介護施設のWebサイト、「やさしいデザイン」だけでは伝わらない
「介護施設なので、やさしい感じでお願いします」
Webサイトをつくるとき、こんな方向性になることは少なくないと思います。
緑やベージュを基調にする。
笑顔の入居者やスタッフの写真を使う。
角のない、やわらかなデザインにする。
「安心感が伝わるサイトにしたい」と考えれば、とても自然です。
ただ、いろいろな介護施設のサイトを見ていると、少し気になることがあります。
やさしく見えることと、その施設らしさが伝わることは、同じではないのではないか。
今回は、介護施設サイトのデザインについて、少し違う角度から考えてみます。
「安心感のある見た目」だけでは、選ぶ理由になりにくい
緑を基調にした落ち着いたデザイン。
笑顔のスタッフ。
明るい施設内の写真。
第一印象としては、「ここなら安心できそう」と感じるかもしれません。
一方、ご家族が施設を検討するときには、
「自分の家族に合いそうか」
「どんな暮らしができそうか」
「この施設は何を大切にしているのか」
といったことも見ながら、いくつかの施設を比較していきます。
つまり、
「安心感のある見た目」と、「安心して選べる状態」は少し違います。
色や写真がつくるのは、まず施設の印象。
そこに、
「この施設だから選びたい」と思える手がかり
が必要になります。
なぜ介護施設のサイトは、似た印象になりやすいのか
介護施設が大切にしているものを考えると、
「安心」
「やさしさ」
「温かさ」
「寄り添い」
といった言葉は、多くの施設に共通しています。
そして、それをそのままビジュアルに置き換えると、
安心だから緑。
温かさならベージュやオレンジ。
寄り添いなら、入居者とスタッフが触れ合っている写真。
楽しい暮らしなら、笑顔の写真。
となりやすくなります。
もちろん、どれも悪いわけではありません。
ただ、同じ言葉を起点にデザインを考えれば、サイトの印象も似てきます。
では、似ていることの何が問題なのでしょうか。
問題は、「他社と同じだから」ではない
他の施設と違う色を使えばいい、という話ではありません。
奇抜なデザインにする必要もありません。
問題は、
似た表現の中に、その施設を選ぶ理由まで埋もれてしまうこと
です。
実際には、
医療・看護体制を大切にしている施設。
リハビリや自立支援に力を入れている施設。
少人数で家庭的な暮らしを重視している施設。
食事や日々の生活を大切にしている施設。
それぞれに違いがあります。
ところがWebサイトになると、それらがすべて
「安心・やさしさ・笑顔」
という同じ表現に変換されてしまうことがあります。
すると、
施設には違いがあるのに、Webサイトでは違いが見えない。
そんな状態が生まれます。
A施設も安心。
B施設も安心。
C施設も安心。
そうなると、ご家族からすれば、
「では、自分たちにはどこが合うのだろう?」
という判断が難しくなります。
違いが見えにくくなるほど、料金や立地、空室状況など、比較しやすい条件に判断が寄りやすくなることも考えられます。
もちろん、それらも大切な判断材料です。
ただ、その施設が何を大切にし、どんな暮らしを支えようとしているのか。
そこも伝われば、ご家族にとって施設を選ぶ手がかりが増えます。
つまり「その施設らしさ」を伝えるのは、目立つためだけではありません。
ご家族が、自分たちに合う施設を選びやすくするためでもあります。
「安心」を、もう一段具体的にしてみる
では、その施設らしいデザインはどう考えればいいのでしょうか。
「安心感のあるサイトにしたい」
という言葉を、もう一段具体的にしてみます。
考える順番は、3つです。
1.この施設が大切にしていることは何か
2.それによって、ご家族にどんな施設だと感じてほしいか
3.その印象を、写真・言葉・色・レイアウトでどう伝えるか
たとえば、
「少人数で、一人ひとりとの関わりを大切にしている」
という特徴があるなら、
「スタッフとの距離が近そうな施設」
と感じてもらいたいかもしれません。
ここまで言葉にできると、デザインで考えることも変わります。
自然な関わりが見える写真を選ぶ。
その写真を小さく並べるのではなく、大きく見せて印象に残るようにする。
伝えたいメッセージを目立たせ、補足情報との強弱をつける。
つまり、写真や色を選ぶだけではなく、
「何を一番見せたいのか」に合わせて、レイアウトにもメリハリをつける
という考え方です。
リハビリや自立支援を大切にしているなら、
「できることを大切にしてくれそう」。
医療・看護との連携を重視しているなら、
「何かあったときにも、きちんと相談できそう」。
そんなふうに、施設の特徴を一度、
「ご家族にどう感じてほしいか」
という言葉に変換してみます。
そして、その印象を伝えるために、
どの写真を大きく見せるのか。
どのメッセージを最初に読んでもらうのか。
どの情報を補足として見せるのか。
という優先順位まで考える。
これもデザインの大切な役割です。
もちろん、
「医療に強い施設ならこの色」
「家庭的な施設ならこのデザイン」
という正解があるわけではありません。
大切なのは、
施設が伝えたい価値と、選んだデザインの間に理由があること。
「どう感じてほしいか」を、デザインの判断基準にする
Webサイト制作では、
「もう少し明るく」
「もっとやさしい感じで」
「こっちの色の方が好き」
といった話になることがあります。
もちろん、好みも大切です。
でも、それだけではなかなか判断できません。
そんなときは、
「このサイトを見た人に、どんな施設だと感じてほしいのか」
に戻ってみます。
この写真は、その印象につながっているか。
このコピーは、その施設らしさを伝えているか。
この色は、目指す印象に合っているか。
そして、
本当に見てほしい写真やメッセージが、レイアウトの中できちんと目立っているか。
そう考えると、デザインを「好き・嫌い」だけで決めずに済みます。
写真、コピー、色、文字、余白、レイアウト。
それぞれを選ぶときに、戻ってこられる判断基準ができるからです。
「介護らしい」より、「その施設らしい」へ
緑色も、笑顔の写真も、柔らかなデザインも、介護施設のWebサイトによく合います。
問題なのは、それを使うことではありません。
「介護施設だから」という理由だけで選んでしまうこと。
デザインを始める前に、一度だけ考えてみます。
このサイトを見終わったとき、ご家族にどんな施設だと感じてもらいたいですか?
施設が大切にしていることを考える。
それをご家族にどう感じてほしいか、言葉にする。
そして、何を一番見せたいのかに優先順位をつける。
その答えから、写真やコピー、色、レイアウトを考える。
介護施設だから、緑にする。
ではなく、この施設をどう感じてほしいかから、デザインを考える。
「介護らしいデザイン」から一歩進んで、「その施設らしいデザイン」を考える。
その方が、ご家族にとっても施設を選ぶ手がかりになるのではないでしょうか。
もし今のサイトを見て『どう感じてほしいか』を一言で答えるとしたら、あなたは何と答えますか?
