信しているのは、誰かの心を動かすのは「巧みな言葉」ではないということです。
何よりも大切なのは、**「一瞬で、その人の日常に溶け込む言葉」**であるかどうか。

たとえば、あなたにもこんな経験はありませんか。

レストランの軒先に、「至高の美食体験」や「究極の味覚空間」と掲げられている。
なんだか凄そうだけれど、具体的に何が食べられるのか、さっぱりイメージが湧かない。
一方で、「炊きたてのご飯と焼き魚」や「煮込み、すぐに出せます」と書かれていたら、どうでしょう。
お腹が空いているときに、つい暖簾をくぐりたくなるのは、きっと後者のはずです。

人は、感心させられる高尚な言葉よりも、
**「あ、これは自分のためのものだ」**と思える言葉に、思わず背中を押されるのです。

それは、スマートフォンの画面越しでも同じこと。
「革新的なサポート設計」と謳われても、何が嬉しいのかピンときません。
「肩が痛くなりにくい椅子」と添えられていれば、悩んでいる人の心には、一瞬で光が差します。

私はセミナーを通して、この「言葉の変換」の大切さを説き続けてきました。
思うように選ばれない組織ほど、身内だけにしか通じない、どこか独りよがりな言葉を使いがちです。

「高品質」「最先端」「独自技術」「究極のこだわり」……。

たとえそれが真実だとしても、受け取る人の暮らしのなかで、どんな喜びに変わるのかが語られていなければ、それは届かない手紙と同じです。

だからこそ、私は経営者の方々に、まず自分たちの言葉を問い直してもらいます。

  • 子供でも、その喜びを分かち合えるほど明快ですか?

  • 相手が手にする「小さな幸せ」が、ありありと見えていますか?

  • それを使っている自分の姿が、自然と思い浮かびますか?

  • 他の誰でもない「あなた」である理由が、一目で伝わりますか?

  • 息が切れるほど、長すぎてはいませんか?

  • 読み終えたあとの胸に、疲れを残してはいませんか?

ここを丁寧に繕うだけで、返ってくる反応は劇的に変わり始めます。

実際、ある会社では「高機能収納システム」という硬い名前を、
「片づけが続きやすい収納」へと変えただけで、問い合わせの電話が止まらなくなりました。
中身は何ひとつ変えていません。ただ、相手の心への「届き方」を変えただけなのです。

あなた自身も、そうではありませんか。
難しい説明はつい後回しにしてしまうし、分かりやすい案内にはふっと目が止まる。
遠回しな美辞麗句よりも、要点がまっすぐに伝わってくる話に、救われるような心地がするはずです。

私たちは、理解するのに骨が折れるものを、本能的に避けて通ろうとします。

だから、思うように選ばれないときほど、もっと上手く言おうと焦らないでください。
相手の胸に、何のつかえもなく、すうっと入り込んでいく言葉になっているか。

選ばれる言葉の正体は、巧みな技術ではなく、相手の心に寄り添おうとする「優しさ」そのものなのです。

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