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Katsurao AIR アーティストインタビュー vol.10 内田聖良さん(中編)

アーティストが葛尾村に滞在してリサーチや制作を行うアーティスト・イン・レジデンス・プログラム「Katsurao AIR(カツラオエアー)」。2025年6~7月の2か月間、3名のアーティストが葛尾村で暮らし、それぞれの視点から制作に取り組んでいます。7月24日(木)から27日(日)の4日間は、葛尾村内にて、制作過程を公開するオープンスタジオ形式での活動報告会を実施いたします。

前回に引き続き、滞在アーティスト 内田聖良(うちだ・せいら)さんのインタビューをお届けします。(聞き手:Katsurao Collective 阪本健吾)

葛尾大尽屋敷跡をリサーチする内田さん

——内田さんは「ポスト・インターネット時代のサーキット・ベンダー」を自称されています。私にとっては耳馴染みのない言葉だったのですが、前編で仰っていた、自分で電子機器の回路をつくってみるということが関係しているのでしょうか。

サーキット・ベンディングについて、簡単に説明してみます。電池式のおもちゃがあるとしますよね。

——例えば、ピカチュウが喋るやつとか?

はい。それを分解していくと、基盤が出てきますよね。

——あの、緑色の平べったいやつに、細かい配線が張り巡らされているような。

そうです。電池式のおもちゃじゃないと電圧が強すぎるのでやめたほうがいいのですが、その配線のある部分とある部分を、クリップで繋いでしまうわけです。意図的にショートさせる。

——繋がっていなかったところを繋いでみるのですね。

そうすると、ピカチュウがしゃべり続けたり、変な音を出したり、違うことを二つ同時にしゃべったりするポイントがあります。それを見つけて、こんなふうに音を出したいというポイントをはんだ付けして、そこにスイッチを付ける。魔改造といわれるようなことに近いですね。

基本的には、この手法を使っておもちゃを楽器にしたり、楽器から出る音を変えたりすることを、サーキットベンディングと呼びます。回路図が読めなくても、偶然や実験を通して、音楽のデバイスを新たにつくってしまう。そういう改造を行う人たちが、いわゆるサーキット・ベンダーです。

——内田さんの活動と通じるものがあるんですか。

スペシャリストになるのではなく素人として、あるシステムに関わり、試行錯誤して使ってみる。そういう態度が面白いと思っています。

少し似た言葉にハッカーというのがありますが、ハッカーはプログラミングのプロフェッショナルで、システム側とは違う思想を持ってそこに侵入し、それを破壊する存在です。それとはちょっと違って、既存のシステムを利用しつつ、設計者の意図と違うものに作り変えてしまうというのが、サーキットベンディング的なんだと思います。

——内田さんの取り組みのひとつである「余白書店」も、確かにそんな感じがします。

「余白書店」は、書き込みやシミなどの使用感がある古本を、大量生産の新品の本に対して価値ある一点物として捉え直し、Amazon のマーケットプレイス上で再流通させる取り組みです。ハッカー的な思想であれば、Amazon のシステムに侵入して破壊してしまおうとなるかもしれませんが、私はAmazonが用意してくれたシステムに乗っかりつつ、「えっ、なんでこれがこんな高額で?」みたいな違和感を生み出して、その違和感から常識を考え直すきっかけを作る、というような発想で実施しました。

——少し理解できたような気がします。ところで、これまでそういったテクノロジーを用いた取り組みを多数進めていらっしゃる内田さんですが、ここ数年は秋田や青森など、東北地方各地での人々の暮らしにも焦点を当てていらっしゃいますよね。

そういった関心が芽生えたきっかけは、秋田公立美術大学の助手として働くことになり、はじめて東北地方で暮らすことになったからです。お祭りなどの民俗文化が、ほんとうにここで生きている人たちの生活の何かを支えているんだなというリアリティに圧倒されました。

私自身も、冬の時期の秋田で、積雪と寒さでどこにも行けない感じがつらいと感じていました。そんなときに、友人との会話のなかで、架空のキャラクターを登場させて気を紛らわしていた、みたいなことがあって。フィクションが自分を救ってくれるというか。

——「生理ちゃん」みたいなことですか。

そうかもしれないです。死にたい気持ちのことを「しにもくん」って呼んだり。「今、しにもくん来ちゃってるじゃん?」みたいな感じで(笑)

——「しにもくん」、かわいいです(笑)そういった、ある種のフィクションが果たす機能への着目が、民話などの地域の文化への関心に繋がっていくのでしょうか。

そうですね。阪本さんは、昔話と伝説と神話と民話、それぞれどう違うかわかりますか?

——え!えっと……(後編へつづく)

アーティストインレジデンスプログラム「Katsurao AIR」

本インタビューの完全版を、各種リスニングサービス および note音声投稿にて配信中です。


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