【株式投資を始めた私が最初に知りたかった10のこと】 ⭐第1回 そもそも株価は、なぜ上がったり下がったりするのか?
2024年新NISA制度スタートより株式投資を始めた頃、私には大きな疑問がありました。
「業績が良い会社の株を買えば、株価は上がるのでは?」
ところが、実際の株式市場はそんなに単純ではありません。
好決算を発表したのに株価が下がる会社もあれば、赤字決算なのに株価が急騰する会社もあります。
「良い会社なのに、なぜ株価は下がるのか?」
「まだ赤字なのに、なぜ株価は上がるのか?」
最初はよく分かりませんでした。
しかし、投資を続けながら企業分析をしていくと、株価を動かしているものは、大きく3つに分けて考えると理解しやすいことが分かってきました。
それが、
①業績
②期待
③需給
です。
そして「期待」が大きく変化するきっかけとして、企業に起きるビッグチェンジがあります。
さらに現在の株式市場では、個人投資家だけでなく、巨額の資金を運用する機関投資家や、高速で注文を出すアルゴリズム取引も株価形成に影響を与えています。
今回は、
「そもそも株価は、なぜ上がったり下がったりするのか?」
を、できるだけ簡単に考えてみたいと思います。

1.株価は「会社の成績表」ではない
まず知っておきたいのは、
株価は、現在の会社の成績だけで決まるわけではない
ということです。
例えば、A社が次のような決算を発表したとします。
売上高:前年比+20%
営業利益:前年比+30%
一見すると素晴らしい決算です。
「これは株価が上がるだろう」
と思います。
しかし、市場が事前に、
「利益は50%くらい増えるだろう」
と期待していたらどうでしょうか。
30%増益という結果は、会社としては好調でも、投資家にとっては、
「思ったより伸びなかった」
という評価になります。
その結果、好決算なのに株価が下がることがあります。
逆もあります。
赤字企業が、
前年:100億円の赤字
今年:50億円の赤字
だった場合です。
まだ赤字です。
しかし市場が、
「しばらく100億円規模の赤字が続くだろう」
と考えていたなら、
「予想以上に早く改善している」
と評価され、株価が上昇することがあります。
ここで重要なのは、
株価は過去よりも未来を見る
ということです。
2.株価を動かす1つ目の要素「業績」
もちろん、長期的には業績が非常に重要です。
企業が利益を増やし続ければ、企業価値も高まりやすくなります。
初心者の頃は、たくさんの数字を一度に覚えようとすると混乱します。
まずは、
「売上が伸びているか」
「利益が伸びているか」
「その成長は今後も続きそうか」
を見るだけでも、企業の状態はかなり分かります。
特に重要なのが、
「今後も続きそうか」
という視点です。
例えば、土地を売却したことで一時的に利益が増えた会社と、本業の製品が世界中で売れて利益が増えた会社では、同じ増益でも意味が違います。
株式市場が評価するのは、単なる数字の大きさだけではありません。
その利益に持続性があるのか。
ここを見る必要があります。
3.株価を動かす2つ目の要素「期待」
短期から中期の株価を大きく動かすのが「期待」です。
株式市場では、現在の利益だけでなく、
「この会社は3年後、5年後にどれくらい成長しているのか」
が常に考えられています。
例えば、
・AI
・半導体
・ロボット
・自動運転
・宇宙産業
・防衛
・再生医療
など、将来大きく成長すると期待されている産業があります。
まだ現在の利益が小さくても、
「この会社は将来の巨大市場で重要な存在になるかもしれない」
という期待が高まれば、株価が業績より先に上昇することがあります。
一方で、期待が大きくなりすぎた株は、良いニュースが出ても下落することがあります。
なぜなら、良い未来がすでに株価に織り込まれているからです。
株式投資でよく使われる、
「材料出尽くし」
という言葉も、この考え方で理解できます。
良いニュースが発表されても、
「それはもう知っている」
「もっと良い結果を期待していた」
と市場が判断すれば、株価は下がります。
つまり株価は、ニュースの良し悪しだけではなく、
