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メンバー全員のモニター環境を最安で揃えて使い倒してみたーインイヤーモニタリングシステム構築・運用方法


前置き

以下のような事で困ったことはありませんか?

• 短いリハーサル時間または短い転換リハ中にモニター環境を作りこめず、いつも違うモニター環境でライブ/バンド練習をしている
• モニター音量を上げたいけどPAさんから「これ以上はハウリング(フィードバックする)が起こってしまう」と言われて本番で返しが聞こえていない
• 同期を流しながら演奏しているけどイマイチバンド全体の演奏がまとまらない
• 中音が外音に干渉してきてバンドの出音が理想の音にならない等々…

モニター環境や現状でのサウンド最適化、ステージ上でのバンド運用最適化に苦慮しているバンドマンは多数いらっしゃるかと存じます。
そのような方々のために備忘録も兼ねて私達が運用しているシステムを解説します。

自己紹介

私は東京を中心に活動するプログレッシブメタルバンドIN DENIALと
メロディックデスメタルバンドDesolate Sphereで
ボーカルを務めておりますKent Sasaki(ササキケント)と申します。
IN DENIAL オススメ曲→

オススメ曲のブレイクダウン→

Desolate Sphere

メロデスをやろうとしたら結果的にブラダリッシュメロデスになったバンド

セット図/ステージプロット

 こちらが実際PAさんにお渡しているセット図(ステージプロット)です。

ステージプロット
セトリと照明要望等

 至らない点などはあるかと思いますが現状の最適解の一つとして現在このような図になってます。
セット図の解説はこちらから→https://note.com/kent_sasaki/n/n3fecb54562b4?app_launch=false
 元ファイルも置きましたので是非。

ライブ体制

 IN DENIALとDesolate Sphereは共にドラマー、ベーシスト、ギタリストが2名にボーカルの5名体制です。
 竿隊の足元はデジタルプロセッサー、ボーカルはワイヤレスマイクを使用し、ドラマー以外全員がPAに送るための回線と自分たちのPCに送るための回線、2回線を両方同時に出せる状態です。
 中音は基本無し、出してもうっすらドラム以外の音を鳴らしてもらっています(最前のリスナーのため)

 上記を踏まえ、最安インイヤーモニタリング(通称:イヤモニ、IEM)システムの全容を解説していきます。

システム解説

必要なもの

  1. 資金
     
    当たり前ですがお金がかかりますのである程度まとまった資金は必要になります。といっても全部新品である必要性はほぼ皆無なので中古と新品を組み合わせてうまくやりくりすればPCやその他ケーブル類を除いて1人頭40000円ちょっとになります。(メンバー5人想定)

  2. PC 
     
    ある程度のスペックが求められるのでそれなりのPCを使用しましょう。ライブ中や直前にDAWのプロジェクトをがっつり編集することはないでしょうから画面の大きさは気にせず、単に処理スペックで考えていいと思います。
     個人的にはMacbook系がおすすめではありますが、Delusionistの田場さんのように中華メーカーのすんごい小さいPCを使用して問題ない例もあるので、色々比較検討してバンドの現状に合うもので良いと思います。
     私たちが運用していたPCの中で最低スペックのPCはこちらです→https://support.apple.com/ja-jp/111883 PC由来のトラブルは今のところ起きていません。

  3. DAW
     
    なんでもいいと思いますがルーティングができて軽いDAWがいいと思います。私達はLogic Proを使用しています。

  4. オーディオインターフェース
     
    多チャンネル一択です。
    ・持ち運びのしやすさ(ラックでいう1Uサイズ未満)
    ・アナログイン/アウト(どっちも10はないと足りない)の数
    以上を踏まえて選定すると、MOTU社(Mark Of The Unicornの略、2026年3月現在の日本代理店は株式会社ハイ・リゾリューション)のUltraliteシリーズ一択になります。
     私たちは中古で買ったUltralite Mk3 hybridを使用しています。ちなみに購入当時は3万円でした。今もそのくらいで落ちていると思います。
     :Ultralite Mk3 hybridですがネットを検索すると電源周りが弱いようでして、かくいう私の所有している個体も昨年末電源が急についたり消えたりを繰り返すようになりました。修理実績のあるリペアショップさんがいたのでそこで修理していただき今は何ともありません。

