古河電気工業(5801)骨太の方針「AI・次世代電力網」の本命企業か?― 銅線から光ファイバ、海底ケーブル、そして核融合へ。「情報と電力」を運び続ける老舗企業 ―
生成AIの普及によって、世界中でデータセンター投資が加速している。
その裏側で重要性を増しているのが、膨大なデータを高速で運ぶ光通信インフラだ。
そこで注目したい日本企業の一つが、**古河電気工業(古河電工)**である。
古河電工の特徴は、AIデータセンター向け光通信だけにとどまらない。
冷却・放熱、電力網、海底電力ケーブル、さらに将来的には核融合に必要となる超電導まで持つ。
一見バラバラに見える事業だが、140年以上の歴史を見ると一本につながっている。
1.原点は「銅と電線」
古河電工のルーツは明治時代に遡る。
古河グループ創業者・古河市兵衛は1877年に足尾銅山の経営に着手。
古河電工自身の創業年は1884年で、東京・本所で精銅業が始まり、同時期に横浜・高島町で山田電線製造所が電線製造を開始した。
つまり原点は、
銅 → 銅線 → 電線
だった。
その技術は時代とともに、
電力ケーブル
↓
海底ケーブル
↓
光ファイバ
↓
超電導線材
へ進化してきた。
古河電工は単なる電線会社ではない。
「時代ごとに変化する社会インフラの血管をつくってきた会社」
と考えると分かりやすい。
2.現在は何で稼いでいるのか
2026年3月期は売上高1兆3,076億円、営業利益639億円、営業利益率4.9%。
2026年4月からの新セグメントに組み替えると次のようになる。

※会社公表値。
売上規模では自動車やメタルが大きい。
しかし今後の成長を見るうえでは、
①AI向け光通信
②データセンター関連部品・冷却
③電力インフラ
が重要になる。
3.最大の武器は「AIデータセンターの光の高速道路」
生成AIでは、大量のGPUが高速でデータをやり取りする。
そのため、データセンター内部やデータセンター間を結ぶ光通信の重要性が急速に高まっている。
そこで重要になる古河電工の製品が、
ローラブルリボンケーブル
だ。
光ファイバを間欠的に接着することで柔軟に束ね、限られた空間に大量の光ファイバを収容できる。
2026年にはグループのLighteraが13,824心の超多心光ファイバケーブルを量産開始した。
AIデータセンターでは通信量を増やしたくても、建物内の配管スペースを無限には増やせない。
そこで、
「同じスペースにどれだけ大量の光回線を詰め込めるか」
が重要な競争力になる。
4.強みは「光ファイバだけ」ではない
古河電工の競争力を理解するうえで重要なのが、光ファイバだけを製造している会社ではないことだ。
光ファイバ ↓ 超多心光ケーブル ↓ MTフェルールなどの接続部品 ↓ 光半導体デバイス ↓ ネットワーク機器
まで幅広い技術を持つ。
MTフェルールとは、多数の光ファイバを高精度で一括接続するための重要部品だ。
例えるなら、
光ケーブル=高速道路
MTフェルール=巨大ジャンクション
である。
さらにデータセンター向け放熱・冷却製品も展開する。
つまり古河電工は、
「データを運ぶ」光通信
だけでなく、
「GPUの熱を逃がす」冷却
でもAIデータセンター投資との接点を持つ。
5.競合はフジクラだけではない
古河電工の競争相手は事業によって異なる。

