Katsurao AIR アーティストインタビュー vol.11 くもそらとさん
アーティストが葛尾村に滞在してリサーチや制作を行うアーティスト・イン・レジデンス・プログラム「Katsurao AIR(カツラオエアー)」。2025年6~7月の2か月間、3名のアーティストが葛尾村で暮らし、それぞれの視点から制作に取り組んでいます。7月24日(木)から27日(日)の4日間は、葛尾村内にて、制作過程を公開するオープンスタジオ形式での活動報告会を実施いたします。
本稿では、滞在中のプロダクトデザイナー くもそらとさんのインタビューをお届けします。(聞き手:Katsurao Collective 阪本健吾)
KUMO Sorato
くもそらと
2021年 多摩美術大学 生産デザイン学科 プロダクトデザイン専攻 卒業
デザイナー。1998年 兵庫県生まれ。
自分の中から湧き出る好奇心や探究心を追求していく私的なデザインと、新たな土地や人との関わり、そこで出会う未知の素材や技術の中から生まれる対人的なデザイン、という2つの方法を行き来しながら、様々な分野で制作活動をしている。
主な活動歴にDesignart2019(Kokuyo Think Of Things/東京、2019年)ICADE “Ask Our Diverse World”(Tsinghua University/中国、2021年)など。受賞歴にh concept DESIGN COMPETITION 2022審査員特別賞、ものづくりAWARD2023-2024 特別賞などがある。

——兵庫県宝塚市のご出身なんですよね。私(聞き手:阪本)は兵庫県西宮市の生まれ育ちなので、親近感があります。
近いですね。私は宝塚の中でも山手のほうの出身で、虫捕りが大好きでした。虫以外にも、恐竜とか、爬虫類や両生類の動物とかに夢中でしたね。
そういえば、葛尾村にはモリアオガエルがいますよね。
——そうですね。同じ双葉郡の川内村は、モリアオガエルの里であることを打ち出しています。
レジデンス(アーティストたちが滞在している葛尾村内の一軒家)が川の近くなのですが、特に雨が降った日には、モリアオガエルが家の壁やドアガラスに張り付いています。図鑑でしか見たことがなかったので、すごく感動して、最初に見つけたときは1時間くらい観察してしまいました(笑)
——少年の心は健在ですね(笑)
変わっていないかもしれません(笑)
今回は葛尾村の子どもたちと粘土を使ったワークショップを実施するのですが、その際に見せようと思っているこのサンプルでは、ミヤマクワガタとモリアオガエルの形を組み合わせています。ミヤマクワガタも、葛尾村内のキャンプ場「もりもりランド・かつらお」のあたりにたくさんいる昆虫のひとつです。

——今回は、葛尾村の土に焦点を当てて活動されていますね。
はい。葛尾村では、粘土質の土を比較的簡単に採取することができます。また、葛尾村には縄文時代の遺跡があり、当時からこの地で人々が暮らしていたことを滞在中のリサーチを通して知りました。そこで、子どもたちと葛尾村の土を使って粘土遊びをして、縄文土器のような方法で焼成してみようと考えています。
思えば私自身も、小さい頃は粘土遊びが特に好きでした。その頃から絵画などよりも立体造形を好んでいたということは、プロダクトデザイナーとして活動している現在につながっているのかもしれません。

——子どもたちとのワークショップ、楽しみですね。くもさんはプロダクトデザイナーとしてご活躍されていますが、アーティストインレジデンスに参加するようになったのはなぜなのでしょうか。
大学卒業後、1年間ほどバンライフ*で日本中を回って過ごしていた経験が大きいと思います。当時はコロナ禍だったため、なるべく行く先々の地域の方にご迷惑をおかけしないように、人との関わりを避けて、その土地土地の風景を楽しんでいました。でもそれだけでは、より深く地域の文化や暮らしを知るということは難しいんですよね。
北海道から九州までいろいろなところに行ったけれど、なんだか何も知らないままだなと思ったんです。特定の土地の人や暮らしについてもっと深く知りたいと考えて、各地のアーティストインレジデンスに参加するようになりました。
*バンライフ:車で移動しながら、特定の生活拠点を持たずに暮らすライフスタイル
——葛尾村に限らず、アーティストインレジデンスのプログラムでは、現代アートのつくり手が主な対象となっていることも多いと思います。参加してみての気づきはありますか。
デザイナーとして活動しているだけでは現代アートの作家と関わることはないので、間近で制作過程が見られたり、いろいろな話ができるのがおもしろいです。
それから、今回の葛尾村での滞在のように、地域の子どもたちの創造力と関わるようなプログラムをする場合には、アーティストよりデザイナーのほうが適性があるかもしれないとも考えています。
「子どもたちは創造性にあふれているから、自由にさせてあげましょう」と一般的によく言われますが、必ずしもその限りではありません。むしろ、段階を踏んで、ひとつずつ新しい視点を入れながら創造力を育んでいくという考え方こそが、デザイン的な思考のベースになっていると思っています。
例えば、冒頭で言ったような、クワガタとカエルの2つの形を組み合わせるというシンプルなことからはじめて、ひとつひとつ要素を加えていくことで、複雑なものをつくり出せるようになっていく。そんなイメージです。
子どもたちが手を動かしているところを見ながら、「次はこの視点を与えるとどうだろう」「こういう褒め方をしたら、次はこう考えてくれるかもしれない」とコミュニケーションをとってみる。そういった経験は私自身の肥やしにもなりますし、子どもたちにとっても大事な機会になれば、とても嬉しいですね。
——きっといい機会になると思います。引き続き、葛尾村での活動を楽しみにしています!

アーティストインレジデンスプログラム「Katsurao AIR」
本インタビューの完全版を、各種リスニングサービス および note音声投稿にて配信中です。
