SCREENホールディングス(7735)半導体は「洗う」ほど進化する。世界首位の洗浄装置メーカー― 微細化・3D化・先端パッケージ。半導体が複雑になるほど重要になる「洗浄工程」 ―
半導体製造装置というと、
東京エレクトロン
アドバンテスト
ディスコ
レーザーテック
などが注目されがちです。
しかし日本には、半導体製造に欠かせない「洗浄」という工程で世界トップに立つ企業があります。
**SCREENホールディングス(7735)**です。
半導体は、成膜、エッチング、研磨などの工程を進めるたびに、ウエハ表面に微粒子や金属、不純物が付着します。
そのため製造途中で何度も、
「洗う」
必要があります。
しかも微細化・3D化が進むほど、わずかな異物でも歩留まりに影響します。
AI、GPU、HBMの裏側で、
「半導体をきれいにする技術」
を握るSCREENを深掘りします。
1.SCREENとは何の会社?
SCREENのルーツは1868年。
印刷関連技術からスタートし、現在は半導体製造装置、印刷機器、ディスプレー製造装置などを展開しています。
現在の中心事業は、
半導体製造装置(SPE)
です。
特に強いのが、
枚葉式洗浄装置
バッチ式洗浄装置
スピンスクラバー
という洗浄分野です。
2025年の世界シェアは、
装置 世界シェア 順位 枚葉式洗浄装置 約43% 世界1位 バッチ式洗浄装置 約34% 世界1位 スピンスクラバー 約56% 世界1位

主要3カテゴリーで世界首位。
2025年には半導体洗浄装置の累計出荷台数も1万5,000台を突破しました。
SCREEN最大の競争力は、
「洗浄」という巨大工程に特化して高い世界シェアを築いていること
です。
2.事業別売上を見ると「半導体」が圧倒的
2026年3月期の事業別実績を見ると、SCREENの収益構造がよく分かります。

売上高約6,057億円のうち、
約4,860億円、約8割が半導体製造装置です。
しかもSPEの営業利益率は、
25.2%。
SCREENは現在、
「印刷機器も手掛ける会社」ではなく、実質的には高収益な半導体製造装置メーカー
として見る方が分かりやすい企業です。
3.なぜ半導体を何度も「洗う」のか?
半導体製造ではウエハ表面に、
微粒子
金属不純物
有機物
薬液の残留物
加工時の異物
などが付着します。
これを放置すると、
回路不良 → 歩留まり低下
につながります。
さらに先端半導体では回路線幅が極めて細いため、昔なら問題にならなかったような小さな異物も致命的になります。
つまり洗浄は、
単なる「掃除」ではなく、半導体工場の歩留まりを左右する重要工程
なのです。
しかも製造工程の途中で何度も必要になります。
4.微細化・3D化で洗浄の価値が上がる
SCREENの成長ストーリーで重要なのは、
半導体の生産量が増えることだけではありません。
半導体そのものが複雑になるほど、洗浄技術への要求も高くなります。
例えば、
微細化
↓
小さな異物も許されない
NANDの多層化
NANDとは、
NAND型フラッシュメモリ
のことです。
電源を切ってもデータが消えない半導体メモリで、SSDやスマートフォンなどに幅広く使われています。
現在は、メモリセルを平面に並べるのではなく、縦方向に何層も積み重ねる、
3D NAND(3次元NAND型フラッシュメモリ)
が主流です。
層数が増えるほど構造が複雑になり、
細い穴や溝の内部まで傷つけずに洗浄する技術
が重要になります。
HBM・チップレット
HBMとは、
High Bandwidth Memory
の略で、日本語では、
広帯域メモリ
と呼ばれます。
複数のDRAM(記憶用半導体)を縦に積み重ね、非常に高速に大量のデータをやり取りできるメモリです。
AI向けGPUでは大量のデータを高速で処理する必要があるため、
HBMはAI半導体に欠かせない重要部品
になっています。
HBMは複数の半導体を積層するため、接合面にわずかな異物があっても不良につながります。
そのため、
高精度な洗浄技術
がますます重要になります。
ウエハボンディング
↓
わずかな汚染も接合不良につながる
つまり、
半導体が高度化するほど「洗う技術」の付加価値も高まる。
これがSCREENの長期的な強みです。
5.最大の武器は「枚葉式洗浄」
特に重要なのが、
枚葉式洗浄装置
です。
ウエハをまとめて処理するのではなく、
1枚ずつ精密に洗浄する方式
です。
先端半導体では、
ウエハを傷つけない
異物だけを取り除く
高い処理速度を維持する
薬液・水の使用量を抑える
稼働率を高く保つ
といった複数の要求を同時に満たす必要があります。
SCREENは主力のSUシリーズを中心に、長年の洗浄ノウハウを蓄積してきました。
単に装置を作れるだけではなく、
顧客の量産ラインで高い歩留まりを安定して出せること
が大きな参入障壁になっています。

