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《モコンさんの庭》:セルアニメ時代に合作作品を手がけたトップクラフト在籍時1972~1983年の覚え書き MEMO:04

RANKIN/BASS&トップクラフト合作制作の手順~作画以降の作業

■作画
作画に関しては作画監督が中心となって原画のスタッフをまとめます。作画打ち合わせにも同席します。あるいはその前に演出と重要事項を話し合っておいて演出に任せることもあります。作画に入ると作画監督の役割もより重要になります。

まず、すべての材料、ストーリー・ボード、セリフと音楽をミックスしたカセットテープ、キャラクター表、背景設定、タイム・シート等をもとにして作画打ち合わせを行います。原画担当者は複数名いますので、絵コンテを見ながら作画監督と相談し、どこのシーンを誰に振るのか事前に決めておきます。

カットごとに必要な芝居づけや変更箇所、作品のムード、ねらいなどは作画監督と事前にミーティングをしておき、その内容をふまえ演出が原画担当者に説明します(作画監督が同席することもあります)。合作アニメーションのキャラクターは、国内アニメーションとはかなり違っていますし、当然、演出的にも外国の演技が要求されます。

原画担当者はセリフの入ったカセットテープを聴いてレイアウト(画面構成)をおこします。合作の場合、レイアウトには、画面における人物の配置、構図、想定される動きを描き込み、背景のパースはしっかり決めておきます。細部に渡り、画面を緻密にするために国産以上に十分な神経を払わなくてはいけません。

レイアウトの後、原画を描くのですが、描く原画はあくまでもヴォイス・トラックを聴いて感じをつかむことになります。セリフはすでにできていますので、秒数の中で正確に動きのタイミングをつけなければなりません。また、細かいニュアンスの芝居や、動きをなめらかにするために、国産アニメーションよりずっと多くの原画を描かなければなりません。

トップクラフトでは、作品により第二原画制を実施しています。これは、第1原画と呼ばれる人がラフな原画(簡単にデッサンだけとって動きをメインとする原画)とタイム・シートに動きのタイミングを記します。次に、第二原画の人がキャラクター表に基づき正確にキャラクターを書き込んだ原画を仕上げる作業に専念するという方法です。この方法で、原画のスピード・アップを図ることができます。この方法はいわば流れ作業なので、原画担当にとって自己の創作力を損ないます。緊急時にしか使わない方法です。

合作における特に重要な要素としては、のっぺりした表情や芝居、そして立体感のない構図をとらないこと。特に、キャラクターの表情芝居、いわゆるフェイシャル・アニメーションを重視しています。キャラクターに命を吹き込む、アニメーションの基本中の基本が要求されているのです。

できあがった原画はまず演出がチェックしてから、作画監督の修正を経てOKになると動画へまわされます。動画では原画と原画のあいだにタイム・シートに指定された枚数を描き加える(中割り)作業を行います。国産アニメーションでは3コマ撮りが基本ですが、合作アニメーションでは2コマ撮りが基本になっています。

また、まったくの動かない止めのカットは極力避けます。止めのカットでも、最低、目パチや髪の毛の動きなどをつけています。当然、動画の枚数も国産アニメーションより多いし、そのぶん動きがなめらかになります。

国産アニメーション(セルアニメの時代)は、30分番組もの(本編20分程度)で3000枚から4500枚(予算にもよる)ほどですが、合作アニメーション『ホビットの冒険』のときは、77分で約4万枚も使用しています。画面の仕上がりの美しさに関係する動画もシビアな技術を要求されます。あくまでも丁寧に、キャラクターのくずれや線の抜け、セリフの形の間違いなどがないように、非常に細かく神経を使っています。

『ホビットの冒険』では、今までにないほどキャラクターの線が多く、さらに手間がかかりました。また、トレス・マシンで綺麗にセルにコピーするため、鉛筆の濃度や線の太さまでも、各自の筆圧などをテストして決められたのです。

■仕上げ
チェックされてOKになった動画は仕上げにまわされます。メインのキャラクターについては、キャラクター表ができたときに色見本を作って、実際に背景にのせて決定しておきます。

色指定では、基本的なキャラクターの色指定の他に、背景の色彩を考えた上で決めるものもあります。夜のシーンや、演出的に色を変えたいシーンについては、美術監督、演出、場合によっては撮影監督などもまじえて、より効果的な色味(色指定)や撮影方法を相談して決めます。小道具の色もここで決定します。

色指定のすんだ動画はトレス・マシン(動画の線を透明なセルにコピーする機械)にかけられます。トレス・マシンでうまくコピーされなかった線や、コピーのかすれたところはトレスで補正します。

トレスでは、線の補正の他に色トレス部分のペン入れなどをします。

次に彩色にまわされ色指定通りの着色がなされます。セルに塗る絵の具の数も国産アニメーションよりずっと多く(国産アニメーションでは80~130色程度)、『ホビットの冒険』の際は実に380色も用意され、しかも背景のムードに合わせて特別に作ったものがほとんどでした。

彩色が仕上がったセルは、色の間違いや色抜け、はみ出しがないかどうか一枚一枚検査され、煙などのように特殊な効果が必要なカットは、ブラシ(エア・ピース)をかける作業にまわされます。(特殊効果とか特効とよんでいます。)また、透過光を必要とするカットについては撮影用にマスクなどが作成されます。

■背景
作画打ち合わせと同じように美術監督と打ち合わせが行われます。各シーンをどんな背景のムードでまとめるか、このシーンは昼なのか、夜なのか、また、霧、雨とか雪であるかとかをストーリー・ボードにそって、細かく記した背景用の香盤表を作成します。