期待と現実の差
で動くことが多いのです。

4.企業事例――好業績でも大きく売られた任天堂
「業績が良いのに株価が下がる」と言われても、最初はなかなか理解しにくいと思います。
そこで、実際の企業を見てみましょう。
分かりやすい事例の一つが任天堂です。
任天堂の2026年3月期は、Nintendo Switch 2の発売効果によって大幅な増収増益となりました。
売上高は前年比でほぼ2倍。
営業利益は約27%増。
純利益は約52%増。
数字だけを見れば、非常に好調な決算です。
Nintendo Switch 2も、発売初年度に約1,986万台を販売しました。
普通に考えれば、
「これだけ業績が良いのだから、株価も上がるのでは?」
と思います。
しかし株価は、前年につけた高値から大きく下落する局面がありました。
なぜでしょうか。
私は、この任天堂の事例には、株価を理解するための重要なポイントが詰まっていると思います。
①「Switch 2は売れる」という期待が先に株価を押し上げていた
株式市場は、商品が実際に売れてから評価するとは限りません。
Nintendo Switch 2の発売前から、
「次世代機は大ヒットするのではないか」
という期待が高まり、株価は先に上昇していました。
つまり、実際にSwitch 2が売れ、好業績が発表された時には、その成功の一部がすでに株価に織り込まれていた可能性があります。
ここが株式投資の難しいところです。
良いニュースが出たかどうかではありません。
市場の期待を上回ったのか。
これが重要なのです。
②売上だけでなく「どれだけ利益が残るか」も見られる
Nintendo Switch 2の発売によって、売上高は大きく増加しました。
しかし、売上が約2倍になったのに対して、営業利益の増加率は約27%でした。
ゲーム機の発売初期には、ハードウェアの販売構成や販売促進費、研究開発費など、さまざまな要因が利益率に影響します。
投資家が見ているのは、
「何台売れたか」
だけではありません。
「売上が増えた結果、どれだけ利益が残るのか」
も見ています。
売上高が大きく増えても、利益率への懸念があれば、株価が素直に上昇しないことがあります。
③市場は「今年」ではなく「来年」を見ている
もう一つ重要なのが、株式市場の視線は常に未来へ向いているということです。
2026年3月期が好調でも、投資家が次に考えるのは、
「では、2027年3月期はどうなるのか?」
です。
任天堂は2027年3月期のNintendo Switch 2販売台数を1,650万台と予想しました。
発売初年度の約1,986万台から減少する計画です。
さらに、ゲーム機本体の価格改定も予定されています。
価格を上げた後も販売台数を維持できるのか。
人気ソフトを継続的に投入できるのか。
ハードウェア販売から、利益率の高いソフトウェアやオンラインサービスへ収益を広げられるのか。
市場は、現在の好決算よりも、その先を見ています。
④「良い会社」と「株価が上がる会社」は、いつも同じではない
任天堂が世界有数のゲーム企業であることと、短期的に株価が上昇するかどうかは別の問題です。
株価がすでに将来の大成功を織り込んでいれば、実際に好業績を達成しても、
「予想通りだった」
と判断されることがあります。
逆に、現在の業績が悪くても、
「これから急速に改善するのではないか」
という期待が生まれれば、株価は上昇することがあります。
任天堂の事例から分かるのは、
業績が良い
↓
しかし市場の期待はさらに高かった
↓
利益率や翌年度の成長への懸念が意識される
↓
株価が調整する
という株式市場の仕組みです。
私はこの事例を見ると、
株価は「現在の成績表」ではなく、「未来への期待と現実の差」で動く
という意味が分かりやすいと思います。

5.株価を大きく動かす「ビッグチェンジ」
では、投資家の期待はどこから生まれるのでしょうか。
そのきっかけの一つが、企業に起きる**ビッグチェンジ(大きな変化)**です。
例えば、
・画期的な新製品の発売
・新しい経営者への交代
・成長市場への新規参入
・大型M&A(企業の合併・買収)
