《モコンさんの庭》ぼくのセルアニメ業界現場 WORKS Memo:Events 14・『魔物ハンター妖子』1990年
りんたろう監督とぼくとでゲームの企画をしている時に『プログラムに詳しい者がいた方がいいね』という話になりました。そこで以前モスピーダを手がけた時に窪田正義氏がゲーム業界に関わっていることを思い出し声を掛けたのです。マッドハウスまで来社してもらったときに窪田氏は2本の企画書を持参していました。そのひとつが『魔物ハンター妖子』でもうひとつは『電脳都市OEDO808』でした。この企画が丸山正雄氏の目に止まりアニメ化に向けて『魔物ハンター妖子』はぼくが担当し、『電脳都市OEDO808』は川尻善昭氏監督が担当しました。どちらも窪田氏はペンネームの六月十三名義としています。本人の話では六月十三のペンネームは窪田氏自身の誕生日だそうです。
窪田氏よりアニメ版はぼくの好きにやってくださいとのことで、原案の企画書をさらに具体化した企画書を作成してOVAとして東宝より発売と決まりました。
OVAなのでスケジュールも余裕がありましたが、東宝より劇場で公開したいとのことでスケジュールが約3ヶ月ほど大幅に短縮されてしまいました。
間に合わせるために絵コンテを見直して、削れるところは削り、原画まで上がっていたシークエンスも断念せざるを得えませんでした。それでもやはり動画までは上がっていてもセル彩色と撮影にスケジュールが早まったことでしわ寄せがきてしまいました。
仕方なく原画部分のみを彩色したり、線画に透過光を使ったりして、この部分は後日差し替えという前提でなんとか上映日に間に合わせたのですが、劇場側の意向として線画は全部カットになり約45分の作品は30分どほになり、当然物語のつながりが不完全な形で上映となってしまいました。上映後すぐにカットされてしまった線画部分と原画部分だけを撮影したカットを完成させる作業に入りました。スケジュールが当初通りでしたら上映された本編の後に、さらにラストのオチの部分作画も上がりあったのですが劇場に間に合わせるために撮影できませんでした。
このために後日抗議の葉書や封書が多くマッドハウスに送られてきました。封書の中にカミソリが一枚入ったものもありました。
作画の見せ所としてクライマックスの剣劇のシーンは、剣劇大好きの西島克彦氏を始めから予定していました。西島氏に絵コンテを見せた所快諾を戴き、打ち合わせのときに『絵コンテにないアクションも足していいから』ということで、まさに西島克彦氏の本領発揮といった原画が上がってきました。
『魔物ハンター妖子』のCDがスターチャイルド(キングレコードの社内レーベル)よりリリースされました。このリリースにあたりライナーノーツを依頼され、ならばと妖子のモノローグという設定で書いてみました。後日これがいつの間にか妖子の声優、久川綾氏のナレーション・モノローグとしてCDに収録されることになりました。実はこのような使われ方をされることはアフレコ当日までまったく知りませんでした。関係者がライナーノーツの原稿を読んで思いついたことと推測しますが、原稿を書いた当のぼくの知らないうちにこのような使われ方をすること自体普通ではあり得ないことかと思います。でも、ナレーションとするアイデア自体は悪くないので、新たにライナーノーツを書きました。
余談になりますが、ここで竹井正樹氏がゲーム業界へ転身したきっかけだと思われることを話しておきます。ぼくが窪田氏をマッドハウスに呼んだことと関係あるかと思われます。竹井氏とぼくはよく話す機会が多く、当時MSXのゲームで同じものを攻略していました。これがエロゲで竹井氏が進めないところがあり、ぼくはすでにクリアしていたので攻略方法を教えました。後日、竹井氏が観て欲しいと持ってきたのがエロゲのHなシーンを描いた原画でした。竹井氏が『これどう思います?』と見せてくれた原画は今までのエロゲにない別次元の画力でした。ぼくは観るなり『これ!凄い!』と思うと同時にこれは即使える素材になると丁度マッドハウスに来ていた窪田氏にも見せたのです。その後『ロードス島戦記』の制作が始まりしばらくして竹井氏はマッドハウスを辞め『卒業〜Graduation〜』(1992年)のキャラクターを手がけてブレイクしました。ですからぼくの勝手な認識ではありますが竹井氏と窪田氏を初めて合わせるきっかけを作ったのもしかしたら自分かもと勝手に思っています。

↑ OVA「魔物ハンター妖子」第1作(1990年)
脚本:富田祐弘
キャラクターデザイン・作画監督:青木哲朗
絵コンテ・監督:山田勝久
LDに使われている宮尾岳氏のイラストがいい感じです。
※本稿はぼく個人のセルアニメ業界での実体験をもとにした記録です。当時の資料としてご覧いただけたら幸いです。個人名は当時の状況を踏まえ実名で記しております。関わってくださった皆さまに心より感謝いたします。
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