AIの文章は整っている。でも、なぜか記憶に残らない。
AIを使って文章を書く機会が、ずいぶん増えました。
構成を考えてもらったり、文章を整えてもらったり、少し硬い表現をやわらかくしてもらったり。
自分でゼロから書くよりも、ずっと速い。
しかも、返ってくる文章はたいていきれいです。
読みやすいし、言っていることも間違っていない。
それなのに、ときどき感じることがあります。
「うまくまとまっている。でも、なぜか記憶に残らない」
最初は、単純に「AIが書いた文章だからかな」と思っていました。
でも、仕事でも文章整理でもAIを使う機会が増えるにつれて、少し違う気がしてきました。
AIの文章が「それっぽく」なる原因は、本当にAIだけにあるのでしょうか。
1.AIは、「それっぽく整える」のがとても上手い
たとえばAIに、
「自社サービスの魅力が伝わる紹介文を書いてください」
とお願いしたとします。
すると、
「お客様に寄り添ったサービス」
「豊富な経験を活かした提案」
「一人ひとりに合わせた丁寧なサポート」
といった文章が返ってくることがあります。
どれも悪い表現ではありません。
実際、企業サイトで見かけても違和感はないと思います。
ただ、読みながらこんなことを感じます。
「これ、ほかの会社にも言えそうだな」
介護施設であれば、
「一人ひとりに寄り添う」
「安心して暮らせる環境」
Web制作会社なら、
「課題に寄り添う」
「丁寧に伴走する」
業種が変わっても、似たことは起こります。
でも、ここでAIのせいにしてしまうのは少し違うのかもしれません。
よく考えてみると、
「自社サービスの魅力を書いて」
という依頼しかしていないのです。
AIからすれば、その会社で実際に何があったのかも、何を大切にしているのかも分からない。
渡された情報の範囲で、もっとも自然に見える文章をつくっているだけです。
つまり、
AIが文章を平均的にしているのではなく、こちらが渡した材料が平均的だった。
そんな見方もできると思います。
2.「人間味を出そう」だけでは、少し難しい
AIで文章を書く話になると、
「人間味を加えましょう」
「自分らしさを入れましょう」
と言われることがあります。
もちろん、その通りだと思います。
ただ、実際に書こうとすると困ります。
「人間味って、具体的に何を入れればいいんだろう?」
僕自身も、こちらのほうが難しいと感じます。
そこで最近意識しているのが、AIに「その人しか知らない材料」を渡すことです。
たとえば、
実際に顧客から相談されたこと
自分が「あれ?」と感じた違和感
AではなくBを選んだ理由
最初はうまくいかなかったこと
相手から実際に言われた言葉
こうしたものです。
「人間味」と言うと少し抽象的ですが、
実際にあったこと、感じたこと、迷ったこと、判断したこと。
そう考えると、少し扱いやすくなります。
そして、これらはAIが勝手につくるものではありません。
こちらが渡して初めて、文章の材料になります。
3.プロンプトを工夫する前に、「素材は足りているだろうか」
AIを使っていると、ついプロンプト集を見てしまいます。
僕も好きです。
「こんな聞き方があるんだ」
「この指定を入れると、こんなふうに変わるんだ」
と、つい保存してしまいます。
もちろん、プロンプトは大切です。
複雑な企画書をつくったり、デザインを生成したり、一定の形式でアウトプットさせたりするときには、目的・役割・条件などを構造的に伝えることで、結果は大きく変わります。
ただ、文章を書くときには、その前にもうひとつ考えたいことがあります。
プロンプトを工夫する前に、素材は足りているだろうか。
僕は、
プロンプトは「どう書くか」を整えるもの。
素材は「何を書くか」を決めるもの。
と考えるようになりました。
どれだけ「読みやすく」「専門的に」「親しみやすく」と指定しても、元になる材料が誰にでも言える内容だけなら、出来上がる文章もどこかで見たようなものになりやすい。
逆に、自分にしかない材料があれば、文章を整えるところはAIにかなり任せられます。
つまり、プロンプト設計の前には、
「素材設計」がある。
そんな順番なのかもしれません。
4.素材は、きれいな文章にしなくていい
ここまで読むと、
「じゃあ、AIに渡すための文章を先に自分で書かないといけないの?」
と思うかもしれません。
でも、僕はそこまでしなくてもいいと思っています。
たとえば、
・最初は広告を増やせばいいと思っていた
・でも問い合わせを見ると料金への質問が多かった
・サイトを見ると料金説明が分かりにくかった
・そこで広告ではなく料金ページを先に直した
・集客=広告ではないと改めて感じた
これくらいのメモでも十分です。
この材料をAIに渡して、
「この体験から得た気づきを、Web担当者に説明できるように整理して」
と頼めば、構成や表現はかなり手伝ってもらえます。
ここは、AIが広がって良かったことのひとつだと思っています。
以前なら、
「文章がうまく書けないから発信できない」
と感じていた人でも、
自分が持っている材料を渡すことからなら始められる。
文章を書くハードルは、確実に下がりました。
5.AIが文章を書くほど、人がやることも見えやすくなる
AIに任せやすいことは、これからもっと増えていくと思います。
文章の構成。
要約。
言い換え。
表現の調整。
こうした部分は、僕自身もかなり助けてもらっています。
一方で、
何に気づいたのか。
何に違和感を持ったのか。
どの経験を取り上げるのか。
なぜそう判断したのか。
誰に伝えたいのか。
こうした部分は、まだ自分の仕事です。
もしかするとAIによって、
文章を書く仕事の重心が、
「うまく書く」から「何を拾い、何を渡すか」へ少し移っている。
そんな変化が起きているのかもしれません。
まとめ|「うまく書く」は、AIに頼ってもいい
AIによって、文章を書くハードルはずいぶん下がりました。
だから僕は、
「文章が得意じゃないから発信できない」
と考える必要は、以前より少なくなったと思っています。
文章を整えるのはAIに手伝ってもらえばいい。
ただ、その前に集めておきたいものがあります。
自分が見たこと。
感じたこと。
迷ったこと。
相手から言われたこと。
そして、自分なりに判断したこと。
AIに全部を考えてもらうのではなく、
自分にしかない素材を渡して、一緒に整えてもらう。
文章を書くときは、そのくらいが、
「AIと仕事のちょうどいい関係」
なのかもしれません。
今回は、AIに文章をつくってもらう前の「素材」について考えてみました。
では、実際に素材をAIへ渡すと、どんな使い方ができるのか。
応募者から寄せられた「質問」を材料に、AIと一緒に採用LPの訴求を考えた例はこちらです。
▼ 応募者の質問をAIに渡したら、採用LPの訴求は見つかるか
「何をAIに渡し、どこを人が考えるのか」という話は、文章だけではありません。Web制作でも、AIに任せる工程が増えるほど、その前の設計と最後の判断が大切になってきます。
▼ Web制作はAIでどこまでできるようになったのか