6.洗浄装置の競合企業を比較
SCREENにも当然、強力な競合があります。
代表的なのが、
国内:東京エレクトロン
海外:Lam Research
です。

3社の違いを簡単に表すと、
SCREEN
洗浄のスペシャリスト
東京エレクトロン
前工程の総合メーカー
Lam Research
エッチング・成膜・洗浄を組み合わせる総合型
です。
SCREENにはTELやLamほど事業領域の広さはありません。
その一方、
洗浄市場が成長したときの恩恵を最も直接受けやすい
という特徴があります。
7.中国勢の追い上げも無視できない
今後注視したいのが、
ACM Researchなど中国市場を中心に成長する装置メーカー
です。
中国では半導体製造装置の国産化が進んでいます。
SCREENにとっては、中国半導体メーカーが国内装置への切り替えを進めれば、
現在の高いシェアが低下する可能性
があります。
現時点ではSCREENの技術力、納入実績、顧客基盤が優位ですが、
長期的には、
SCREEN vs TEL・Lamだけではなく、中国装置メーカーとの競争
も重要になります。
8.簡単に他社へ乗り換えられない
半導体装置市場の強みは、一度量産ラインに採用されるとメーカー変更が簡単ではないことです。
新しい装置を導入するには、
プロセス条件の最適化
歩留まり確認
信頼性評価
量産ラインでの検証
が必要になります。
高い歩留まりを安定して実現している装置を、あえて別メーカーへ変更するリスクは大きい。
SCREENは累計1万5,000台以上の洗浄装置を出荷しており、
この巨大な導入実績から、
保守
部品
改造
アップグレード
といった継続需要も期待できます。
9.AI・HBMだけに依存しない
SCREENの強みは、
半導体市場全体に需要が広がっていること
です。
洗浄工程は、
先端ロジック
DRAM
NAND型フラッシュメモリ
パワー半導体
成熟ノード
など、ほぼすべての半導体で必要です。
なお、
DRAM(Dynamic Random Access Memory)
とは、パソコンやサーバーなどで一時的にデータを保存するためのメモリです。
HBMも、このDRAMを縦方向に積み重ねて高速化した技術の一つです。
アドバンテストはAI向けテスト需要、ディスコはHBMや先端パッケージ需要への感応度が高い企業ですが、
SCREENは、
AI成長を取り込みながら、AIだけに依存しない。
半導体市場全体の設備投資を取り込める点が強みです。
10.日本の半導体工場新設も追い風
日本では、
TSMC熊本
ラピダス
キオクシア
マイクロン
ソニー
パワー半導体各社
などが設備投資を進めています。
新しい半導体工場が建設されれば、
当然、洗浄装置も必要になります。
SCREENにとっては、
世界の半導体設備投資
に加えて、
日本国内の半導体投資
も追い風になります。
経済安全保障や半導体国産化という国策との親和性も高い企業です。
11.先端パッケージも新たな成長市場
AI半導体では、
HBM(High Bandwidth Memory=広帯域メモリ)
チップレット
2.5D/3D実装
ウエハボンディング
などの先端パッケージ技術が広がっています。
チップレットとは、一つの巨大な半導体を作るのではなく、役割の異なる小さな半導体を組み合わせて一つの高性能チップとして動かす技術です。
特にチップ同士を接合する工程では、
接合面のわずかな異物が不良につながる
ため、高度な洗浄が必要になります。
つまりSCREENには、
半導体生産量の増加
だけではなく、
1枚のウエハに必要な洗浄技術の価値そのものが上がる
という成長余地があります。
12.利益率は高水準へ
SCREENは近年、収益力そのものも改善しています。
全社営業利益率は、
2022年3月期の**14.9%**から、
2025年3月期には**21.7%**まで上昇。
2026年3月期も、
20.2%
という高水準を維持しています。
主力のSPE事業では、
営業利益率25.2%。
半導体市場の成長だけでなく、
高付加価値装置の拡大や生産性改善によって、利益構造そのものが強くなっている
点も評価できます。
13.最大のリスクは中国
最大のリスクは、
中国向け売上比率の高さ
です。
中国では成熟ノードを中心に大規模な設備投資が続いてきました。
しかし今後は、
米中対立
輸出規制
中国装置メーカーの国産化
中国設備投資の減速
が逆風になる可能性があります。
SCREENを見るうえで最も重要なのは、
中国需要が落ち着いた後も、AI・先端ロジック・DRAM・NAND・先端パッケージで受注を維持できるか
です。
14.次世代技術でも世界首位を守れるか
今後注目したい技術テーマは、
微細化
3D NAND
HBM
ウエハボンディング
先端パッケージ
次世代乾燥技術
省薬液・省水技術
です。
半導体が複雑になるほど、
単純に「汚れを落とす」だけでは足りません。
微細構造を壊さず、異物を除去し、きれいに乾燥させる。
洗浄の難易度は上がり続けます。
SCREENが次世代半導体でも高いシェアを維持できれば、
単なる設備投資循環銘柄ではなく、
半導体の微細化・3D化そのものを取り込む成長企業
として評価できます。
まとめ
SCREENホールディングスの強さを一言で表すなら、
「半導体が複雑になるほど、洗う技術の価値が上がる」
です。
2026年3月期の売上高約6,057億円のうち、
約4,860億円が半導体製造装置。
SPE事業の営業利益率は、
25.2%。
その中心にあるのが、
世界トップクラスの半導体洗浄技術
です。
微細化。
3D NAND(3次元NAND型フラッシュメモリ)。
HBM(High Bandwidth Memory=広帯域メモリ)。
チップレット。
ウエハボンディング。
半導体が進化するほど、小さな異物が許されなくなります。
つまり、
「洗浄」はなくならない。むしろ高度化する。
国内には東京エレクトロン。
海外にはLam Research。
中国勢も追い上げています。
それでも主要な洗浄装置カテゴリーで世界首位に立つSCREENの競争力は高い。
今後の最大のポイントは、
中国依存を下げながら、AI・HBM・先端パッケージ需要を取り込めるか。
そして、
次世代の洗浄・乾燥技術でも世界トップを維持できるか。
半導体の進化とともに「洗う技術」の重要性がどこまで高まっていくのか。
今後も継続して追いかけたい日本の半導体製造装置メーカーです。

いいなと思ったら応援しよう!
最後までお読みいただきありがとうございます。いただいたご支援は記事制作を続ける力となり、その一部をUNICEFをはじめ、子どもたちを支える団体への寄付に活用させていただきたいと思います。
