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熱帯夜の大人【シロクマ文芸部】お題:熱帯夜

こちらの企画に参加させて頂いてます🔽

熱帯夜の大人

熱帯夜、眠れない。
こっそりと外に出ることにした。

時計を見ると、午前2時13分だった。

こんな時間に1人で外に出るなんて初めてだった。

夏のせいだ。
夏休みで早起きしなくていいし。
暑さが僕をおかしくしたんだ。

クーラーの効いた部屋でパジャマから普段着に着替えた。
音を立てないようにゆっくりと階段を降りる途中、軋む音がする度にビクビクした。

パパとママにこの姿を見られたら言い訳できない。
バレたら絶対に怒られる。

下駄箱からそっと靴を取り出し、足を入れた。

玄関のカチッと鳴らないようにカギを開けた。
ゆっくりとドアを押し開けた。
いつもより何倍もドアが重かった。

ムワッとした熱気。
身体中が包まれた。

息を吸い込む。
ぬるい空気が肺の中を満たした。

ここから先は誰も守ってくれない。

一歩を踏み出す。
靴の音がこんなに響くのか。
とにかくそっと歩き出した。

いつもの見慣れた近所の景色。
違う。

駐車場の車は不機嫌な様子で蒸し暑さに耐えていた。
ビルからは、僕を笑うかのようにカラカラと乾いた音が響いていた。

耳に入る音が、帰れと言っていた。

夜中に外に出たことは何度もある。
ただ、隣に大人がいないのは初めてだった。

汗がダラダラと流れた。
暑いからか、怖いからか、わからない。
ただ、それを拭く余裕なんてなかった。

近所の公園に着いた。
いつも友達と遊んでいる公園。

最近は暑いので、ママが来ちゃダメだと言うので行っていない。

公園の中を彷徨ってみた。

ベンチで寝転ぶサラリーマン。
体を寄せ合う普通そうな男の人と女の人。
地面に座ってタバコを吸うお兄さん。

昼間は真面目そうな人が酔っ払ってベンチなんかで寝ている。
人が見てるところでいやらしいことをしている。
なんのためらいもなく、タバコを地面に捨てて唾を吐いている。

みんな大人なのに。
昼間、街で見かけるような人なのに。

耐えられなかった。
公園から逃げるように帰った。

やっと部屋に戻れた。

汗で体に張り付いたTシャツにクーラーの風が当たり、心地よかった。
時計を見た。

午前2時21分。

#シロクマ文芸部
#熱帯夜


別企画で恐縮ですが、毎週ショートショートnoteという企画にも参加してます。
お題「七夕の歩幅」の際、たらはセレクション改め、天の川大賞に「縮んだ歩幅」を選んで頂きました。
とても嬉しかったので、ここでも紹介しちゃいます。

前回のお題「波の音」の時に書いた「波の音とざわつき」です。
良かったら読んでみてください。

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