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境界を行き来するアートたち|階段の中で見えてきたこと。

階段は、とても日常的なものです。
上る。下りる。通り過ぎる。
普段は意識することもない動作。

でも、それが作品の中に置かれることで、
不思議と少し違って見えてくることがあります。

今回は、そんな“階段”を通して強く印象に残った、3つの作品について。


■《ものがたりの家》|内海昭子

この作品で印象的だったのは、
階段を“使っている人”を見る時間でした。

自分が階段を上り下りしている時には気づかないのに、
誰かがその中を移動している姿を見ると、
不思議と世界が少し客観的になる。

温度が少しだけ下がるような感覚。上る人。下りる人。立ち止まる人。
そんな何気ない動きが、急に“人の営み”として見えてくる。

作品によって、
日常の動作が少しだけ異化されていたのかもしれません。

《ものがたりの家》|内海昭子 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2015

■《イーストハウス》|南川祐輝

愛知県西尾市・三河湾に浮かぶ佐久島には、
島の各所にさまざまな作品があります。

その中でも印象に残ったのが、《イーストハウス》。

海辺に置かれた白い構造物には階段があり、
実際に上ったり、中へ入ったりすることができます。

ひとつひとつの作品を見るだけでも楽しいのですが、
歩いているうちに、

「島全体を体験している」という感覚が少しずつ身体に染み込んでくる。
その感覚が、とても面白かった。

作品は単独で存在しているのではなく、
島の風景や移動の時間ごと、ひとつの体験になっていました。

《イーストハウス》|南川祐輝 佐久島 東地区

■《隠された庭への道》|ダニ・カラヴァン

2014年の札幌国際芸術祭を訪れた際、森の中で静かに出会った作品。

半円状の階段を下り、作品の内部へ足を踏み入れる。

最初はただ「空間に入る」感覚だったのですが、
振り返って外を見た瞬間、急にハッとしました。

森の緑。
外に見える白い構造物。
さっきまでいた“こちら側”。

まるで、一度別の世界へ入っていたような感覚。
作品そのものというより、

境界を越えた身体感覚」が強く記憶に残っています。

《隠された庭への道》|ダニ・カラヴァン 札幌芸術の森 野外美術館

■階段に惹かれる理由

今回あらためて感じたのは、
階段は“移動”のためだけのものではない
ということでした。

階段を上る。下りる。振り返る。
その動作を通して、

  • 境界を越える・他者を見る・自分を少し客観視する          そんな感覚が生まれることがある。


■どう楽しむか

アート作品を見る時、
「何が表現されているか」を考えるだけではなく、

「自分の感覚がどう変わったか」に意識を向けてみる。

すると、作品との距離が少し変わることがあります。


■最初の一歩

階段を上っている人を、少し眺めてみる。

その姿を見ている自分の感覚にも、静かに目を向けてみる。

そんなところから、
作品との対話が始まるのかもしれません。


余韻

上る。
下りる。
振り返る。

とても小さな動作。

でも、作品の中に置かれることで、
そこに人の営みや、世界との距離感が見えてくることがあります。

階段という構造の中に、
私は時々、静かな“境界”を感じています。


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