イラン戦争の相場を考える【レポート3】
このnoteでは、イラン戦争が相場に与える影響について考察する。
・イラン戦争とは?
2026年2月28日から始まったイラン対イスラエル、アメリカの戦争である。特に経済関係では、ホルムズ海峡封鎖によるエネルギー価格上昇が焦点となる。
・ホルムズ海峡の状況はすでに深刻だ
戦争が開始してから、すでにホルムズ海峡を通過する船舶の数は激減している。世界の石油の流通量の20%がホルムズ海峡を通過していることを考えると、すでに状況は深刻である。またナフサやヘリウムなど、戦地付近で生産されていた資源の流通も停滞しているようだ。
・株、債券、ゴールドのトリプル安 これはなぜ?
さて、イラン戦争開始以後、相場は株、債券、ゴールドのトリプル安という反応を見せた。これは一般的な動き方ではないはずだ。株と債券、株とゴールドの価格はそれぞれ逆相関性が強いと言われるからだ。
この中で最も理解しやすいのは債券価格の動きだろう。原油や他の資源の価格が上がれば、物価上昇は避けられないだろう。するとインフレを抑制するために高金利が自然な状態と言える。金利上昇は債券価格低下と同じだから、債券の価格が下がったという話だ。
株が戦争で下がるのは、まあ普通なのだが、問題はゴールドだ。ゴールドは戦争など有事の際に上がるのではなかったか?最近の相場の本質は「ドル買い」であると見ている。そしてこれは、ドルの再評価が進んだと言うよりは、「10年先の相場より来年の相場を優先したい」というような、投資時間スケールのシフトが原因であると考察している。やや円安で反応しているのも、ドル買いと整合している。
米国政府の債務およびドルのファンダメンタルズは、何も改善されていないはずだ。むしろ利払い費や軍事費の膨張は確実にマイナスだろう。政府の債務膨張から、10年以内にドルがハイパーインフレを起こすのではないか?そんな不安からゴールドやシルバーが買われてきたのだろう。しかし、この状況下でイラン戦争が起こり、投資家および大衆の関心が10年先から一気に1~2年先に引きずり込まれたはずだ。
原油価格がどこまで爆発的に上がるかよくわからなくなった。株も暴落するかもしれない。だから、とりあえずドルを持ちたい。そんな短期的な経済不安が、ドルの信認への疑義という10年スケールの別の不安を「巻き戻した」相場であると言えると思う。
その証拠に、3月23日にトランプがイランとの交渉と5日間の攻撃停止について言及したところ、原油価格が下がって株、債券、ゴールドのトリプル安もマシになったのだ。「ドル確保相場」みたいなイメージで良いと思う。
・中長期的には、米国の利払い費と軍事費に注目すべきだ
残念だがここまで明確にホルムズ海峡で混乱が起きたら、物価が上がるのは、止められないと思う。例え停戦になっても、明確な地政学リスクはエネルギー価格を上げるファクターになり続けるだろう。
物価が上がったら、基本的には金利は上げるしかない。なぜなら金利が物価上昇率よりも低いと、どんどん金を借りたほうが得という状況になり、よりインフレを激化させる効果を発生させるからだろう。(実質金利マイナス)バブル相場と崩壊を誘発する環境になってしまうかもしれない。
一方で、金利上昇によって国債の発行体である米国の利払い費が増大してしまうだろう。また、戦争が原因なら軍事費の膨張も上がると思うのが自然だろう。その結果、政府支出の増大圧が発生すると言える。
つまり、米国の債務問題をより悪化する方向に作用してしまうはずだ。物価が上がると、米国は物価上昇を低金利で放置してインフレを起こすか、高金利で利払い費を増大させて信認低下によるインフレを起こすかというに二択に追い込まれてしまうはずだ。
だから、米国は戦争の長期化は本音では望んでいないはずだ。斬首作戦で指導部だけ制圧すれば、短期間で政権が転覆するはずである、そんな楽観があったように見えてならない。お金はかけたくない、物価は上げたくないというのが本心なのだろう。
・なぜイランを攻撃せざるを得なかったのか?
イスラエル側から見て、イランの核保有は受け入れがたかったのだと思う。推測であるが、イスラエルはアメリカに、今イランを攻撃しないならイスラエルはイランに核を使うというようなことを言ったのではないだろうか?
2025年6月に、アメリカはイランにバンカーバスターという対地下施設ミサイルを投下し、イランの核施設を破壊したとされる。しかし攻撃対象となった施設は全て避難済みだったとされ、どちらかと言うとデモンストレーション的な作戦であったと考える。アメリカはイランの核開発は断じて許さないという意思表示をしたわけだ。
推測ではあるが、状況の実態はその後あまり改善していなかったのだろうか。そしてイランはイスラエルの我慢の限界ラインに到達してしまい、今回の戦争が始まってしまったのだろう。(おそらくは、イランが核ミサイル保有の一歩手前まで開発を進めたのではないか?)
イスラエルは横暴だと思うかもしれない。しかし、実際にイランは戦争開始後に暴走と言って良い状況になり、ドバイやトルコなどの無関係と言える近隣諸国まで爆撃したのだ。特にトルコはNATO加入国であるから、NATOがイランのミサイルを迎撃したようである。これは戦争の深刻さの次元を引き上げかねない事態だろう。確かに、このような無差別的な爆撃をする国家が核保有するのは大変危険に思える。
イスラエルは、イランが核を持つと、イスラエルが核で攻撃されると本気で思っていると思うし、著者もその可能性はあり得ると考える。それで、今回の戦争を始めたのだろう。アメリカはすごく乗り気ではなかったと思うけど、ベネズエラの時のように斬首作戦ですぐ終わらせられるという希望的観測が少なからずあったのだろう。それが現時点では1ヶ月続き、果たして今後どれぐらい泥沼化するのだろうか?そして、この深刻度の織り込みが日々の相場を動かしていると考える。
・要約
短期的な不安からの、とりあえずドル買いみたいな相場と言えるだろう。
物価高はおそらく止められないと思われ、その程度の大小が、戦争の泥沼化具合によって決まりそうだ。
しかしドルのファンダメンタルズは何も改善されておらず、むしろ利払い費と軍事費の膨張は悪化要因だろう。
アメリカの本心は政府支出の増大と物価上昇は望んでおらず、戦争を長期化させたくないと推測する。
イスラエルはイランの核保有を本気で恐れており、阻止のためには手段を選ばないと思われる。
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