【シロクマ文芸部】「夜店から、に必要不可欠」お題:夜店から
今回もシロクマ文芸部に参加します。
お題は「夜店から」で始まる作品とのこと。
今回もショートショートを書きました。
「夜店から、に必要不可欠」
夜店からあげ、ダメ。
もう、反則なの。
夏の夜の屋外で頬張るライブ感。
衣とタンパク質の波状攻撃がもたらす多幸感。
塩と油が連れてくる罪悪感。
ダイエット、健康、衛生面、割高、マナーが悪いっていう人もいるわ。
どうでもいいじゃない。
そんな些細なことで生きる喜びを捨てるなんて、バカじゃないの。
茹だるような真夏の暑さの中、道端に腰掛ける。
片手に出来立ての湯気の立つからあげ。
一口サイズではない、大きめのサイズがマスト。
もう片方に結露してビッショビショのプラスチックカップに入った生ビール。
缶ビールは論外、グラスやジョッキに入ったものもダメ。
異論、そんなの認めない。
絶対に。
このシチュエーションでしか生み出せない。
でも、この状況になれば確実に再現できる。
完璧な様式美。
全ての、準備が、整った。
湯気の立ち上るからあげにかぶりつく。
この瞬間に別のことを考えるよう人間は、ロクでもないヤツに決まっている。
弾け出る肉汁と塩と油が混ざった黄金の液体。
テッカテカになる唇、口内、喉、食道。
それが胃に届く前にビールを流し飲む。
苦味が全てをリセットする。
再度、からあげを睨みつけてかぶりつく。
リセットされたように感じていたからあげの余韻。
新たに投入されたからあげ成分と混ざり合って、革命的な化学反応が始まる。
さらにビールを煽る。
もう頭は空っぽになっている。
もう、後はからあげとビールを交互に口に運ぶ。
整った。
もし、婚約者がいたとしても、理解しなかったら秒で別れる。
法規制ができても、やめるのは無理。
ムショ暮らしを選ぶ。
断言できる。
そんなことを昨日から何度も想像した。
お局の嫌味が全く気にならなかった。
仕事を定時であがった。
急いで近所のお祭りに向かう。
パンプスをアスファルトに叩きつけながら。
完全に夜店からとビールの口。
夜店に着いた。
使い込まれて真っ黒になった猛烈な油の匂い。
「おじちゃん、からあげとビール頂戴」
「姉ちゃん、ごめんよ。機械の調子が悪くてビールがないんだ。からあげだけでいいかな?」
その後の記憶がない。
気がつくと、病院のベッドの上だった。
前回のシロクマ文芸部のお題「水たまり」の時に書いたショートショートです。
おっさん市民ランナーとして、そこそこ真面目に走ってます。
そんなnote記事も書いてますので、読んで頂けたら嬉しいです。
