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キャリアショックを「悲哀の仕事」として捉え直す ─喪失から再編へ

異動など内示を受けて意図がわからず自分の今までが否定されたような感覚、上司が変わる、組織改編、定年退職、再雇用、病気や介護などでのキャリア中断など誰にでも起こりうる変化、出来事。キャリアショック。
キャリアショックとは高橋俊介氏がその著書で提唱した概念で「自分が描いてきたキャリアの将来像が、予期しない環境変化や状況変化により、短期間のうちに崩壊してしまうこと」を指す。

『対象喪失―悲しむということ』(小此木啓吾 1979)を読んで「キャリアショックだ!と思っていた自分自身の出来事に対するなんとも言えない気持ちは喪失感なのでは?」と感じた。
そこで小此木啓吾氏の対象喪失論を手がかりに、キャリアショックを「職業的対象喪失」として再解釈してみたい。

対象の種類:典型例
愛情対象:家族、恋人、友人など(キャリアとしては同僚、上司、メンター)
環境対象:家庭、学校、地域、職場など (キャリアとしては会社、部署、業界、勤務地)
自己対象:自己像、役割、能力イメージなど(キャリアとしては職業アイデンティティ、専門家としての自分像)

キャリアショックは「出来事」であると同時に「対象喪失」であり、その後に必要なのは「ではどうするか?という意思決定」だけでなく、「喪失を哀悼する心理過程」であるということは意外と見落とされている観点なのではないだろうか。
「嫌だと言っても、そうなってしまったんだから仕方ない。」自分に向き合わずに見なかったことにして進んでしまう。
そして、後から「あの時の異動がなければ…こんなはずじゃなかった!会社は自分の能力をわかってない!何が悪かったんだ?」と取り戻せない過去にグルグルと時間を費やすことになる。その結果、メンタルヘルスの問題(異動先での適応障害やうつ)などを引き起こすこともあるだろう。

ではどうすれば良いのか?
小此木氏によると対象喪失には「悲哀の仕事」が必要だ。対象喪失が起きたとき、心が以下の段階をたどることが「悲哀の仕事」だと整理される。

段階:心理的特徴
ショック・麻痺:現実感の欠如、ぼんやりする感じ
否認・抗議:「そんなはずはない」、怒り、他罰
絶望・抑うつ:無力感、自責、虚無感
離脱・再編:対象へのこだわりが弱まり、新しい現実への適応
この「悲哀の仕事」が十分に行われないと、抑うつや対人関係の問題など、さまざまな形で心理症状が残るという。

自分の場合は想定していた業務を「やらなくていい」と言われたショックを発端に上記の段階として、否認(新しい上司に対する怒り)→抑うつ的な過程が短期間に襲いかかった。そのような中、幸い時間の余裕ができたことから新たにできることを探した。でもやる気になれない… そこでこの気持ちはどこからくるのだろう?ととにかく思い浮かぶことを書き出した。

書き出して気づいたこと
【環境の変化】以前の環境とのギャップ=自分の能力が発揮できるような環境から制限されるやり方になった(「そこまで必要ない。言われたことだけやって!」など)

【自己の役割】新たに学ぼうとしていることが仕事のためのインプットだったため、アウトプットの場がないことがモチベーションの低下要因
→この2つは対象としての職業アイデンティティが脅かされていると感じた。

【客観的視点】現状を客観的(会社として、上司として、業界として)に見ることで会社としては致し方なかった、業界としてもこの状況なら「利益!」になるだろうな、上司も面倒なやつが部下になったなと思っているだろうなと思ったら笑えた。
この辺りから、マネジメントスタイルの違いに対する自分の適応方法を変えることができるし、増えた時間はアウトプット前提よりも人生を豊かにすることに使おう、嫌なら転職すればいいか、という考えに至った。
この客観的に考えられる状態になったところで段階として抑うつ→離脱・再編の過程が進んだと感じる。

起きたことはとても辛く、耐え難いことかもしれない。そこに傷ついた自分を見て見ぬふりをした方が楽かもしれない。でも、その傷つきは心の深いところに残っている。そして、思わぬ所で顔を出すかもしれない。
その時の自分の気持ちを葛藤しながらでも認めること、弱い自分を認めることは怖いかもしれないけれど、内側からの悲鳴に耳を傾けることが自分を大切にすることにつながる。自分のことを一番大事にしてくれるのは自分でありたい。

また、自分自身がキャリアコンサルタントとして相談を受ける側から考えると、キャリアショックへの支援を考える際には再就職支援やキャリアプランニングだけでなく喪失を十分に悲しみ直し、意味づける「悲哀の仕事」への支援を忘れてはいけない。最初は言葉に出てこなくとも、それを支援するのがプロフェッショナルであり、またそう在りたい。

この自分自身の経験は辛くもあったが、それだけ誰かを支援する時に役に立つ幅が広がる経験でもあった。そう思うといろんなことが乗り越えられる。人を支援することは自分自身にも勇気を与えてくれる。

参考文献
『対象喪失―悲しむということ』(小此木啓吾 1979)
『キャリアショック どうすればあなたは自分でキャリアを切り開けるのか?』(高橋俊介 2000)

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