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「言いたいことを言えばいい」が、そんなに簡単じゃない

「もっと自分の気持ちを言えばいいよ」

「嫌なことは嫌って言えばいい」

「本音で話し合えばいい」

最近は、そんな言葉をよく聞きます。

たしかに、その通りです。

自分の気持ちを伝えることは大切。

我慢し続ける必要なんてない。

でもね。

僕は思うんです。

「言いたいことを言えばいい」って、そんなに簡単じゃないよ。

だって、その先に何が起こるかわからないから。

夫に不満がある。

「あなたのこういうところが嫌」

と言いたい。

でも、

「じゃあ、あなたはどうなんだよ」

と返されたら?

会社の上司に、

「そのやり方は間違っています」

と言いたい。

でも、

「では、あなたなら結果を出せるんですか?」

と返されたら?

友人に、

「最近、あなたの言い方が嫌なんだ」

と言いたい。

でも、

「こっちだって、あなたのここが嫌だった」

と言われたら?

怖いですよね。

本音を言うことが怖いのではありません。

本音を言った後に返ってくる本音が怖い。

ここなんじゃないでしょうか。

だから、人は黙る。

飲み込む。

笑う。

「まあ、いいか」

と自分に言い聞かせる。

そして家に帰ってから、

「本当はあれ、嫌だったんだよな」

なんて一人で考える。

人間って、不思議です。

自分の心の中では、

「あの人が悪い」

と思っているのに、

本人を前にすると、

「いや、大丈夫ですよ」

なんて言ってしまう。

それは弱さなのでしょうか。

僕は、必ずしもそうではないと思います。

そこには、

関係を壊したくないという気持ち

があるからです。

夫婦ならなおさら。

家族ならなおさら。

職場なら生活がかかっている。

友人なら、長い付き合いがある。

だから人は、本音をそのまま投げつけるのではなく、

「ここまでは言っても大丈夫」

という境界線を探しながら生きています。

それが、

「大人になる」

ということの一部なのかもしれません。

ただし。

ここにも落とし穴があります。

言わないことが、いつも優しさとは限らない。

我慢が、いつも美徳とは限らない。

「波風を立てない」という選択を繰り返しているうちに、

自分の心が、

「私はどうしたいんだろう」

を忘れてしまうことがある。

だから、

「言うか、言わないか」

の二択ではなく、

「どう伝えるか」

を考えることが大切なのだと思います。

「あなたは最低」

ではなく、

「私は、この言葉を聞いたとき、とても悲しかった」

と言う。

「あなたは何もわかっていない」

ではなく、

「私は、こういうふうに受け取ってしまった」

と言う。

相手を裁く言葉から、

自分の気持ちを伝える言葉へ。

それだけでも、少し違ってきます。

本音というのは、

相手を殴るための武器ではない。

自分の心を、

「ここにいるよ」

と知らせるためのものなのかもしれません。

そして、どうしても言えないときがあってもいい。

言ったら壊れてしまう関係もある。

今はまだ言える状態ではないこともある。

そんなときは、

「言えない自分はダメだ」

と責めなくていい。

ただ、

自分の本音まで消してしまわないこと。

紙に書いてもいい。

一人でつぶやいてもいい。

「本当は嫌だった」

「本当は寂しかった」

「本当は悔しかった」

まず自分だけには言ってあげる。

それだけでもいいんです。

人に言えなくても、

自分まで自分を無視しなくていい。

本音を言う勇気より、

自分の本音を知る勇気。

もしかすると、こちらのほうが先なのかもしれません。

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