医師になるということ──患者として、そして一人の医師の背中を見て

私は、定期的に持病のために病院を受診しています。
医療の専門家ではありませんが、長く患者として医療に触れてきた立場から、
医師という仕事について、思うところがあります。

若い頃、私はある外科医の先生とご縁がありました。
その先生は日中は手術や診療にあたり、
夜になるとご自宅に戻ることもなく、研究室でご自身の研究に没頭していました。

私がまだ20歳にも満たなかった頃、
その先生は、医学研究における論文の作り方そのものを丁寧に教えてくれました。

原稿を書き、英語話者に校正を依頼し、出版社に提出する──
そうした実際の研究者としての流れを、実体験として共有してくださったのです。

自分の知識や経験を惜しみなく分け与え、
若い私にも「医療に関わる知のつくり方」を見せてくれたその姿は、
今思えば、“人を育てる医師”としての誠実さそのものだったのだと思います。


今の世の中では、医師という職業が“安定”や“経済的安心”の象徴として語られることが増えました。
受験のテクニックで医学部に入り、国家試験をクリアすれば「一生食いっぱぐれない」とまで言われることもあります。

最近では、初期研修を終えたばかりの若手医師がすぐに美容外科など自由診療に進む「直美(ちょくび)」と呼ばれるキャリアも話題になっています。
もちろん、その選択自体が一概に悪いとは言い切れません。

けれども──
医師は命を扱う職業であり、単なる“資格”や“安定の手段”ではないはずです。


医療は日々進化していきます。
だからこそ、医師という職業には学び続ける姿勢と、人を思うまなざしが求められます。

私が若い頃に出会った外科医の先生は、
まさにそうした誠実さと探究心、そして次世代への想いを持ち続けていた方でした。

私にとって、あの先生は“ロールモデル”そのものです。
その背中を思い出すたびに、
「医療に携わるとはどういうことか」を、今でも静かに問いかけられている気がします。

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