  5. モニター用ワイヤレス送受信機
     
    私達の運用ではXvive のXV-U4を使用しています。モニターシステム系の解説では酷評されている気がしますが3年運用してきて本番中に致命的なトラブルが起こったことはないので問題ありません。
     システムのルーティング次第でモニターサウンドをステレオにできる余白はあるのでステレオならShureのPSM300を使用したいです。
     注1:全員で同じ音を聞く場合は送信機1個でよくね?と思ったそこのあなた。30分のうちに数回、バチッというクソデカ音(しかも自分のモニタリング音量に依存しないデカさで襲ってくる)に邪魔されたくなかったら素直に人数分のペアでそろえましょう。突然やってくるバチ音のたびに集中が切れちゃいます。
     注2:竿隊をワイヤレス化したい場合、竿用ワイヤレスの多くは2.4GHzなのでXviveをモニターに使用していると混線する可能性が高く、場合によっては使い物にならなくなります。狭い会場なら竿は有線で、広めなら各ワイヤレスのざっくりとした電波経路を整理できれば問題なく運用できると思います。

  6. モニターイヤホン
     
    耳から外れにくいものであればなんでもいいと思います。

  7. USBケーブル
     
    こちらは音質向上を狙うものではなく、ただ単にIF付属のケーブルにPC側の端子が合わず、片方の端子に変換を入れなければならない事態になった時のためです。
     例えば私たちが使用するMacbookにはUSB Type-A端子がないため、IF付属のケーブルですと変換を必要とします。USBハブではノートラブルでしたが一時期PC周りをすっきりさせたくてType-A to Type-Cの小さい変換機器を使用したところ、ライブの途中にIFをPCが認識しなくなった時が1回ありました。
     それ以来変換は使用せずにType-B to Type-Cのケーブルを使用しています。それ以来そのようなトラブルは起きていません。

あると運用上楽になりそうなもの

  1. 折りたためる棚
     
    箱側にテーブルみたいなものの貸し出しをお願いすると不必要に大きかったりそもそもそんなものはないみたいな事態になることがありますので持ち込みするほうが楽になります。使用しているものはこちら
     これは2024年のFLOYA来日の際に共演したMay Or May Not(現MOMN)がシステム用に3段の棚を持ち込んでいるのを見てパクりました。

  2. 同期出し用フォン-XLRシールド
     
    PAさん側の仕事が一つ減ります(恐らく)。あとフォン端子で出さないことで箱側のDIボックス不調によるトラブルを回避します(IN DENIAL初回のライブで実際にあった)。嫌がるエンジニアさんはいそうですが今までノートラブルです。

  3. Xvive用延長シールド
     
    IFにXviveを直挿しすると重さでコネクタがバカになりそうというのと隣合うOutジャックに挿せないという問題を解消するためです。そもそもそんなメンバーいないから直に挿すわ!って人はいらないかもです。

  4. 電源タップ
     
    システム周りの電源を一括して電源に挿せると転換が楽になります。

  5. 配線マップ
     
    以下のスクショみたいなやつです。誰でもわかるように図でIFの上部に貼っておくとよいです。疲れていたりすると普通に挿すところを間違えて耳中がいつもと違うぞってなります。

前までMIDIアウトを使用していたのとワイヤレスコーラスマイクを入れていた名残

配線


シグナルフロー図

 実際の配線はこちらです。配線する順番はバンドの現状に合わせればよいかと思います。以前は竿隊のMIDI制御のためにIFのMIDIインアウトを使用していましたが、現在はそれぞれに合ったUSB端子を通してPCから直にMIDI制御をしています。そっちのほうがレイテンシーが少ないそうです。

