第1話「よみうりランドのプール、2歳が水を得た魚になった。」

八月。夏、まっさかり。
二歳になったちびすけと過ごす、はじめての本格的な夏がやってきた。梅雨が明けて、連日の猛暑。こう暑いと、やっぱり水が恋しくなる。
というわけで、我が家は満を持して、大きなレジャープールに繰り出すことにした。
行き先は、よみうりランドのプール。もちろん、ちびすけは初めて。プールデビューである。お家プールやホテルのプールは経験済みだけど、本格的なレジャープールは、また別世界だ。
朝、気合いを入れて準備。ラッシュガード、スイムキャップ、浮き輪、日焼け止め、着替え、タオル。子連れのプールは、とにかく荷物が多い。大荷物を抱えて、いざ出発だ。
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我が家は車を持っていないので、移動は電車。
吉祥寺から、電車を乗り継いで、よみうりランドの最寄りへ。ちびすけは、相変わらず車窓に釘付け。電車に乗るだけで、もう遠足気分だ。
そして、最寄り駅からよみうりランドへは——ゴンドラに乗る。
スカイシャトルという、空中を進むゴンドラだ。これも、ちびすけは初めて。
ゴンドラがふわりと動き出して、地面から離れていく。ぐんぐん高くなる。窓の外には、街並みが小さく広がって、緑の木々が眼下に。
——で、ちびすけはというと。
ビビっていた。

いつもは電車に大興奮のちびすけが、このときばかりは神妙な顔。ママにぎゅっと抱きついて、窓の外をおそるおそる見ている。足が地面から離れる感覚が、二歳児にはちょっと怖かったらしい。
「大丈夫だよ、ほら、きれいだね」
ママがなだめても、ちびすけの表情は硬いまま。高いところから見る景色は、確かに大人でも少しドキドキする。ちびすけにとっては、生まれて初めての「空中散歩」。怖いのも無理はない。
でも、しがみつきながらも、ちゃんと外を見ているあたり、興味はあるらしい。怖いもの見たさ、というやつだろうか。ゴンドラがプール近くに着く頃には、少しだけ慣れた顔になっていた。
思えば、この子の「はじめて」は、いつもこんな感じだ。最初はおっかなびっくりで、でも興味は捨てられなくて、気づけば慣れている。ゴンドラも、プールも、人生も、そうやって少しずつ世界を広げていくんだろう。パパは、そんなちびすけの横顔を、そっとスマホに収めた。この緊張した顔も、あとで見返したら、きっといい思い出になる。
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そして、いよいよプールに到着。
広い。とにかく広い。青い水面がきらめいて、たくさんの家族連れで賑わっている。ウォータースライダーがそびえ立ち、夏のプールの、あの独特のワクワク感が充満している。
ちびすけを、恐竜柄のラッシュガードと、日除けつきの迷彩スイムキャップに着替えさせる。準備万端。
まず向かったのは——なんと、アンパンマンコーナー。
プールの中に、アンパンマンの世界が広がるエリアがあったのだ。空気でふくらんだトンネルには、アンパンマンやしょくぱんまんの絵。小さい子向けの遊具がたくさんある。
ちびすけの目が、輝いた。

先月、横浜のアンパンマンミュージアムでばいきんまんと手をつないだちびすけ。アンパンマンは大好きだ。プールでまさかの再会に、テンションが爆上がり。口を大きく開けて、「あー!」と歓声を上げながら、遊具に突進していく。

浅いプールで、アンパンマンに囲まれて、ぱしゃぱしゃ。他の小さい子たちと一緒に、夢中で遊ぶ。人見知りしないちびすけは、こういう場所でもすぐに馴染む。水も、アンパンマンも、大好きなものが二つ揃って、もう最高潮だ。

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ひとしきりアンパンマンコーナーで遊んだら、次は本格的なプールへ。
波のプールに、家族三人でチャレンジした。
広いプールに、ざぶーんと波が押し寄せる。ちびすけには、新幹線柄の浮き輪。KODAMAと書かれた、こだま500系の浮き輪だ。電車好きのちびすけにぴったり。
浮き輪に入って、波に揺られる。最初はちょっと驚いていたちびすけだけど、すぐに慣れて、大喜び。波が来るたびに、ぷかぷか上下して、きゃっきゃと笑う。大口を開けて、満面の笑み。
パパも、ママも、交代でちびすけと一緒に波に揺られる。パパが支えたり、ママが抱っこしたり。家族三人、代わる代わる、水の中で過ごす。ちびすけは、すっかり水を得た魚だ。ゴンドラであんなにビビっていたのが嘘みたいに、プールでは生き生きしている。

——やっぱり、この子は水が好きなんだな。
お家プールも、ホテルのプールも、西武園も。この夏、ちびすけは水と友だちになった。そして今日、よみうりランドの大きなプールでも、その水好きは健在だった。
滑り台にも挑戦した。黄色い小さな滑り台を、ママに支えられながら、しゅーっ。水しぶきを上げて、ちびすけは大満足の顔。青空の下、夏のプールを、全身で楽しんでいた。
まわりを見渡すと、たくさんの家族連れが、思い思いに夏を満喫している。浮き輪でぷかぷか浮かぶ人、波にはしゃぐ子どもたち、日陰で休む大人たち。みんな、夏の一日を楽しんでいる。その中に、我が家も溶け込んでいる。ちびすけが生まれる前は、夫婦二人でこういう場所に来ることもあったけど、今は三人。にぎやかで、慌ただしくて、でも幸せな夏だ。
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たっぷり遊んで、お腹がぺこぺこ。
お昼は、園内のレストランへ。

プールでさんざん体を動かしたあとのごはんは、格別だ。ちびすけには、お子様プレート。ハンバーグに、ごはんに、いろいろ乗ったやつ。
ちびすけは、これをよく食べた。
さすが、外だとよく食べる子。プールで消費したエネルギーを、猛烈な勢いで補給していく。スプーンを握って、もぐもぐ。ハンバーグも、ごはんも、ぺろり。
パパは、カツカレー。ママも、しっかりお昼を確保。家族三人、テーブルを囲んで、記念のセルフィー。ママは両手をパーにして、ちびすけはお茶目な顔。プール上がりの、幸せなランチタイムだ。
「午前中だけで、もうこんなに楽しんだね」と妻。
「午後も、まだまだあるぞ」とパパ。
ちびすけのよみうりランドプールデビューは、大成功。ゴンドラでビビって、アンパンマンで興奮して、波のプールで水を得た魚になって、お子様プレートを完食して。二歳の夏の一日は、まだ半分。
午後は、どんな冒険が待っているんだろう。
お腹を満たして、家族三人、午後のプールへと繰り出していく。
夏の一日は、まだまだこれからだ。
― 第2話へつづく ―
