91. リピーターが増えない店は、買った後が弱い
「さよなら」の後に、再会の約束を編み込めているか
二度目の出会いがない理由は、技術ではなく「余韻」のなさにあります
加納光|40年間、誰よりも「選ばれない理由」と向き合い続けてきたからこそ、伝えたいこと
一生懸命に汗をかいているのに、なぜか思うように評価が追いつかない。
そんなもどかしさを抱えている人には、ある共通点があります。
それは、決してあなたの力が足りないからではありません。
ただ、心を配る「ピント」が、ほんの少しだけずれているだけなのです。
お買い上げの瞬間は、ゴールではなく「始まり」の合図
新しいお客さまと出会うために、必死に汗を流しているお店はたくさんあります。
華やかな広告を出し、
SNSを毎日更新し、
大々的なキャンペーンを仕掛け、
初めての方への割引を掲げる。
その努力は、もちろん無駄ではありません。
けれど、せっかくの出会いが実を結ばず、売上が足踏みしているお店には、ある切実な綻びがあります。
それは、「手にした後の時間」を、どこか疎かにしてしまっていることです。
私は40年、そんな風景を何度も目にしてきました。
入り口は立派で、初めて訪れる人も多い。商品だって、決して悪くない。
それなのに、二度目の足音が聞こえてこない。
それは、お会計を終えた瞬間に、まるで糸が切れたかのように関係が終わってしまっているからです。
たとえば、あなたにもこんな記憶はありませんか。
初めて訪れた美容室。
腕前は確かで、接客も丁寧だった。
けれど帰り際、かけられた言葉は「ありがとうございました」という、ありふれた一言だけ。
いつ頃また整えればいいのか。次はどんな楽しみがあるのか。
そんな言葉を一つも添えられないままお店を後にすると、不思議と「次は別のお店でもいいかな」という気持ちが芽生えてしまうものです。
一方で、
「一ヶ月半もすると、少し扱いにくくなるかもしれません」
「次は、こんな雰囲気に変えてみるのも素敵ですよ」
「気になることがあれば、いつでも頼ってくださいね」
そんなふうに、自分の「これから」に寄り添う言葉を贈られたらどうでしょう。
きっと、日常に戻ったあとも、ふとした瞬間にそのお店のことが胸に浮かぶはずです。
レストランでも、同じことが言えます。
「美味しかったね」で終わってしまうお店。
一方で、「次はあの季節の味が始まりますよ」「この曜日は、ゆったり過ごせるのでおすすめです」と、再会のきっかけをそっと手渡してくれるお店。
私たちは、ただ満足しただけで戻ってくるほど、暇ではありません。
「また行きたい」と思える理由を、心のなかに大切にしまわせてくれる場所へと、再び足を運ぶのです。
私はセミナーを通して、この「心の繋がりを続ける工夫」を説き続けてきました。
思うようにいかないときほど、新しい出会いばかりを追いかけてしまいがちです。
けれど、支えとなってくれるのは、いつだって「戻ってきてくれる人」の存在です。
だからこそ、私は経営者の方々に、お買い上げの後のあり方を問い直してもらいます。
「また次も」と思える理由を、相手の心に残せていますか?
感謝の言葉が、形だけの儀式になっていませんか?
手に取ったあとの不安を、先回りして拭えていますか?
その方だけのこれまでの歩みを、大切に扱えていますか?
再び出会うべき時期を、優しく示せていますか?
忙しい日常のなかで、ふと思い出してもらう工夫はありますか?
ここを丁寧に繕うだけで、滞っていた流れが劇的に変わり始めるお店は珍しくありません。
実際、あるお店では広告を増やすことを一度やめました。
その代わりに、届いたあとの感謝を伝え、
次のおすすめ時期をそっと案内し、
季節ごとの楽しみを便りに乗せ、
常連の方への、心のこもった一言を欠かさないようにしました。
すると、新しいお客さまが急増したわけでもないのに、再び訪れる人の笑顔で、お店は活気を取り戻したのです。
あなた自身も、そうではありませんか。
買って終わりの場所は、悲しいほどすぐに忘れてしまう。
けれど、手にした後も温かな余韻が続く場所は、いつまでも記憶の特等席に残っている。
人間関係だって同じはずです。
会った後に「楽しかったね」と一言添えてくれる人。
何かをお願いした後に、さりげない気づかいを見せてくれる人。
そんな相手とは、ずっと縁を繋いでいたいと願うものです。
だから、二度目の出会いがないと嘆く前に、立ち止まってみてください。
もっと外へ向けて叫ぶのではなく、目の前の方に、また出会うための約束を託せているか。
その一歩から、あなたの想いは、確かな信頼へと変わっていきます。
