『本郷隼人の きょうのサブスク』 Vol.7 「ドルビーアトモス」で聴くバルビローリ&ハレ管のシベリウス管弦楽曲集
音楽のサブスク(サブスクリプション、定額制配信)が本格化して10年ほど。賛否両論あるが、筆者は「夢のようなサービス」だとして、大いに利用している。
というわけでこの連載では、サブスクで聴けるアルバムやプレイリストなどを分野を問わず、駄文を交えながら紹介していこうと思う。
※今回はApple伝道師炸裂です(笑)
本格的な冬を迎えると聴きたくなる作曲家が、何人かいる。
ホリデーシーズンにはお馴染み『くるみ割り人形』のチャイコフスキーをはじめラフマニノフやグリーグといったところがそうで、だいたいがロシアや北欧系の作曲家なので我ながら単純なのだが、この師走は中でも、シベリウスにハマっている。
言わずと知れた後期ロマン派および国民楽派に分類される、フィンランドを代表する作曲家だ。
シベリウスの管弦楽作品には、勇壮で力強く、煌びやかなものが多い。
北欧の神話・叙事詩をモチーフとしていたり当時の帝政ロシアからの独立運動といった歴史的なものがその背景にはあるわけだが、つづめて言えば厳しい寒さの中においても奮い立つような感じが、個人的には好きなんだろうなと思う。映画『ダイ・ハード2』の、1作目に続けてのまたもクリスマスイブという日に、今度は大空港が舞台となった大活劇のクライマックスで代表作『フィンランディア』が効果的に使われていたのもまた、この季節にアガるポイントだ。イピカイエー(笑)。
とまれそんなわけでシベリウスの壮麗なサウンドは、いわゆるオーディオ界隈でも人気が高い。
そっち方面でも多大な影響力を持ち技術発展にも寄与した〝帝王〟カラヤンも得意とし評判も高かったりするのだけれど、今回紹介するのは筆者の長年の愛聴盤。
サブスクなのに「盤」なのかはともかくとして、サー・ジョン・バルビローリとハレ管弦楽団による、1966年録音の演奏だ。筆者はこれをEMIレーベル時代に廉価版のLPで購入し、後年もちろんCDも購入した。どちらも今だに手放してはいない。
さて今回このアルバムを取り上げたのは、名盤とされていること以外に、もう一つの理由がある。
というのもApple Musicでの配信を見つけた時、「Dolby ATMOS」の表記があることに驚いたからだ。

「こんなもんまで!?」
ごく端折るのだが、Dolby ATMOS(以下、「アトモス」)というのは、サウンドを左右のステレオだけではなく、立体的に、より臨場感たっぷりに聞かせる技術・規格の名称(®ドルビー社)。
最近は映画などでもおなじみだが、従来の立体オーディオと大きく異なるのは、大袈裟なアンプやスピーカー・システム(と、当然ながらある程度の広さの部屋も)を構築しなくとも、最低限の構成としては、アトモスに対応したスマホとイヤホンそしてサービスがあれば楽しめるという点。
で、これをもっとあからさまに言えば、
「iPhone+AirPods(か、Apple傘下のBeatsイヤホン/ヘッドホン)+Apple Music」
の構成が単純明快ということになる。
実は同じサブスクとは言っても、アトモスを含む空間オーディオで配信を行っているのは、メジャーどころではApple MusicとAmazon Music Unlimitedだけ。このnoteでもよく見かけるSpotifyや、YouTube Musicでは、そもそも立体オーディオそのものの提供が無い。
なので蛇足ながらせっかくiPhoneもAirPodsも使っている人がSpotifyしか利用していないのはちょっと勿体ないなー……と常々思っているというのは筆者「個人の意見です」だが、ハナシを元に戻そう。
ドルビーアトモスに限らずことにオーディオ界隈では、
・そのサウンドのために録音され
・そのサウンドのための装置で再生される
が、理想とされる。
だからかどうかは知らんが同じアトモス配信もしているAmazon Music Unlimitedでは最近の「それ用に録音された楽曲」が主で、今回のこの「バルビローリ&ハレ管のシベリウス」は配信されていない。
我田引水牽強付会だが、だからこそAppleは偉いなと思う。
この辺についてはまた別の機会にゆっくり綴るなり語るなりしたいのだが、ともかくAppleは、音楽そして芸術を企業の余技としていない。
現在からすれば技術的には児戯に等しい60年年近く前の録音を、しかし大切な「演奏遺産」として、立体オーディオとして蘇らせる。
そこには少なからぬ投資と何よりエンジニアの苦労があったはずだが、それを捺してでも提供したところに、筆者などは涙ちょちょ切れるわけだ。
そして何より肝心なのは、この「配信」が見事に成功していること。
此度この年末、この「配信」を通じてあらためてシベリウスを掘り下げることになったのだが、その民族性とか民俗性とか、そして19世紀末から20世紀初頭の作曲家だったことを反芻し、大いに感じ入りまた考察する次第だ。
この「導き」はおそらく昨今の世界情勢とかもあるのだろうけれども、Dolby ATMOSとApple Musicという21世紀の技術を以て20世紀の名演が引き金となったところがまた、感慨深い。
「熱き心に 時よ戻れ」©阿久悠
Apple Musicではこの他にも、ジャンルや洋の東西を問わずドルビーアトモスで配信されている楽曲が多数ある。
ぜひ、クリスマスプレゼントとしてのイヤホンの買い替え含め、「3ヶ月無料体験」ででも、体感していただきたい。
