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優しいまま壊れていく人を、誰も心配しない

優しい人は、心配されにくい。

声を荒げない。
感情をぶつけない。
問題を大きくしない。

だから周りは思う。

「大丈夫そう」
「落ち着いてる」
「ちゃんとやれてる」

でもそれは、
壊れていない証拠じゃない。

ただ、壊れ方が静かなだけだ。

私が疲れていても、
限界でも、
誰も気づかなかった。

なぜなら私は、
困っている顔をしなかったから。

正確に言えば、
できなくなっていた。

「しんどい」
「つらい」
「もう無理かもしれない」

そう言おうとすると、
頭の中で先に相手の反応を想像してしまう。

否定されるかもしれない。
話がずれるかもしれない。
結局、なかったことにされるかもしれない。

そう思うと、
口を開く気力が消える。

だから私は、
平気なふりを覚えた。

「大丈夫」
「別にいい」
「気にしてない」

そう言えば、
場は荒れない。
誰も困らない。

でもその代わりに、
私の中だけが削れていった。

それでも周りは言う。

「優しいよね」
「我慢強いよね」

その言葉を聞くたびに、
私は少しずつ分からなくなった。

これは長所なのか。
それとも、
誰にも止められなかった結果なのか。

優しいまま壊れていく人は、
叫ばない。

だから、
誰も心配しない。

壊れたあとで初めて、
「あんなに我慢してたなんて」
と言われる。

でもその頃には、
もう戻れない場所まで来ている。

私は、
心配されないことに慣れてしまった。

それが一番、
怖いことだった。


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