「仲間づくり」のファイナンス
noteにとって、2025年は大きな転換点となる1年でした。1月にアメリカのGoogle、そして11月に韓国・NAVERとの資本業務提携を発表したからです。
連続的なアライアンスや業績の躍進もあり、株価は年初から3倍以上の水準で推移しています(2025年11月末時点)
Googleは言わずもがな世界最大の企業の一つ。そしてNAVERも韓国最大のインターネット企業で、時価総額は4兆円以上とアジア屈指のテック企業です。
時価総額で言えば、NAVERはnoteの100倍以上。
Googleにいたっては1万倍以上の開きがあります。
そのような世界的なビッグテックが、まだ成長途上の日本のグロース上場企業であるnoteを「共に未来をつくる相手」として選んでくれた。
今回のファイナンスは、専門用語で「PIPEs(パイプス)」と呼ばれる手法ですが、そこには単なる資金調達の枠を超えた、「仲間づくり」という私たちの想いが込められています。
本稿では、CFOの視点から、この2件のファイナンスの特徴と、そこに込めた想いについて書きたいと思います。
なぜ、公募増資ではなく「PIPEs」だったのか
上場企業の資金調達には、公募増資や社債、新株予約権(ワラント)など多くの選択肢があります。特に、広く一般投資家から資金を集める「公募増資」は、上場企業の特権とも言えます。
しかし今回、私たちは、特定のパートナーと深く手を組むPIPEs(パイプス)というファイナンスを選択しました。PIPEsとは、"Private Investments in Public Equities"の略で、特定の大口投資家(ファンドや事業会社)に向けて株式発行などのファイナンスを行う手法です。
なぜ公募増資ではなく「PIPEs」を選択したか。企業規模的にまだ公募増資ほどの大掛かりなファイナンスは不要と考えたこともありますが(公募増資はステークホルダーが多くなるため、お金も時間もかかります)、より大きな理由として、ファイナンスを通じて「この会社と一緒に未来をつくりたい」と互いに思える仲間を広げたいと考えたからです。
今回のnoteのファイナンスには、こだわった3つのポイントがあります。
1. 新株予約権(ワラント)ではなく、直接の「株式」の発行
時価総額にもよりますが、通常、日本のグロース企業が資金調達をする際、投資家はリスクを抑えるために「新株予約権(ワラント)」を好む傾向にあります。ワラントは行使して初めて株に変わる権利ですが、株価下落局面においては行使しなければ損失が発生しないため、投資家にとってはダウンサイドリスクが軽減されるメリットがあります。
しかし、GoogleもNAVERも、ワラントではなく直接、noteの株式を引き受けてくれました。
これは金融実務上の単なるスキームの違いではありません。経営視点で見れば、「noteの未来を信じて同じ船に乗った」という、コミットメントの表れと捉えることができます。 ワラントであれば、権利行使されなければ当社に資金は入ってきませんが、今回は新株発行です。即座に成長資金を獲得し、事業投資を加速させることができます。
「noteと同じ船に乗り、一緒に成長させていく」世界のビッグテックからそのように評価いただけたことが、何よりの資産です。
2. お金だけではなく、事業も含めた戦略提携
今回、ファイナンスの相手が、世界的なビッグテックという点も特徴です。
GoogleやNAVERのような世界的なテクノロジー企業と資本業務提携を結ぶことで、資金だけでなく、彼らが持つAI技術、グローバルなネットワーク、そして世界最先端のサービスやテクノロジーの知見をnoteに取り込むことができ、noteのプラットフォームをさらに飛躍させる未来を描くことが期待できます。
発表翌日、いずれのディールでもnoteの株価はストップ高となりました。 通常、増資は株式の希薄化を招くため株価は短期的に下落しやすいものですが、市場からもこれを単純な希薄化ではなく「未来に向けた戦略的なファイナンス」と受け止めていただいたと考えています。もちろん翌日の株価がすべてではなく、これをきっかけに持続的に企業価値を上げていく必要がありますが、CFOとして、投資家の皆様にこのパートナーシップの可能性を評価いただけたことを嬉しく思います。
3. 極小ディスカウント、そしてプレミアム発行
今回の発行価格はCFOとして私もこだわり、またnoteのポテンシャルが証明された点だと考えています。
通常、公募増資も第三者割当増資も上場企業の新株発行は「ディスカウント(割引価格)」で行われます。前述のように希薄化で株価が下落しやすいことと、条件を握ってから実際の割当日までマーケットが日々動いており価格変動リスクがあるため、ボラティリティの高いグロース株であれば、10%近いディスカウントも珍しくありません。
しかし今回、Googleとはわずか2.3%の小幅なディスカウント、そしてNAVERに至っては前日終値に対し10%の「プレミアム(上乗せ価格)」での発行となりました。
これは、「現在の市場価格よりも高い値段を払ってでも、noteと一緒に未来をつくりたい」という意思の表れであり、noteという企業の将来価値に対する、これ以上ない評価です。 これにより、既存株主の皆様への希薄化も最小限に抑えつつ、最大限の成長資金を確保することができました。
ファイナンスは仲間づくり
未上場の頃から心がけていることですが、「ファイナンスは仲間づくり」だと考えて取り組んでいます。お金は誰から調達しても1円は1円。しかし、会社の意思に共感して未来を信じて投資いただく株主は同じ船に乗る仲間であり、誰から成長資金を得るかというのは企業にとって今後の成長を左右する、非常に重要な「仲間づくり」と考えています。
noteの今回のPIPEs型のファイナンスは、その仲間づくりの観点から、強い意志と目的を持って実行しています。
昨今、グロース市場をめぐる環境の厳しさから、TOB、MBOなどを通じた非上場化を選択する企業も増えています。それぞれの企業の置かれた状況が異なるため、一概に何が正解とは言えません。
ただnoteは、上場企業として世界に仲間を広げる選択肢をとりました。戦略的に仲間を探し、交渉を重ね、まだ小さい存在ながらも世界の大企業とアライアンスを結べたこと。これも、グロース企業の成長のあり方の一つになり得ると考えています。
まだまだ小さな日本のグロース企業でも、綿密なロジックと、未来を信じる熱量があれば、世界の巨人と対等な提携が結べる。noteの「仲間づくり」のファイナンスが、日本の上場グロース企業にとって成長への選択肢の一つになれば幸いです。
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