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《モコンさんの庭》ぼくのセルアニメ業界現場 WORKS Memo:Events 12・『敵は海賊〜猫たちの饗宴〜 VOL.1~VOL.6』1989~90年

原作はSF小説で神林長平氏の『敵は海賊』シリーズ第2作『敵は海賊・猫たちの饗宴』をアニメ化しています。原作の長さから全6巻でまとめています。

発注元キティフィルムの担当プロデューサーは田原正利氏で、田原氏は『うる星やつら』テレビシリーズLD全50巻の企画を担当したプロデューサーでもあります。

『敵は海賊〜猫たちの饗宴〜』は日本初のCSオリジナルアニメーション(1989年12月26日から12月31日)として放映され後にビデオで発売されています。

プロデューサーの田原氏よりできる限り画面の情報量を多くして欲しいとの要望がありました。脚本は通常のテレビシリーズよりセリフが多くしかも早口で情報量も多い、画面の情報量を多くするにはある程度キャラクターを動かさなくてはなりません。また背景を観せるシーンは描き込みを意識する、などの要素に工夫をこらす必要があります。ここは絵コンテ・演出のやり甲斐のあるポイントかと思います。

全6話ですがスケジュール的にひとりで全部を担当する時間が取れないので、第1話と第2話はマッドハウス制作で監督はぼく、第3話と第4話はプロダクションIG制作で監督は貞光紳也氏、第5話と第6話は渡邊プロモーション制作で監督はやまざきかずお氏、と3つの班に振り分け平行して制作することになりました。総監督はぼくで、総作画監督は後藤隆幸氏、脚本は遠藤明範氏ひとりで全話通しで書き終えています。第5話と第6話を担当したやまざきかずお氏は『うる星やつら』劇場版で有名です。絵コンテの精密さは他では観られない丁寧さで、作画監督もできる故の芝居もキッチリと考えられ秒数もコマ単位まで考えぬかれています。

原作者の神林氏は当時新潟に住んでいました。打ち合わせは田原氏が運転する車に、ぼく、総作画監督の後藤氏と脚本担当の遠藤氏が同乗、東京から新潟までの長距離ドライブとなりました。当時まだ新しい関越自動車道を使って途中で休憩を取りつつ新潟まで、朝出発し、原作者と打ち合わせ後、すぐ帰路にという道程を田原氏ひとりで運転、いくら運転が好きといってもお疲れ様です。

あいにくの小雨でしたが新潟はやはり東京より寒く、神林氏のご自宅から近い喫茶店にて、すでにできているキャラクター設定や色見本などを見ていただき、脚本の打ち合わせや小説では分からない映像面での打ち合わせなどをしました。後の連絡は電話かメールということで約2時間ほどで終わりました。ぼくは『どうして小説家になったのでしょうか?』と神林氏に尋ねると『一番人に会わないですむから』とのお返事でした。物静かで落ち着いた感じから思わず納得です。

さて帰路につきましたが、道路のあちこちに産直の店が並んでいるので、ぼくが田原氏に『なんか産地の新鮮なお土産買いたいけど』と言うと一同もうなずき、高速に入る前に新鮮なカニを各自買い込みました。ぼくの母がカニが大好きなので、夜中近くにも関わらず早速ゆでてカニ味噌を堪能しておりました。後藤氏、遠藤氏の家族にも好評だったそうです。やはり産地で採れたては美味しいです。

メカニックデザインは友人の渡部隆氏にお願いしました。宇宙空間の宇宙船を表現するには、この頃に3DCGなど使えたらよかったと、今の技術を観てうらやましく思うのです。宇宙船の船体に宇宙の星が映り込むとか鏡面仕上げの船体も表現できるし、回り込みもできるってやはりうらやましい限りです。

音楽をどうするかというところで『ハードロックかヘビメタ』でとぼくの趣味から要望したところ、なんと米持孝秋氏(レコード・プロデューサー、エンジニア、ギタリスト、音楽評論家)を起用してくださいました。打ち合わせ時にぼくの好きなハードロックの曲やヘビメタの曲をカセットテープいれ持参しました。米持氏曰く『マニアックですね』とのこと。

音楽監督は米持氏とリー・ハート氏(ブリティッシュHR/HM元ファストウェイのヴォーカル兼ギター)とに決まり、録音はロンドンでミュージシャンを集めてということになりました。残念なことにぼくは自分の担当作品がダブっていたのでロンドンに行けませんでしたが、神林氏夫妻は同行いたしました。ミックダウンのときに東京のスタジオで米持氏の超絶早引きギターの収録に立ち会うことができました。

音響監督はアーツプロの本田保則氏です。
声優を決めるときにマーシャ役だけはオーディションをしてそのテープを皆で聴き、やはりキャラクターを描いている後藤氏の意見が皆と一致、神代知衣氏と決まりました。

アフレコはアバコスタジオで1日で第1話と第2話のアフレコを収録するということで始まりました。アプロ役は三ツ矢雄二氏、ラテル役は田中秀幸氏、この海賊科刑事のコンビはとにかくセリフ多くしかもマシンガントーク。アプロ役の三ツ矢氏が一番セリフも多いし早口なので第2話目の後半近くにさすがに疲れのみえるなか『アプロ…壊れました』とろれつの回らない状態に。アフレコの収録は1日で2本は無理でした。

オープニングは毎回同じでは普通のシリーズ物と変わらないと思い、基本になるオープニングシーンに次の話の見どころシーンをカットインするというコンセプトにしています。毎回同じ基本のパートは原作の場面から一部アレンジしています。そしてラストの第6話では1話のハイライトシーンからの見どころシーンを選んで入れていますので、また最初から見てくださいという感じになればと思います。エンディングは作画監督の後藤氏にアメコミ風イラスト風に描いてもらい、カメラワークやマスキングでタイトルバックになるようにしてもらいました。

ダビング時に音楽が全部で21曲しかないので、音響監督の本田よりどのシーンでどの曲を使うのかを選んで欲しいとの要請で、選曲はぼくがお手伝いしています。全6作品で21曲は少ないので同じような曲が続かないように、ボーカル曲でも歌抜きで使う、長い曲の一部を使うなど配慮しています。

※OVA版『敵は海賊』のLDイラストはすべて後藤隆幸氏。
VHS版では全部で6巻でしたが、LDでは前後編でまとめられています。

LD

敵は海賊〜猫たちの饗宴〜「猫じゃらし作戦」
前編VOL.1
後編VOL.2

LD

敵は海賊〜猫たちの饗宴〜「猫かぶり前哨戦」
前編VOL.3
後編VOL.4
絵コンテ・監督:貞光紳也
作画監督:戸部敦夫

この話数の振り分けは監督の性格を考えて振り分けました…というよりは偶然ハマっていたという方が正しいかも。それぞれ特徴がでていて面白いかと思います。

LD

敵は海賊〜猫たちの饗宴〜「猫いらず大騒動」
前編VOL.5
後編VOL.6
絵コンテ・監督:やまざきかずお
作画監督:小田不二夫

やまざき監督は当時のドラクエを一気にクリアするために仕事のない時に家に食料を買い込み籠もったそうです。レベルかなり上がり、装備も最高なのに、どうしても最後の大ボスに何度も挑戦しても勝てない。で、あるときふと気付いたそうです。「そうび」というコマンドに…「あ!装備をしていない!?」…その後あっさりとクリア!したそうです。

※本稿はぼく個人のセルアニメ業界での実体験をもとにした記録です。当時の資料としてご覧いただけたら幸いです。個人名は当時の状況を踏まえ実名で記しております。関わってくださった皆さまに心より感謝いたします。

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