90. 価格が高くても選ばれる店の共通点
価値に見合う「納得」が、選ばれる理由になる。
数字の向こう側にある、心がほどける瞬間を大切に。
加納光|40年間、誰よりも「選ばれない理由」と向き合い続けてきたからこそ、伝えたいこと
一生懸命に汗をかいているのに、なぜか思うように評価が追いつかない。
そんなもどかしさを抱えている人には、ある共通点があります。
それは、決してあなたの力が足りないからではありません。
ただ、心を配る「ピント」が、ほんの少しだけずれているだけなのです。
「高い」という言葉に隠れた、本当の願い。
「このお値段では、やはり高すぎるでしょうか」
これまで、多くの経営者の方々から、切実な相談を受けてきました。
思うように選ばれない理由を、つい「数字」のせいにしてしまう気持ちは、痛いほどよく分かります。
けれど、40年という月日を現場で重ねてきた私が確信していることがあります。
それは、値段が張るから選ばれないのではない、ということ。
ただ、その金額を支払うだけの「確かな理由」が、相手の心に届ききっていないだけなのです。
たとえば、あなたにもこんな経験があるはずです。
近所のお店より、少しだけ背伸びが必要な美容室。
それでも、いつも予約がいっぱいで活気にあふれている。
それは、待たされることのない軽やかさや、こちらの想いを丁寧に汲み取ってくれる誠実さ、そして、いつ訪れても変わらない仕上がりの安心感があるからではないでしょうか。
扉を出る瞬間の晴れやかな気分まで含めて、私たちはその価値を認めているのです。
反対に、いくら安くても、
なかなか予約が取れなかったり、
人によって技術にムラがあったり、
説明がどこか投げやりだったり……。
それでは、安さという魅力は、あっと言う間に色あせてしまいます。
人は、ただ数字の低さだけで選び続けるわけではありません。
「ここなら間違いない」という信頼や、自分を大切に扱ってくれる心地よさに対しても、心から価値を感じてくださるのです。
それは、街の定食屋さんでも同じこと。
少し高めの設定でも、ふっくらと炊き上がったお米、隅々まで磨かれた店内、そして、温もりのあるもてなし。
そんな「また明日から頑張ろう」と思えるような空気に惹かれて、人は何度も足を運ぶのです。
私はセミナーを通して、この「選ばれる理由」の作り方を説き続けてきました。
思うようにいかないときほど、つい無理な値下げにばかり知恵を絞り、大切な「信頼の積み重ね」を後回しにしてしまいがちです。
だからこそ、私は経営者の方々に、まず次のような「心の届き方」を見つめ直してもらいます。
その対価に見合うだけの、深い安心を手渡せていますか?
いつ、誰が向き合っても、変わらない誠実さがありますか?
相手の瞳に、その価値が分かりやすく映っていますか?
相手の貴重な時間を、疎かにしてはいませんか?
誰かにそっと教えたくなるような、喜びはありますか?
お支払いを終えたあとの胸に、爽やかな余韻は残っていますか?
ここを整えるだけで、価格を下げずとも、選ばれる確率は劇的に変わります。
実際、ある会社では、安売りをきっぱりとやめました。
その代わりに、約束の期日をどこよりも守り、
問い合わせへの返信を早め、
提案の内容を、相手の心に寄り添う形へと整えたのです。
すると、単価はそのままに、依頼の数は驚くほど増えていきました。
変えたのは価格ではなく、相手のなかにあった「不安」を拭い去ったことでした。
あなた自身も、そうではありませんか。
少し値が張っても、感じの良いお店を選びたい。
多少の差なら、心から信頼できる人に任せたい。
安くても、嫌な思いをする場所は、二度と通りたくない。
私たちは、金額という数字だけで生きているわけではありません。
だから、価格のことで立ち止まってしまったときほど、自分に問いかけてみてください。
もっと安くすることよりも、
「この値段でも、あなたにお願いしたい」
そう思ってもらえる誠実さが、相手に真っ直ぐ届いているかどうか。
そこが整ったとき、あなたの提示する価格は、誰にも真似できない「誇り」という名の武器に変わります。