InOutを上から写した写真
フロア最前から見たシステム
不格好ではある

 実際の外見は写真のようになります。見た目は少々不格好ですが持ち運びのしやすさ、運用のしやすさ、ラックにするほどじゃないなという3点からこのような形になりました。持ち運ぶスタイルによってはラックにしちゃうのもありかと思います。

 ドラム以外の音をIFから出さない理由としてはPCが止まったりIFがダウンしたりすることで音が止まることを防ぐためです。現在はIFから出すこともトライしてたりはしますが個別でアウトしているわけではなく2Mixに近い形で出力しています。PCでドラム以外の外音を完全コントロール、というわけです。

DAW運用

 

練習などに使うセッションの上半分
練習に使うセッションの下半分

 DAWのプロジェクトはこのようにマーキングされ、BPMと拍子が入れられています。竿をMIDI制御しないならここまでガチガチしなくても大丈夫かと思います。


同期、クリックとMIDI
それぞれのパートのインプットトラックと耳中用のAUXトラック

 実際のDAWルーティングは以下画像のようになります。載せているのはVo用のAUXトラックです。画像の下に実際耳中に流れている、ライブ中に聞いている音声を載せました。参考になれば嬉しいです。私たちの使用するDAWはLogic ですが、他のDAWでは挙動やシグナルフローが違うかと思いますので参考程度にお願いします。また、私達よりDAWを知る人からすると最適化できる点はまだあるかと思いますのでご意見あればお願いいたします。

ボーカル用耳中AUXトラックのシグナルルーティング

メリット・デメリット

メリット

  1. 練習環境とライブ環境をギャップレスに近づけることができます
     
    完全にギャップレスではないですが少なくともモニター音にギャップはありません。

  2. 転換の高速化
     
    モニター調整する必要がないので配線してドラムがセッティングしてで大体10分ほどかかり、そこから各パート音チェック、全体1コーラス通しでサウンドチェックが大体終了できますので15分から20分あれば問題なくいつもの練習環境でライブができます。

  3. 追記:イヤモニを使用しながらレコーディングができる
     
    追記で書いておいてなんですがこれが1番のメリットかもしれないです。一部のラックサイズデジミキもレックできるけど、使用しているセッションにそのままレックできて、このサイズに収まる筐体で、シンプルな配線、シンプルなシグナルフローというこの4つを満たす基幹機材は今のところないのでは…?
     ちなみにレックができるということ以下の点がわかるようになります。
     ・揃っているのかいないのか
     ・望んだ揃い方をしているのか
     ・ピンポイントでのフレーズの間違い
    これらを後から見返すのはスマホの動画で撮影したものを見返すとしてもかなり難しいですしうやむやになりがちです。そこが解消できることでバンド個人限らずかなりレベルアップできますよね。
     後やろうと思えばライブセッションを音源や動画として公開するなどでコンテンツ化も狙えます。通常そういったのはかなり機材量が必要になってきたりしますがやりようによってはドラムも含めて全素材録れます。

デメリット

  1. 機材量が多い
     他のバンドさんより少し多い程度ですが普通より多くなります。

  2. 重い
     
    量が増えたので重量も増えてます。一人で管理運搬するとその他所持品も混みで25kgほどの重量になっていました。

  3. 何らかの理由でシステムがダウンした時、中音なし!
     
    ただ外音を聞く感じにすれば何とかなりますのでいうほどデメリットではないかもしれません。

外国人にもデスストランディングで通じる荷物量

終わりに

 駄文長文そしてシグナルフロー図の文字が小さくて申し訳…! 春以降別システムに移行するのですがそちらもそちらで一長一短で、海外のツアーリグクラフトマンたちのように設計から作成まで全部やってくれるところはないものか…と思う今日この頃です。ちょっとでも参考になれば幸いです。ツッコミはいつでもお待ちしてます。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。


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