・重要な特許の取得
・新薬の承認や大型契約の獲得
・赤字事業からの撤退
・海外市場への本格進出
・国の政策による大規模な支援
などがあります。
こうした変化によって、
「この会社は、これまでとは違う会社になるかもしれない」
と投資家が考え始めると、現在の業績がまだ大きく変化していなくても、株価が先に動き始めることがあります。
例えば、長年成長が止まっていた会社に新しい社長が就任したとします。
その新社長が、
不採算事業を整理する。
成長分野に大規模な投資をする。
海外展開を強化する。
といった改革を始めれば、現在の決算数字がまだ変わっていなくても、
「この会社は変わるかもしれない」
という期待が生まれます。
新製品も同じです。
発売直後は売上への貢献が小さくても、その製品が大きな市場でシェアを獲得する可能性が見えてくれば、将来の利益成長への期待が高まります。
特許取得についても、
競合との差別化につながるのか。
大きな市場で使われるのか。
実際に売上や利益につながるのか。
まで考える必要があります。
私は企業を調べる時、現在の売上高や利益だけでなく、
「この会社に、以前とは違う大きな変化が起きていないか?」
を見ることが大切だと考えています。
ビッグチェンジは、
変化 → 期待 → 業績成長
という流れを生み出す可能性があります。
そして株価は、実際の業績成長を待たず、変化の兆しを見つけた段階から動き始めることがあります。

6.株式市場を大きく動かす「機関投資家」
株式投資を始めた頃、私は株式市場について、
「多くの個人投資家が売買して、その結果として株価が動いている」
というイメージを持っていました。
もちろん、個人投資家も市場の重要な参加者です。
しかし株式市場には、個人とは比較にならないほど大きな資金を運用する投資家がいます。
それが機関投資家です。
例えば、
・投資信託を運用する運用会社
・年金基金
・生命保険会社
・銀行
・海外の資産運用会社
・ヘッジファンド
などです。
特に時価総額の大きな企業では、こうした大口投資家の売買が株価形成に大きな影響を与えます。
例えば、ある企業の成長性を大口投資家が高く評価したとします。
しかし、巨大な資金を一度に投入すると、自分たちの買い注文で株価を急騰させてしまいます。
そのため、時間をかけて株式を買い集めることがあります。
反対に、大きな資金が継続的に売却されれば、業績が悪くなくても株価が上がりにくくなることがあります。
ここで注目したいのが出来高です。
出来高とは、その日にどれだけ株式が売買されたかを示す数字です。
例えば、
株価が上昇し、同時に出来高も大きく増えた
場合、大きな資金が市場に入ってきた可能性を考えることができます。
逆に、
株価が下落し、出来高が急増した
場合には、大きな売りが出ている可能性があります。
もちろん、出来高だけですべてを判断することはできません。
しかし、
「誰がこの株を買っているのだろう?」
「大きな資金が入ってきている可能性はないか?」
という視点を持つと、株価の見方が少し変わります。
7.AI・アルゴリズム取引で変わる株式市場
現在の株式市場を理解するうえで、もう一つ知っておきたいことがあります。
それは、
現在の株式市場では、人間だけが売買しているわけではない
ということです。
コンピューターのプログラムが、あらかじめ設定された条件に基づいて自動的に株式を売買するアルゴリズム取引が広く使われています。
さらに近年では、AI(人工知能)や機械学習を活用し、大量の市場データやニュースなどを分析して投資判断に利用する動きも進んでいます。
例えば、
株価が一定水準を超えたら買う。
一定の価格を下回ったら売る。
急激に出来高が増えた銘柄を売買する。
市場全体の変化に合わせて大量の株式を売買する。
こうした取引が、コンピューターによって高速で行われています。
ここで注意したいのは、アルゴリズム取引のすべてがAIではないということです。
単純な条件で機械的に注文を出すプログラムもあれば、AIや機械学習を利用して大量のデータを分析する高度なシステムもあります。
なぜ株価が一気に動くことがあるのか?