これをもとに、ディスカッションし、背景のイメージを固めていきます。それをもとに、さらに背景設定や背景色彩設計、カラー・ボード(背景色見本)を作ります。『ホビットの冒険』のときは、特定のイラストレーターの作風でという、AR氏の指示があったので、ペンで背景を描きその上から水彩絵の具で色をつけるという、非常に手間のかかった背景となりました。

さて、原画でおこされたレイアウトは、キャラクターの位置や芝居の状況が描かれていますが、背景はラフにしか描かれていません。このレイアウトは、美術デザイナーに渡され、背景設定や資料をもとに、どんな背景を描けば良いかという設計図ともいうべき、背景原図をおこします。この背景原図をもとに一枚一枚背景が描かれていくのです。

撮影
セルと背景は、カットごとに組み合わされて撮影に出すのですが、その前に演出が実際に背景の上にセルを置いて、どの位置で撮影したら良いかを決める作業をします。これを「撮出し(撮影出し)」といいます。このときカメラワークや特殊な撮影について、撮影監督と打ち合わせをして、作品内での撮影方法の統一をはかります。

撮影ではタイム・シートを見ながら1コマ1コマていねいに撮影します。タイム・シートのひとつのマス目が1コマにあたります。セルの置き換えやカメラワークもこのタイム・シートに指定してあります。セルは、下からA-B-C-Dセルという順に重ねて撮影します。

セルは透明ですが、完全に透明ではなく、重ねるごとにだんだん色が濃くなってしまいます。セル重ねは出来る限り少なくします。セルを重ねると背景にも影響がでますので、理想的には1枚セルが理想です。

1枚セルつまりAセルの動きのみのカットはあまりなく、セリフと他のキャラクターなどが入るためにセル重ねは3枚から4枚になることが多いのです。このために1枚セルのカットでは何も描いていない未使用のセル(これを空セルといいます)を2枚重ねて撮影することでセル重ねによる色味の微妙な変化を若干ですが抑えることができます。

透過光などに使うマスク等は普通Eセルとして作成してあります。アニメーションにおいてはこのタイム・シートが大変重要なのです。作画におけるタイミングの善し悪しも、撮影におけるタイミングの善し悪しもこのタイム・シートにかかってきます。また、撮影し直す場合にもこのタイム・シートがあれば同じように撮影することができます。

タイム・シートを見ればどんな感じにフィルムができあがるかわかります。それだけに、タイム・シートの内容の確認は「撮出し」のときに、再確認して間違いのないようにしておきます。

編集
合作の場合は、あらかじめアニメーションがセリフや音楽に合わせて作られているので、国産アニメーションのように思い切った編集はできません。シネ・テープとフィルムを同時にビュアーにかけて編集するのですが、もしズレがでたときはどうするか……という問題があります。

このような場合に備えて、タイム・シート作成のときに「予備コマ」というのを設けています。カットごとのタイム・シートの始めと終わりに4コマずつくらい余分に動きをつけて撮影しておくのです。これで、前後4コマぶん、計8コマぶん絵をずらすことが可能になり、シネ・テープの音とのズレ、特にセリフの微妙なズレやアクションつなぎを、よりスムーズにすることができます。スポッティングが正確ならこの予備コマで十分対応することができます。

ダビング
さて、編集が終わるとオール・ラッシュを行います。ここでもRANKIN/BASSプロダクションのチェックがあります。直さねばならないところや問題となる箇所が指摘されます。

またスタッフからのリテーク(直し作業=各部署の明らかな間違い、例えば~彩色の色違いや撮影して分かるミス、タイム・シートの中割り間違いなど)は、このときまでに決めておきます。これにRANKIN/BASSプロダクションのチェックで指摘されたものを追加してリテークするカットが決められます。

編集済みのオール・ラッシュ・フィルムは効果に渡されて効果音を付けます。ダビングでは、RANKIN/BASSプロダクションが、自国で最終ミックスをするための素材の作成という作業になります。

セリフと音楽については日本側では位置を変えたりすることは絶対にありません。ダビングでは主に効果音を中心としたミキシングの作業になります。平行して、リテーク作業、ネガ編集も行われます。

ダビング、リテーク作業、ネガ編集が終了すると原版完成となります。それを現像所でネガをポジ・フィルムに焼き付けて初号プリントができあがります。RANKIN/BASSプロダクションに送られた原版は、RANKIN/BASSプロダクション側で最終ミックスがおこなわれます。

まとめ-
トップクラフト&RANKIN/BASS合作作品での制作過程で考え出された「トップクラフト・スタイル」

RANKIN/BASS&トップクラフト合作と国内向けテレビ放映作品との違いは大きくわけて3つあります。

1)2コマをメインにしているのでフルアニメではないが、3コマ基本の国内アニメより動きが円滑になります。

2)口パクは8枚を使っていて、ヴォイス・トラックのセリフと同じタイミングでリップシンク(Lip Sync、Lip Synchronization)しています。セリフが先にあるので合わせることができるのです。

3)フェイシャルアニメーションを特に意識していること。フェイシャルアニメーションとは表情芝居のことで、止めのカットでも目パチを入れる、ちょっとした仕草を加えるなどして、キャラクターがまったく止まった感じがしないように意識しています。

国内向けTVアニメとRANKIN/BASS&トップクラフト合作との相違点を考えてみると「トップクラフト・スタイル」と言えるかと思います。

© 2024「モコンさんの庭」プロジェクト

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