介護施設の経営指標|稼働率は「今」、離職率は「これから」を映す数字
稼働率が高ければ、経営は安定している——そう感じたことはありませんか。
たしかに、稼働率は介護施設の経営を考えるうえで大切な数字です。しかし、それだけでは見えてこない部分もあります。
今回は、稼働率と一緒に見ておきたい「離職率」について考えます。
稼働率は高いのに、現場は厳しい
介護施設の経営指標として、まず挙げられるのが稼働率です。
入居者数が安定し、空室が少なければ、経営は順調に見えます。しかし、高い稼働率を維持している施設でも、職員の退職が続いているケースがあります。入居者数だけを見れば、大きな問題はないように映るかもしれません。
一方で、少ない人数で現場を支える状態が続けば、残った職員の負担が増えます。その負担がサービスの質や、さらなる退職につながることもあります。
特に影響が表れやすいのが、夜勤の体制です。夜勤を担当できる職員が一人退職すると、残った職員の夜勤回数が増えたり、希望する休みを調整しにくくなったりすることがあります。
求人を出しても、採用が決まるまでには時間がかかります。その間、既存の職員のシフトで何とか穴を埋めなければならない施設もあるでしょう。こうした状態が続けば、職員の疲労が蓄積し、次の退職を招く悪循環に入る可能性があります。
稼働率という数字だけでは、こうした現場の変化までは見えてこないのです。
稼働率は「今」、離職率は「これから」
稼働率と離職率は、施設の異なる側面を表しています。
稼働率は、現在どれだけ居室が利用されているかを示す数字です。言い換えれば、今の事業成果を映す数字だといえます。一方、離職率は、一定期間にどれだけの職員が退職したかを示す数字です。
離職率だけですべてを判断することはできませんが、人員体制や今後の運営の持続性を考える重要な手がかりになります。
つまり、
稼働率は、施設経営の「今」を映す数字
離職率は、施設経営の「これから」を考える数字
という違いがあります。
この2つを分けて捉えるだけでも、施設の見え方は変わってきます。
大切なのは、数字を並べて見ること
稼働率を重視するほど、現場で起きている変化が見えにくくなることがあります。これは経営者や施設長の意識の問題というより、一つの数字だけでは施設全体の状態を把握しきれないためです。
そこで、稼働率と離職率を別々に確認するのではなく、月ごとの推移を同じ一覧に並べてみます。
たとえば、稼働率が高い水準を維持していても、その間に退職者数が増えている場合、現場の負担が高まっているサインかもしれません。
ただし、中小規模の施設では、一人が退職しただけでも離職率が大きく変わります。
そのため、単月の離職率だけで判断するのではなく、半年から1年程度の推移と、実際の退職者数を一緒に確認することが大切です。
稼働率という「結果」と、離職率や退職者数という「人員体制の変化」を並べて見ることで、施設の状態はより捉えやすくなります。
人員体制の変化は、Webにも表れる
人材の余裕がなくなると、影響は介護現場の負担だけにとどまりません。
ホームページのお知らせを更新できない。採用ページを見直せない。施設の日常を撮影し、発信する時間を確保できない。このような形で、Web上の情報にも影響が表れることがあります。
ホームページの更新が長期間止まっていれば、施設を検討しているご家族や求職者に、「現在の様子が分からない」という不安を与えてしまうかもしれません。
Webの更新停止は、単なる広報上の問題ではなく、現場の余力が低下しているサインである場合もあります。
だからこそ、Web集客を考える際も、アクセス数や問い合わせ数だけを見るのではなく、稼働率や採用状況、職員の退職傾向まで含めて考える必要があります。
Web集客やブランディングも、Web上の数字だけで判断せず、施設の運営状況と発信内容をつなげて考えることが大切だと思います。
施設の状態に合わせて発信内容や運用方法を見直すことで、無理なく継続できるWeb施策に近づいていきます。
数字は、一つでは判断できない
大切なのは、すべての経営数字を外部に公開することではありません。まずは施設の中で、数字から現在の状態を把握すること。そして、見えてきた課題を採用活動や職員の働く環境、日々の情報発信に反映していくことです。
稼働率という「今」の数字と、離職率という「これから」を考える数字。この2つを並べて見ることが、施設の変化に早く気づくきっかけになるかもしれません。
あなたの施設では、稼働率以外では、採用数・退職者数・問い合わせ数など、どの数字を確認していますか?