例えば、ある企業に悪いニュースが出たとします。
株価が下落する。
それを検知したプログラムが売る。
一定の価格を下回り、損失を限定するための売り注文が出る。
さらに株価が下落する。
このように複数の売買が連鎖することで、短時間で値動きが大きくなる場面があります。
上昇する時も同じです。
株価上昇や出来高増加を検知した取引が買いに入り、さらに株価が上昇することがあります。
そのため現在の市場では、
「なぜこんなに急に上がったのか?」
「なぜ材料以上に大きく下がっているのか?」
と感じるような値動きが起きることがあります。
もちろん、すべての急騰や急落がAIやアルゴリズム取引によるものではありません。
しかし現在の市場では、人間の投資判断だけでなく、コンピューターによる高速な取引も株価形成の一部になっています。
個人投資家がコンピューターと売買スピードを競うのは簡単ではありません。
だからこそ、
「この会社は何をしている会社なのか?」
「3年後、5年後に利益は成長しているのか?」
「会社を変えるビッグチェンジが起きているのか?」
を調べることが、個人投資家にとって大切だと考えています。
株価は1日の中でも激しく上下します。
しかし、企業の競争力や技術力が数秒で変わるわけではありません。
短期的な株価変動と、企業の長期的な価値を分けて考えることが重要です。
8.株価を動かす3つ目の要素「需給」
ここまで読むと、「需給」という言葉も少し理解しやすくなると思います。
簡単に言えば、
買いたい人と売りたい人、どちらの力が強いか
ということです。
どれほど良い会社でも、大きな売りが続けば株価は下がります。
逆に、現在の業績がまだ十分でなくても、大きな買いが継続すれば株価は上昇します。
需給を変化させる要因には、
・機関投資家による大量購入
・海外投資家の資金流入
・株価指数への新規採用
・信用取引の買い残・売り残
・大株主による株式売却
などがあります。
特に短期では、業績以上に需給が株価を動かすこともあります。
ここが、
「良い会社なのに株価が上がらない」
理由の一つです。
会社の価値と、今日の株価の動きは、必ずしも同じではありません。

9.「良い会社」と「今買うべき株」は同じではない
世界的に優れた技術を持ち、売上も利益も成長している。
それでも、株価がすでに大きく上昇していれば、その後に調整することがあります。
つまり、
良い会社を見つけること
と、
良いタイミングで株を買うこと
は別の問題です。
企業分析だけでは十分ではありません。
一方で、チャートだけを見ていても、その会社を長期的に保有できるか判断するのは難しいと感じます。
私は、
企業の成長性を調べること
と、
市場の期待や大きな資金の動きを見ること
の両方が大切だと考えています。
10.株価を見る時は「4つの質問」をしてみる
株価が大きく動いた時、私は次の4つに分けて考えると整理しやすいと思っています。
①業績は変わったのか?
売上や利益の見通しに変化があったのか。
②期待は変わったのか?
市場はその会社の未来を、以前より高く評価し始めたのか。
③ビッグチェンジが起きたのか?
新製品、新社長、新規事業、特許、M&Aなど、会社の未来を変える出来事があったのか。
④需給が変わったのか?
機関投資家などの大きな資金の流入や流出、市場全体の資金移動が影響していないか。
この4つを考えるだけでも、
「株価が上がったから良い会社」
「株価が下がったから悪い会社」
という単純な見方から、一歩進める気がします。
まとめ
株価は、会社の現在の成績だけで動くものではありません。
基本となるのは、
業績 × 期待 × 需給
の3つです。
そして、その期待を大きく変化させるきっかけとして、
ビッグチェンジ
があります。
新製品が生まれた。
新しい社長が改革を始めた。
新規事業が成長し始めた。
重要な特許を取得した。
こうした変化によって、
「この会社は、これまでとは違う会社になるかもしれない」
という期待が生まれます。
任天堂の事例のように、素晴らしい業績を発表しても、株価が下落することがあります。
それは、株式市場が現在の業績だけではなく、
「その好業績は続くのか?」
「市場の高い期待を超えられるのか?」
を見ているからです。
そして現在の株式市場には、私たち個人投資家だけではなく、巨大な資金を運用する機関投資家がいます。
さらに、アルゴリズム取引やAIを活用した投資システムが高速で売買を行っています。
企業の業績が変わる。
ビッグチェンジが起きる。
市場の期待が変わる。
大きな資金が動く。
アルゴリズム取引によって、値動きが短時間で増幅されることもある。
現在の株価は、このような複数の要素が組み合わさって動いています。
株式投資を始めた頃の私は、株価は企業の成績表のようなものだと思っていました。
しかし実際には、
株価は「現在の成績」だけではなく、「未来に対する市場の予想」と「市場参加者の資金の動き」が反映された価格
と考えた方が理解しやすいと思います。
だからこそ、現在の数字だけを見るのではなく、
「この会社では今、何が変わろうとしているのか?」
そして、
「その変化を大きな投資家はどう評価しているのか?」
を考えることも、企業分析の大切な視点だと思います。
次回は、
「PER・PBR・ROEって、結局何を見る数字なのか?」
を、できるだけ難しい言葉を使わずに整理してみたいと思います。
※本記事は、株式投資を学ぶ過程で得た知識や考え方を整理したものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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