Miro AIとFigJam AIで要件定義のたたきを作り比べた38歳PMの所感

Miro AIとFigJam AIで要件定義のたたきを3案件分作り比べた38歳PMの所感

真っ白なホワイトボードを前に、40分固まったことはないだろうか。

私はある。それも先月だけで3回。要件定義のキックオフ前夜、「たたき台くらい作っておきますね」と言った自分を呪いながら、空白のMiroボードとにらめっこしていた。付箋1枚置いては消し、また置いては消し。気づけば日付が変わっていた。

で、ふと思ったわけです。この「最初の一歩」、AIに肩代わりさせたらどこまでいけるのか?

申し遅れました。江東区在住、38歳のIT会社員です。BIエンジニアを5年やったあと広告運用に流れ、いまはPMをやりつつ社内のAI導入の面倒も見ています。要するに、ダッシュボードも入稿画面もWBSも、ぜんぶ触ってきた雑食系。妻には「あなたの職種、毎年変わるね」と言われます。否定できない。

そんな私が今回やったのは、単純な実験です。実際に動いている3つの案件(社内の在庫管理刷新、営業向けの日報アプリ、あとは小さめのLP改修)について、Miro AIとFigJam AIの両方で要件定義のたたき台を作らせて、そのまま実務に持ち込んでみた。合計6枚のボード。かけた時間は私の実測で延べ11時間ほど。

この記事で持ち帰ってもらえるのは、次の3つです。

  • 同じお題を投げたとき、Miro AIとFigJam AIの「たたき台」がどう違う形で返ってくるか

  • 実際の会議に出したとき、どちらのボードが議論を前に進めたか(進めなかったか)

  • 月いくら払う価値があるか、財布を握るPM目線での結論


ホワイトボード疲れ、してませんか

背景を少しだけ。あくまで私のまわりの話です。

コロナ以降、うちの会社も打ち合わせの半分以上がオンラインのままで、ホワイトボードツールはすっかり定着しました。体感では、PM仲間の飲み会で「Miro派かFigJam派か」の話題が出ない月はない。宗教戦争の様相すらあります。

ただ、ここ1年で空気が変わった。どちらも「AIがたたき台を作ってくれる」機能を積んできて、話の軸が「どっちの付箋が使いやすいか」から「どっちのAIが仕事するか」に移ったんですね。

私は、この変化はけっこう本質的だと考えています。というのも、要件定義で一番しんどいのは清書でも合意形成でもなく、「最初のゼロイチ」だから。白紙に最初の付箋を置く心理的なハードルさえ越えられれば、あとは人間が直せばいい。個人的には、AIの使いどころとして一番割に合う場所だと思っています。

とはいえ、正直に白状すると、最初の1案件目は盛大にやらかしました。AIが出したそれっぽい構成図を、中身をろくに読まずに会議に出してしまい、営業部長に「この『承認フロー』って誰が承認するの?」と聞かれて絶句。AIは器を作るが、うちの会社の事情は知らない。当たり前のことを、恥をかいて学びました。詳しくは第3部で。

後輩サトウとの会話から

この実験を始めたきっかけは、後輩のサトウ(20代・PM2年目)との雑談でした。

「先輩、要件定義のたたきって、どうやって作ってます? 俺、毎回3時間くらい溶けるんですよ」

「わかる。俺も先週、白紙のMiroの前で40分フリーズした」

「先輩でもですか。……で、最近FigJamのAIボタン押してみたんですけど、あれ、どうなんですかね。それっぽいのは出るんですけど、それっぽいだけな気もして」

「奇遇だな。俺はMiro側のAIを試してた。じゃあさ、同じ案件で両方作って見比べてみないか。どうせ在庫管理の件、来週キックオフだろ」

「え、それ俺の工数使う話じゃないですよね?」

「大丈夫、俺の深夜時間でやる」

こうして、妻が寝静まった後のダイニングテーブルで、私の作り比べが始まったのでした。サトウには途中経過を毎朝見せて、若手目線のツッコミ役をやってもらっています。彼の感想が私と見事に割れた場面もあって、そこがこの比較の一番面白いところかもしれません。

