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水たまりから、世界が一枚めくれた
水たまりの表面を、スポイトでそっと吸った。
私はこれから、理科室で、上級生しか触れない顕微鏡を使って、お勉強をする。
早く帰って、母や妹たちに自慢したい。顕微鏡で観察。なんて、カッコいいのだ。
校庭に持ってきた、手順が書かれたプリントをもう一度よく読む。間違わないようにっと。『本格的』な理科の授業に得意な気持ちが膨らんでいく。
渡された顕微鏡が班ごとに1つ。スライドガラスたるものに、水を一滴、垂らす。
覗く人が、工事現場のリフトみたいにレンズを上げ下げするのを、ジリジリと見守りながらも、横から「まだ大丈夫ー。下げて下げてー」と、声を掛けて役割を全うする。
早くみたい。気になって仕方がない。
うん? お、?
わはーーー!!やば、これ!
もう待てない。順番が回ってくるまで、頑張って足を踏ん張っているけど、亀が甲羅から精一杯首を伸ばすみたいにして、私も隙間から覗き込む。
ようやく、私の番がきた。
うそみたい。
茶色がかった透明のシャボン玉みたいなものが、息をするみたいに、微かに移動している。水草みたいな、光を通したグリーンが、グネグネと動いている。
うそみたい。
これまで、全く、その存在に気づいてなかった。
水道からでる水、プールの水、水たまり。
水は、水でしかなかった。
私の世界が、一段だけ深まった。見えてなかっただけのもの、まだまだ沢山ありそうだ。
そういえば、昨日。砂遊びのあと、水たまりで手を洗って、そのまま駄菓子を食べた。あれ、大丈夫だったのかな。急に、気になった。
本当は存在しているのに、自分が見えていなかっただけのもの。
そう考えると、ETだって、どこかにいるのかもしれない。
理解した、とは、少し違う。
見える世界が、一枚、めくれた。
