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第10話 また、頭を下げに行く 逃げたかった私が、管理職になるまで

ある日、上司から声を掛けられました。
「この案件、やってみないか。」
詳しいことはここでは書けません。

でも、会社としても期待されている案件でした。
正直、「なんで自分なんだろう。」
そう思いました。

でも同時に、「任せてもらえるんだ。」
そんなうれしさもありました。


営業のメンバーと一緒に、お客様のところへ何度も足を運びました。

話を聞いて、社内へ持ち帰る。
社内で相談して、またお客様へ説明する。
その繰り返しです。

思っていた以上に、大変な仕事でした。


お客様からの要望は、どんどん増えていきます。
「これもできませんか。」
「あれも追加できませんか。」
もちろん、お客様にも理由があります。
より良いものを作りたい。
その思いは、私たちと同じでした。


でも、社内へ戻ると現実があります。
「構成的に難しい。」
「そのスケジュールでは厳しい。」
「今の体制では対応できない。」
そんな言葉が並びます。


正直に言います。
私は、社内で何度も弱音を吐いていました。
「いや、それは無理ですよ。」
「これ以上はさすがに厳しいですよ。」
イライラする日もありました。
「なんでこんなに要望が増えるんだ。」
そう思ったことも、一度や二度ではありません。


でも、一晩寝ると考えるんです。
「本当に無理なんだろうか。」
「何か方法はないかな。」
全部はできない。
でも、一部ならできるかもしれない。
今は無理でも、段階的にならできるかもしれない。

そんなことを考えながら、また営業のメンバーとお客様のところへ向かいました。


私は、「無理です。」と言いたくありませんでした。
もちろん、本当に無理なこともあります。
そんな時は、お客様に正直に伝えました。

「申し訳ありません。今回は対応できません。」
頭を下げることも、何度もありました。

でも、そのまま終わらせたくはなかったんです。
「この方法ならできます。」
「この案なら実現できます。」
できない理由ではなく、できる方法を探す。
それが、私なりの仕事の進め方でした。


その案件は、最後まで本当に大変でした。
次から次へと課題が出てきます。
子供の行事で休みの日にも電話が鳴ります。
「少し相談したいんだけど。」
そんな連絡が入ることもありました。
正直、疲れました。
「もう勘弁してほしい。」
そう思った日もあります。


それでも、最後まで走り切りました。
結果として、その案件は試作開発で終わりました。
本番開発には進みませんでした。
成功だったのか。
失敗だったのか。
今でも分かりません。

でも、一つだけ確かなことがあります。
私は、この案件で「調整すること」も仕事なんだ
と改めて思いました。


昔の私は、
技術があれば仕事ができると思っていました。
でも違いました。
相手の話を聞いて、
社内の事情も理解して、
その間で答えを探す。
その繰り返しが、仕事でした。

しかも、その答えは一つじゃありません。
だからこそ、泥臭く調整するしかありませんでした。


あの日の自分へ
完璧じゃなくていい。
弱音を吐いてもいい。
イライラしてもいい。
でも、そのまま終わらせず、
「じゃあ、どうすればできるかな。」
そう考え続けたことは、きっと無駄じゃなかった。



今日の問い

あなたは最近、
「できない理由」を考えることが多いですか。

それとも、
「できる方法」を探していますか。

どちらが正しいという話ではありません。

でも、その問いを自分に投げかけるだけで、見える景色は少し変わるのかもしれません。


編集後記

昔は、仕事ができる人は謝らない人だと思っていました。
でも、20年以上働いてきて思うことがあります。
責任を持つようになるほど、謝ることが増えました。

お客様に謝る。
社内に謝る。
営業に謝る。
「申し訳ありません。」
「すみません。」
そう言う場面は、昔よりずっと増えました。

もし子どもがその姿を見たら、
「お父さん、また謝ってる。」
そう思うかもしれません。
格好いい父親には見えないでしょう。

でも、それが仕事なんです。
誰かを守るために謝る。
前へ進めるために謝る。

そして、謝るだけで終わらせず、次にどうすればいいかを考える。

私は今でも、決して格好いい管理職ではありません。

弱音も吐きます。
イライラもします。

「これは無理ですよ。」

と社内で愚痴をこぼすことだってあります。

それでも翌日には、
またお客様のところへ行って、もう一度話をします。
そんな泥臭い積み重ねが、今の私をつくってくれたんだと思っています。

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