光通信ではフジクラだけでなく、米Corning、Prysmian、中国勢などと世界市場で競争する。
海底電力ケーブルではPrysmian、Nexans、NKT、住友電工など欧州・日本勢が強い。
つまり、古河電工がすべての市場で世界一というわけではない。
それでも、
光通信 × 冷却 × 電力ケーブル × 超電導
を一つの企業グループで持つ点が特徴である。
6.フジクラとの違いは「完成度」と「伸びしろ」
AI光通信では、現時点でフジクラの存在感が大きい。
フジクラはAIデータセンター需要を高い利益成長につなげ、高収益化で先行している。
一方、古河電工は光ファイバ・ケーブル事業を**「Lightera」**に統合し、世界戦略を再構築している。
整理すると、
フジクラ=AI光通信で先行する高収益企業
古河電工=光通信の総合力+収益性改善を目指す企業
という違いがある。
古河電工を見る場合、売上高の増加だけではなく、営業利益率がどこまで改善するかが重要になる。
7.第二の成長軸は「電力を運ぶ」
古河電工は電力ケーブルや海底電力ケーブルも展開する。
洋上風力で発電した電力を陸へ運ぶためには海底ケーブルが必要になる。
そしてAIデータセンターの増加は、大量の電力需要を生む。
発電設備を増やすだけでは足りない。
「電気を運ぶインフラ」
への投資も必要になる。
古河電工は、
AIの情報を運ぶ光ケーブル
と、
AIを動かす電気を運ぶ電力ケーブル
の両方を持つ。
ここが総合電線メーカーならではの特徴である。
8.さらに未来には「核融合」
さらに長い時間軸で注目したいのが超電導だ。
核融合炉では超高温のプラズマを強力な磁場で閉じ込める必要があり、そのために超電導マグネットが重要になる。
古河電工は**Nb3Sn(ニオブ3スズ)**などの低温超電導に加え、高温超電導線材も手掛ける。
しかも研究だけではない。
ITER(国際熱核融合実験炉)やJT-60SA向け超電導ケーブルの実績を持ち、将来の大型・小型核融合炉向け技術開発にも取り組んでいる。
ただし、現時点で業績への寄与は限定的だ。
そのため、
現在:AIデータセンター向け光通信
中期:電力網・洋上風力・海底ケーブル
長期:核融合向け超電導
という時間軸で考えると分かりやすい。
核融合は現在の主力事業ではなく、将来的な成長余地の一つとして見ておきたい。
9.骨太の方針との接点
古河電工は、
・AI・データセンター
・デジタルインフラ
・GX
・電力網強靱化
・洋上風力
・フュージョンエネルギー
といった政府の重点分野と複数の接点を持つ。
データセンターを建てれば光通信網が必要になる。
再生可能エネルギーを増やせば電力ケーブルが必要になる。
将来、核融合が実用化へ向かえば超電導技術が重要になる。
完成品メーカーほど目立たないが、
「巨大インフラ投資の裏側で必要になる企業」
という位置付けが古河電工の特徴である。
10.まとめ
古河電工は1884年の銅と電線から始まり、
銅線 → 海底ケーブル → 光ファイバ → AIデータセンター → 電力網 → 超電導
へと、時代に合わせて技術を進化させてきた。
140年以上変わっていないのは、
「情報と電力を大量に、効率よく運ぶ」
という役割だ。
現在、最も注目したいのはAIデータセンター向け光通信。
その次には電力網強化や洋上風力に伴う電力・海底ケーブル需要がある。
さらに長期では、ITERやJT-60SAへの実績を持つ超電導技術が核融合という新市場につながる可能性もある。
一方で、事業領域が広いため、AI向け光通信の成長がそのまま全社利益の急成長につながるとは限らない。
また、光通信にはCorningやフジクラ、海底電力ケーブルにはPrysmian、Nexans、NKT、住友電工など強力な競合が存在する。
今後確認したいのは、
①光ソリューションの売上高・営業利益率
②AIデータセンター関連製品の増産と受注
③低採算事業の収益改善
④全社営業利益率
である。
AIデータセンター需要が光通信事業の本格的な利益成長につながるのか。
電力インフラが第二の成長軸になるのか。
そして、その先に超電導・核融合という新しい市場が生まれるのか。
古河電工は「AI時代の情報とエネルギーを支える総合インフラ企業」へ変化できるのか。
今後の業績と事業構造の変化を追っていきたい企業である。

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