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第49話(今宵の二曲)ShakatakのNight Birds / Invitations そして、Tamara Champlin の Night Birds

静かな夜に──旅の帰路で蘇る六本木の夜

山形新幹線の静かな車内。
発車してしばらくすると、乗客の話し声はゆっくりと薄れ、 車輪の規則的なリズムだけが、夜の中へと続く一本の線のように響きはじめる。

窓の外には、夏の闇がゆっくりと流れていく。
街灯の光が点のように過ぎ、 田園地帯に入ると、光はほとんど消え、 ただ黒い大地と空の境界だけがぼんやりと揺れている。

この“移動しているのに静か”という感覚は、 新幹線ならではのものだと思う。
自分は確かに前へ進んでいるのに、 心はどこか過去へと戻っていく。
旅の帰路は、いつもそんな“間”の時間を連れてくる。

イヤホンから流れていた Shakatak の Streetwalkin’ のリズムが、 ふと、遠い昔の六本木の夜を呼び戻した。
車内の静けさと、都会の夜の記憶が、 ゆっくりと重なり合っていく。

当時、神谷町のホテルオークラで仕事をしていたこともあり、 徒歩で向かえる六本木は、 仕事終わりの疲れをそっとほどいてくれる街だった。

銀座や新宿とは違う、 どこかハイセンスで華やかな空気。
最新の音楽が常に流れ、 夜のスピードが少しだけ速い街。

あの頃の夜は、どこか危うくて、どこか華やかで、 そして自分自身も少し背伸びをしていた。
音楽は、そんな記憶の扉を静かに開ける。

1.Night Birds(Shakatak)──六本木のネオンの色を醸し出す曲

深夜まで営業していた六本木の「東風」で、 初めて聴いた Shakatak の Night Birds。

透明なキーボードのリフが、 夜のネオンをそのまま音にしたようで、 イントロが流れた瞬間、 店内の空気がすっと変わった。

あの頃の六本木には、 まだ少しだけ混沌が残っていて、 その混沌が夜の高揚感をつくっていた。

Night Birds の軽やかな都会のスピードは、 若い自分の鼓動とよく似ていた。
今聴くと、そのスピードがどこか懐かしく、 胸の奥を少しだけくすぐる。

2.Invitations(Shakatak)──夜の余韻を包む曲

同じく六本木で出会った Shakatak の Invitations は、 Night Birds よりも柔らかく、少し甘い。

夜が深まり、 街の喧騒が遠ざかり、 人の気配が薄れていく時間帯に似合う曲だ。

誘うでもなく、引き寄せるでもなく、 ただそっと隣にいるような温度。
夜の終わりに残る静かな余韻を、 この曲はやさしく包んでくれる。

3.Tamara Champlin の Night Birds──日本の夜の湿度

そしてもう一つの Night Birds。 角松敏生が女性ボーカリスト発掘のプロジェクトとして制作した アルバム VOCALAND に収録されている、 Tamara Champlin の Night Birds。

映画「あぶない刑事」のサウンドトラックでも知られる彼女が描く夜は、 Shakatak の都会的なクールさとは違い、 もっと湿度があり、もっと人の気配がある。

日本の都会の夜特有の、 少し湿った風、 ビルの谷間に残る熱、 人の影が交差する気配。

Tamara の Night Birds は、 その“夜の情緒”を丁寧にすくい取っている。

六本木の夜を知る自分にとって、 二つの Night Birds は、 どちらも自分の中の夜を形づくる大切な曲だ。

4.今日の所感

旅の帰路で思い出す都会の夜は、 どこか懐かしく、どこか今の自分に寄り添う。

昔の夜はもう戻らない。
けれどその記憶は、 今の静かな夜の中でそっと息をしている。

今宵の二曲は、 “昔の夜”と“今の夜”を静かにつないでくれる。
そのつながりが、 旅の終わりにふと心を温めてくれた。

参考

六本木の夜を思い出すひとつの手がかりとして


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