「音楽サブスクで食えない」のに、音楽市場が史上最高な理由。
なにを隠そう、わたしはサカナクションの大ファンだ。今年もライブチケットの抽選当たれ!と祈っている。そんな憧れのサカナクションの山口一郎さんが、YouTubeの配信で語った言葉が話題になっていました。
「サブスクリプションで三億再生されたって何の意味もないから。サブスクでの収益なんてほぼ無いようなもん」
CDの時代は「3,000円のCDで90円」の印税だった、とも。Xのタイムラインには「夢がない」「音楽で食えない時代」という声が並びました。
気持ちは、わかります。3,000円のCDが1枚売れると、90円。200万枚売れれば1億8,000万円です。それがいまは、1再生でコンマ数円。あの時代を知っている人が「ほぼ無い」と言いたくなるのは、当然だと思うんです。
ただ、この話には続きがあります。
この発言を受けて、実際に計算したポストが流れてきました。TuneCoreという配信代行を経由した実例値で、1再生あたり約0.64円。3億再生なら、0.64円 × 3億 = 1億9,200万円。
サカナクションの山口一郎氏がYouTube配信でとても興味深い発言をしています。
— J2kawa (@J2kawa) June 9, 2026
「サブスクリプションで三億再生されたって何の意味もないから。サブスクでの収益なんてほぼ無いようなもん」
その一方でこんな発言も。…
CD200万枚の印税が、1億8,000万円。サブスク3億再生が、1億9,200万円。
ほぼ、同じ金額なんです。
え、と思いませんか。「ほぼ無い」はずのサブスクの収益が、計算してみるとCD全盛期の大ヒットと同じ額になる。山口さんが間違っているのか、試算が間違っているのか。
わたしは、どちらも正しいと思っています。そして「どちらも正しい」が成立してしまう場所にこそ、いまのエンタメビジネスでいちばん大事な構造が隠れています。
問いは、ひとつです。
音楽は、本当に安くなったのか。
このnoteでは「エンタメビジネスの実学」と題して、エンタメ×IPの構造を現場の視点で読み解く記事を書いています。気になる方はフォローして他の記事も覗いてもらえると嬉しいです。
「ほぼ無い」と「1.92億円」は、両方正しい
先に種明かしをすると、山口さんの実感と1.92億円の試算は、別の場所の話をしています。
0.64円という単価は、配信代行を経由してアーティスト側に直接入ってくるケースの実例値です。一方、メジャーレーベル所属のアーティストの再生収益は、「配信サービス→レーベル→事務所→制作費の回収→本人」という何層もの座組を通ってから届きます。各層が、それぞれの機能の対価を取っていく。まとめの中でも「メジャー所属だと、実際の手取りは微々たるもの」という指摘が並んでいました。何層を通って受け取るかで、同じ3億再生でも、届く金額はまるで変わるんです。
つまり「サブスクは儲からない」のではなくて、同じ3億再生でも、TuneCore(チューンコアとは、個人で活動するアーティストが自身の楽曲をApple MusicやSpotifyなどの音楽配信ストアやSNSへ簡単に配信・販売し、収益化できる世界的な音楽配信代行サービス)で直接受け取るか、多層の座組の末端で受け取るかで、手取りが桁で変わるんです。
以前、J-POPの世界進出の記事で「どの経路で出るかは、稼ぐ額ではなく、5年後に手元に何が残るかを決める選択だ」と書きました。出ていくときだけではありません。受け取るときも、まったく同じ構造で経路が効いています。
わたしのX投稿では、「コピーできるものは安くなり、コピーできないものは高くなる」という結論まで公開しました。
https://x.com/keke_ent/status/2067907931614625831?s=20
— 朝日けけ。 (@keke_ent) June 19, 2026
ただ、同じ3億再生でも手取りが桁で変わる理由は、それだけでは説明できません。ここからは、漫画の印税分配を見てきた経験と、音楽・ライブ・映像の数字を重ねて、「誰が、どの経路で回収するのか」まで解いていきます。
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