次のパートでは、まず両者のAI機能で「何ができて、何ができないのか」を、料金と一緒に整理します。先に一言だけ言っておくと——同じ「ホワイトボードのAI」でも、この2つ、目指している方向がだいぶ違う。そう感じた理由から話します。

そもそも「ホワイトボードのAI」は何をしてくれるのか

「先輩、そもそもなんですけど、MiroとFigJamって何が違うんですか。どっちも付箋ペタペタ貼るやつですよね」

サトウのこの質問、雑なようでいて核心を突いています。まず土台から整理させてください。

MiroもFigJamも、いわゆるオンラインホワイトボード。会議室の白板をブラウザの中に移したもので、付箋を貼る、線でつなぐ、複数人で同時に書き込む、が基本の動きです。ただし生い立ちが違う。Miroは会議や企画の場を丸ごと引き受ける方向に育ってきた道具で、FigJamはデザインツールFigmaの隣にある「ラフに考える場所」として生まれた道具。この出自の差が、後で見るAIの性格の差にそのまま出てきます。

「要件定義のたたき」という言葉も一応かみ砕いておくと、システムを作る前に「誰が、何に困っていて、何ができれば解決なのか」を並べた最初の下書きのことです。完成品ではなく、関係者に「これで合ってます?」とぶつけるための議論の的。私はこれを作るのに毎回3時間溶かしていた、というのが前回までの話でした。

で、両者のAIができることは、ざっくり3種類に分けられます。

  • 生む: お題を渡すと、付箋や図の下書きを出してくる

  • さばく: 散らかった付箋を意味のかたまりごとに仕分けたり、要約したりする

  • 変える: 板の上の情報を、文章のドキュメントや別の形に作り替える

「仕分けって、KJ法をAIが代わりにやってくれるってことですか」

「そう。あれ、地味に一番ありがたいやつだから覚えとけ」

付箋の仕分け、横文字で言うとクラスタリングですが、要は文化祭の準備で散らばった意見を「予算の話」「当日の話」に分けていく、あの作業です。人間がやると30分かかって、しかも途中で誰かが脱線する。あれをボタン一発でやられると、正直ちょっと悔しい。


2025年から2026年、この2つはどう動いてきたか



私が両方の有料アカウントを持って1年半ほど触ってきた範囲で、印象に残った変化を並べます。外の記事の受け売りではなく、自分の画面に実際に降ってきた順です。

ひとつめ。Miroは「AIボタンを押しに行く」から「板のどこにでもAIが混ざっている」方向へ寄せてきました。付箋をダブルクリックすると、そこから展開・要約・言い換えの選択肢が生えてくる。道具箱から取り出す感じが薄れて、常に隣に立っている感じ。私はこれ、最初はお節介だと思っていたのに、気づいたら手癖になっていました。

ふたつめ。Miroに、板の上の付箋群をまとめて一本のドキュメントに書き起こす機能が入ったこと。要件定義で言えば「発散した付箋」から「読める下書き」への橋渡しで、私の仕事にはこれが一番刺さっています。

みっつめ。FigJam側は、単体で豪華になるより、Figma本体との行き来を太くする方向でした。FigJamで固めたたたきを、そのままデザイン作業に流せる導線が増えた。デザイナーが隣にいるチームなら、この地続き感は強い。

よっつめ。FigJamの仕分けと要約。生成そのものはあっさりめなのに、貼り終わった後の整理は速くて素直です。会議の後片付け係としての性格が濃い。

ここから先は、私が実際に手を動かした手順と、つまずいた箇所、そのまま真似できるテンプレートやプロンプトまで、順番に載せています。同じところで止まっている方は、この先がそのまま使えます。

ここから先は

7,211字 / 2画像

¥ 980

Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?